2009-12-19




スードスコープ

スードスコープ(pseudoscope)は逆さメガネの一種です。以前に上下逆さメガネを紹介しましたが、スードスコープは凹凸を反転させるメガネです。

私たちは物体の凹凸を認識するために様々な情報を利用しています。物の重なりを利用して遠近を判断したり、小さく見えるものは遠くにあると判断したりします。また、2つの眼が離れているので、ピントが合う状態で寄り眼になっていれば近くにあるものを見ていると判断します。この時の右眼と左眼の視線がなす角度を両眼視差といい、これは常に脳によってモニターされ、遠近の判断に利用されています。スードスコープは、右眼と左眼への入力を入れ替えることで両眼視差を逆転させ、物体の凹凸を反転させるメガネなのです。

両眼視差

上の写真は裸眼立体視用の写真です。平行法の方は左と中央の写真を、交差法の方は中央と右の写真を使用してください。これが通常の見え方ですが、スードスコープの見え方ではこれが逆になります。すなわち、平行法で中央と右の写真を見るとき、交差法で左と中央の写真を見るときの見え方が、スードスコープでのモノの見え方なのです。

材料と作り方

材料

アクリルミラー2mm厚(50mm×50mmを2枚、50mm×100mmを2枚)、
ヒノキ工作材(20mm×20mm×50mmを4個)、シナベニア5mm厚(250mm×120mmを2枚)、
両面テープ、木工用ボンド、さらタッピングM3×16mm、木工用ドリル

作り方

作り方はMake:vol.02の記事Make a Pseudoscopeを参考にしました(どちらも内容は同じです)。

アクリルミラーは東急ハンズで100mm×100mmのモノを購入しました。このサイズに合わせてミラーのサイズを参考文献のものよりも小型化しました。プラスチックカッターで所定のサイズに切断し、耐水サンドペーパーで切断面を仕上げました。ヒノキ工作材は切断面の垂直がきちんと出ていることが大事なので、東急ハンズで20mm×20mmのヒノキ工作材を購入したときに、同時に50mmでの切断も依頼しました。原寸大の型紙を作り、これをベニアに写し取りました。曲線部分は電動糸ノコで切断し、切断面を木工用ペーパーで仕上げました。ベニアへの穴あけは3mm、ヒノキ工作材への穴あけは2mmのドリルを使います。ミラーの中央にヒノキ工作材の支柱を両面テープで固定します。上下からベニアで支柱を挟み、さらタッピングで固定します。

上の写真は片面のベニアの固定が終わった状態です。ミラーの配置がよくわかると思います。

中央寄りの50mm×50mmのミラーは、さらタッピングだけでなく木工用ボンドも使用して45°に固定してあります。左右の50mm×100mmのミラーはピント合わせのために動かせるように、さらタッピングのネジ締めを加減しておきます。

スードスコープを覗いて見るときは、左右のミラーを動かして右眼の像と左眼の像が重なるようにします。参考サイトの作品では、ミラーはむき出しでしたが、これだと子どもに触ってもらう時すぐに壊れてしまいそうです。そこで、上下ともにベニアで覆うようにしました。特に内部での反射もないので、上下逆さメガネの時のようなつや消し黒塗装の必要はありません。というか、ミラーの角度調節で何度も支柱を触るので、塗装しない方が使い勝手が良いです。

スードスコープでのモノの見え方

ヒトの顔のように見慣れたものの凹凸は、スードスコープ越しであっても容易には反転しません。これは、両眼視差の情報を脳が無視して勝手にいつもの見え方に修正しているのです。お祭りで売っているお面を裏側からスードスコープで見ると、凹凸が反転して通常の状態に見えます。表側から見ても人の顔と同様に認識されるので通常の見え方です。視覚は脳が作っているバーチャルリアリティー、ということがここでも確認できます。

視覚の不思議さを実感したい方におすすめのサイトがJSTバーチャル科学館のマインド・ラボというコンテンツです。私たちは脳が作り出した世界を見ていることを実感できる、とても良くできたサイトです。このSESSION 2 では、私たちが遠近を判断する仕組みに付いての解説があります。

折り紙で作った筒を動かして、スードスコープで覗いて見ると、前後方向に向けたときは長さが縮み、横方向に向けたときは長さが伸びるように見えます。動かすと勝手に物の形が変化するようで、とても奇妙な感じがします。




参考文献


関連項目


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最終更新:2009年12月19日 09:26