2009-09-11

アプトの道の終点、めがね橋(碓氷第三橋梁)です。

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ぜひご覧ください。


碓氷峠

碓氷峠(うすいとうげ)は群馬県安中市と長野県北佐久郡軽井沢町の間の、中仙道の峠です。また、上野と長野を結ぶ信越本線の難所でもありました。信越本線の横川駅(安中市)と軽井沢駅の間には66.7‰の急勾配があり、ここを通過する列車は専用の補助機関車EF63形2両を必ず連結する必要がありました。このような高コスト路線のため、長野新幹線の開通に伴い、信越本線の横川‐軽井沢間は廃止されてしまいました。

アプト式鉄道

信越本線の横川‐軽井沢間が最初に開通したのは1893年です。66.7‰という急勾配を克服するため、アプト式という特殊な鉄道路線が建設されました。

車輪が載る2本のレールの間に、ラックレールという歯型が刻まれたレールを敷設し、この歯形に機関車の歯車を噛み合わせて急勾配を登る方式をラック式鉄道といいます。このうち、位相をずらして設置した数本のラックレールを用いる方式をアプト式といいます。信越本線では、位相を120度ずらした3本のラックレールを用いました。

1893年の開通時には蒸気機関車が利用されていました。開通当初は、横川‐軽井沢間、11.5kmの通過に80分程度を要していました(平均すると9km/時)が、トンネルの多い路線であったため煤煙による窒息事故が多発し、1912年に日本で最初の電化が行われました。

photo from Wikipedia

こうして煙からは開放されたものの、1本の列車を軽井沢に押し上げるためにはED42形電気機関車4両を必要とし、通過時間は50分程度を要していた(平均14km/時)ため、輸送力不足は相変わらずでした。そこでアプト式から粘着運転(通常の鉄道と同じ方式)に切り替えられることになり、今までの旧線に平行して新線が建設され、新しい専用機関車EF63形が開発されました。1963年に新線が開通し、1966年には複線化も完成しました。その結果、峠を登る下り列車は17分(平均40km/時)、峠を降りる上り列車は24分に、通過時間が短縮されました。

長野新幹線(北陸新幹線)の開通に伴い、今ではその新線も廃止されてしまいましたが、現在でも当時の遺構がたくさん残っています。「アプトの道」は、アプト式の旧線跡を利用して作られた無料の遊歩道です。そんなアプトの道を歩いてきました。

アプトの道

アプトの道は、横川駅を基点にめがね橋まで、全長4.8kmの遊歩道です。途中に何ヶ所かトイレもあり、きれいに整備されています。将来的には、軽井沢への中間点、熊ノ平まで整備される計画もあるようです。新緑の季節も紅葉の季節も、雪景色の季節でも、それぞれに楽しめそうな素晴らしい遊歩道でした。

私は、時間の関係もあり(後述)、タクシーでめがね橋まで一気に登り(2300円ほど)、アプトの道を歩いて横川駅へ戻ることにしました。並行する旧国道18号線には公共交通機関はありません(夏の間だけ1日1往復の臨時バスが運行されているようですが)。

めがね橋(碓氷第三橋梁)

アプトの道の終点、めがね橋はレンガ造りの美しいアーチ橋です。めがね橋をくぐり、階段を登ると、めがね橋の上に登ることができます。上の写真は、めがね橋の上から、上流側の新線方向を見たところです。

めがね橋の軽井沢側は通行止めになっています。上の写真は横川側のトンネル入り口です。ここから横川駅までずっと下り坂です。本当にここを蒸気機関車が上り下りしたのだろうかと、疑問に思うほどの急勾配が続きます。

トンネル内は電灯がともり、足元もしっかりして、とても歩きやすくなっています。トンネル内の空気はひんやりとして、半袖では寒いくらいです。蒸気機関車時代のすすはさすがに残っていないようですが、でもレンガがとてもいい色合いになっています。

碓氷湖

めがね橋からは、5号隧道、4号隧道、3号隧道の3つのトンネルが連続します。ここで何人の機関士が倒れたのでしょうか。

旧国道をくぐって下っていくと、右手に碓氷湖が見えてきます(トイレあり)。反対側には、見晴らしのよさそうな雑貨屋兼コーヒー・ハウスもありました。

遊歩道の頭上には木が生い茂り、廃線になってからずいぶん経っていることを感じさせます。

峠の湯

2号隧道、第二橋梁、1号隧道を超えたところに、北原白秋の歌の石碑が建っています。
「うすいねの 南おもてと なりにけり くだりつゝ思ふ 春のふかきを」
と書いてあるはずなのですが、まったく読めませんでした。

さらに進むと新線との分岐点で、そこに「峠の湯」という温泉施設があります(トイレあり)。

上の写真は、峠の湯の前にある、新線(右側)と旧線(左側)の分岐点です。めがね橋から峠の湯まで、レールはほぼすべて撤去されているのですが、峠の湯から横川駅の手前まではレールが残されています。そのレールを利用して横川から峠の湯まで、トロッコ列車「シェルパくん」が不定期に運行されているようです(碓氷峠鉄道文化むら入園券込みで片道900円)。これを利用して、峠の湯からめがね橋を歩いて往復するのもよさそうです。

丸山変電所

遊歩道上にいたのをうっかり踏み潰しそうになったクワガタの雌です。

さらに下っていくと丸山変電所が見えてきます。これは、1912年の電化の際に開設された2ヶ所の変電所のうちの1つです。一時は放棄され、朽ち果てていたのですが、再びきれいに整備されています。

信越本線をオーバークロスするのは上信越自動車道の碓氷橋です。新旧の十字路ですね。峠の湯から横川駅までは、上下線ともにレールが残されており、下り線はトロッコ列車用にそのままの状態で、上り線はアスファルトの遊歩道になっています。

碓氷峠鉄道文化むら

アプトの道の出発点にある碓氷峠鉄道文化むらは、廃止された横川機関区跡地に開設された文化施設です。本当はここにも寄っていくつもりだったのですが、当日朝に起こった人身事故で、行きに乗る予定の湘南新宿ラインの特別快速高崎行きが運休になり、横川駅到着が予定の1時間遅れになっていたのでした。で、今回は横を通り過ぎるだけにしました。残念。

横川駅と峠の釜めし

横川駅に特急「あさま」や「白山」が停車することはなくなりましたが、今でも駅構内で駅弁が販売されています。私も峠の釜めしを購入して、帰りの湘南新宿ラインの車内でいただきました。

たっぷり山道を歩いた後の釜めしはうまかった!




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最終更新:2009年09月13日 19:50