2008-09-28
2010-09-11写真サイズを変更
太陽コンパス
太陽コンパスとは、太陽の位置を基準に自分の位置を決定する方法です。多くの動物は太陽コンパスを用いて現在位置を確認しながら行動しているようです。例えばハトの帰巣やサケの母川回帰も太陽コンパスを利用しているそうです。そして
ミツバチも。
ミツバチの眼は
偏光を識別できるようになっており、直接太陽を見なくても偏光を利用して太陽の方角を知ることができるのだそうです。『
昆虫はスーパー脳』という本で、ミツバチの偏光識別を疑似体験することのできる簡単な装置が紹介されていましたので、さっそく作ってみることにしました。
ミツバチの眼
東急ハンズでアクリル板と片面粘着の偏光板を購入しました。偏光板を頂角45°の二等辺三角形に切断し、正八角形になるようにアクリル板に貼り付けます。直径方向の偏光が透過するようにしてあります。
これは朝10時に撮影した写真です。太陽は南東の方角にあります。
東の空 南東の空
南の空 南西の空
西の空 北西の空
北の空 北東の空
ミツバチの眼は
複眼であり、多数の個眼が集まってできています。1個の個眼は正方形を対角線で分離するように、上下方向の偏光と左右方向の偏光を識別できます。研究者によれば、ミツバチは偏光面の傾きの違いを明暗の差として認識しているようです。余談ですが、ミツバチはヒトと同様に、
カニッツァの三角形を見ることができるのだそうです。ヒトと同じ錯視をミツバチも見ているなんて面白いですね。
しかし実際のところ偏光がどのようにミツバチに見えているかは、私たちヒトの眼には偏光が見えないので、想像するのは難しいです。複眼で見る世界だって、私たちには想像し難いモノなのではないでしょうか。
8の字ダンス
花から蜜を持ち帰った働き蜂は、特徴的な8の字ダンスで花の位置を仲間に知らせます。
gifアニメをご覧ください。大きいサイズの画像は
こちらへ。
巣箱の中に垂直に立てられた巣板で、蜜を持ち帰った働き蜂はダンスをします。お尻を震わせながらある方向へ進み、右へターンして元の位置に戻り、またお尻を震わせながら同じ方向へ進みます。今度は左へターンして、再び同じ方向へ進みます。このとき、お尻を震わせながら進む方向と垂直上向きとのなす角度が、花と太陽の方角とのなす角度を表しています。すなわち、垂直上向きを太陽の向きとしたときの花の方向に向かって尻振りダンスをするのです。またこのとき、お尻を震わせるスピードが、花と巣箱との距離を表しています。スピードが速いときは近くに、遅いときは遠くに花があるのです。
このように、8の字ダンスで花のありかを教えてもらった仲間の働き蜂は、偏光面の傾きにより太陽の方角を確かめ、花のある方向に向かって飛び立つのです。
カール・フォン・フリッシュ
カール・フォン・フリッシュはオーストリアの動物学者です。彼は1973年に、
ニコラース・ティンベルヘン(ニコ・ティンバーゲン)、
コンラート・ローレンツとともにノーベル生理学・医学賞を受賞しました。フリッシュはミツバチの行動を研究し、動物行動学が学問として成立する基礎をつくりました。ここにあげた8の字ダンスや偏光を利用した太陽コンパスも、すべてフリッシュが明らかにしたことです。
参考文献
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最終更新:2010年09月11日 11:51