「私にいたいけな少女を追い回せというのか?」 男、二津栄吉は不満そうに問うた。 『これは命令だ。』 通信越し、頭ごなしにそう言い切られ。 「わかってます。ですが、適任とはいいがたいと思いますが。」 それでも言いよどむ二津。 『いや、君が適任だよ。君ほど実直な男はいないからね。今回はその少女を生きたまま保護しなければならない。君以外では誤って殺してしまうかもしれないだろう。それと、前から希望していたパイロットの補充も調整しておいた。』 通信越しの声は、二津の言葉に返しはしているが一度決まったことを変える気はさらさらないようで、淡々と要件を伝える。 「わかりました、全力で取り組ませていただきます。」 二津も一応の抗議をしたのちは、命令を受け入れ善処を表明する。 『健闘を祈る。詳細はデータで送っておいた、そちらで確認してくれたまえ。』 通信はそういって切れ、 「やれやれ、きな臭いことになってきたな。」 そうもらしつつ、これからの戦いに少し気持ちが高揚する二津であった。 「ふっふっふっ、ついに私の時代がやってきたようですね。見なさい!この最新鋭の特別機!スペシャル!スペシャルよ!」 戦艦三菱の格納庫、そこに少女の声が響く 彼女の名前は鈴木蘇理央、本日配属されてきたパイロットの一人 「ソリオちゃんってばチョーご機嫌だね。」 ご機嫌のソリオに声を掛ける少女、彼女の名は豊田芹佳、彼女も本日配属されたパイロットの一人でソリオとは旧知の間柄である。 「あったりまえでしょセリカ!だって見なさい。この特別機、最新鋭のスペシャル機よ。これはもう私たちの勝ちでしょ、期待されちゃってるでしょ私たち!」 特別機の前で仁王立ちではしゃぐソリオ 「いいえ、最新鋭じゃない。」 と、そこに、もう一人が声を掛ける 彼女は本田恵、彼女も本日配属されたパイロットの一人で、ソリオ、セリカの共通の友人。 「本田ちゃん?どういうこと?」 「これは、試験機で言ってしまえばプロトタイプ。」 ソリオの問いにケイが答える。 「ぷろとたいぷ?古いってことか!?」 「えぇ、でも特別機というのは正しい、試験型BRで採算度外視で資金がつぎ込まれているはずだから、性能は段違いなはず。」 「古いけどスペシャルか!ならよし。私が選ばれし者だってことには変わりないですからね。」 ケイの説明を聞き、難しいことは度外視で、またも有頂天になるソリオ。 「でも、ソリオちゃんここには4機あるよ?ソリオちゃんだけが選ばれたわけじゃないよ?」 口調はほんわかしながらも、ソリオの調子に乗った発言を諫めるセリカ。 「まったくしょうがないな、セリカにも貸してあげる。この欲しがりさんめ。」 だが、そんな言い方ではソリオに真意は届かず。 「え?!い、いや違うよ。っていうか、セリカちゃんってば、もう自分のものってことにしてるよ。」 とほほといった感じのセリカ 「私はこの赤いのにする、ソリオはあの白いのだろ、あれは近接戦型だからお前に遭うはずだ。」 そんな二人をよそに、ケイはそそくさと自分の機体を選ぶ。 彼女もかなりマイペースである。 「ケイ!勝手に決めるな、ま、まぁ、白いのはわたしのって決まってたんだけどね。セリカはどうする。」 と、ソリオもすでに自分の機体を決めていたようで、ケイの勝手な言動に抗議するも反論せず、セリカにも機体の選択を迫る。 「え?えーと、私は、この黒いのかな?」 セリカは適当にそういって、残った機体から自分の機体を選ぶが、 「なるほど、腹の黒さがにじみ出ててあってるね。」 「ソリオちゃん!?」 「確かに、お前にぴったりだなセリカ。」 「本田ちゃん!?」 ソリオもケイもそういって、セリカをいじる。 「でも、こうすると青いのが残ってるけどどうしようか?」 そして、ひとしきりいじり終わるとそそくさと次の話題に代わる。 「え?それだけ?私をいじるのそれだけなの?」 「まぁ、リザーブでいいのでは?誰かの機体が調整中の時があるだろうし、その時の予備にもなるし最悪パーツとしても使えるし。」 「ひどいよ二人とも、しかも勝手に話決めてるし。」 「なんだセリカ、何か問題でもあったのか?」 「ううん、別に、いいんじゃないかな、私の扱い以外は。」 「そうか、なら問題なしだな。」 「ちょっと!」 抗議するセリカだが、 「あはははは、勝ったな!あはははは。」 ソリオは高笑いをし、 「ソリオの言うとおりだ、問題はないあとは私たちが戦果を挙げるだけだ。」 ケイが公言し 「そうだね。私たちならできるよね。」 「セリカはどうだろう?」 「あぁ、心配だな。」 「なんでっ!?」 和気藹々と三人は談笑していた。 これから戦火へ飛び込んでいくとは思えぬ雰囲気で