2008-12-31




透明骨格標本

出勤前に立ち寄った東急ハンズで面白いものを見つけました。透明骨格標本といいます。全体としての形を保ったまま筋肉が透明になっており、骨格が赤紫(硬骨)や青(軟骨)に染色されています。試薬の入手が難しそうですが、ぜひ自分でも作ってみたいです。

アナハゼ

ひれの先端が軟骨のままで、硬骨化が進んでいません。

イカナゴ

硬骨魚類のはずですが、骨格のほとんどが青色に染色されています。稚魚だから、ということなのでしょうか?

透明骨格標本のつくり方

以下の方法は東京海洋大学水産資料館のページで紹介されていた方法です。

ホルマリンによる固定

標本を5%または10%ホルマリンで固定し、その後、水洗します。なお、ホルマリン蒸気は有毒ですので、使用にはドラフトチャンバーが必要です。また、毒物および劇物取締法により劇物に指定されており、そのまま廃棄することができません。ホルマリンを水で希釈後、次亜塩素酸で酸化分解させるなどの方法が必要です。

軟骨の染色と中和

アルシアンブルー20mgをエタノール70mLと氷酢酸30mLの混合液に溶かし、軟骨染色液とします。この軟骨染色液で標本を半日程度染色します。その後、飽和ホウ砂水溶液に数時間浸し、中和します。

トリプシン処理

飽和ホウ砂水溶液35mLと水65mLにトリプシンを適量加えます。標本のタンパク質をトリプシンで分解させます。標本が半透明になるまでです。

硬骨の染色と脱色

アリザリンレッドS適量を5%水酸化カリウム溶液に溶かし、硬骨染色液とします。これに標本を半日程度入れます。

透明化とグリセリン置換

トリプシン溶液に再び入れ、アリザリンを脱色させます。半日から1日程度です。0.5%水酸化カリウム水溶液に入れ、筋肉を完全に透明にします。0.5%水酸化カリウムとグリセリンの3:1溶液、1:1溶液、1:3溶液、100%グリセリンの順に移し、標本内の水酸化カリウム水溶液をグリセリンに置換します。スクリューキャップのガラスビンに入れて完成です。

透明に見えるわけ

この透明骨格標本ができるしくみは、Wikipediaにわかりやすい説明がありました。

軟骨を青色に染色するのはアルシアンブルーという色素です。アルシアンブルーは軟骨のコンドロイチン硫酸に結合して軟骨を青色に染色します。硬骨はアリザリンレッドSで染色します。アリザリン自体は紫色なのですが、骨のカルシウムと結合して赤色に発色します。

トリプシンは代表的なタンパク質分解酵素です。これによりアミノ酸どうしのペプチド結合が切断されます。しかし、あらかじめホルマリンで固定処理されているので、側鎖にアミノ基をもつアルギニン、アスパラギンなどのアミノ酸どうしがホルマリンによって架橋されます。筋肉はトリプシンによってほとんど分解されるものの、ホルマリンによって固定されたごく一部が残り、その結果、透明な骨格標本となるのです。




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最終更新:2009年01月05日 23:33