2010-02-28
2010-03-01 動画追加
流動モザイクモデル
細胞は生物の構造上、機能上の基本単位である、という考えを
細胞説と言います。細胞を包む
細胞膜は単なる膜ではなく、
半透性という性質を持っています。また、必要な物質を取り入れ、不要な物質を排出するという役割(選択的透過性)も持っています。このような重要なはたらきを持つ細胞膜の構造モデルとして、SingerとNicolsonによって「流動モザイクモデル」が1972年に提案されました。
これは、
リン脂質分子が疎水性(水を弾く性質)部分を向かい合わせにして親水性(水になじむ性質)部分を外側に向けた二重層の膜を形成し、その膜にタンパク質が入り込んだ構造をしています。リン脂質分子どうし、タンパク質分子どうし、そしてリン脂質分子とタンパク質分子は互いに固く結合せず、流動性を示しながらも互いのおよその位置関係を保ち、全体としては細胞膜の構造をかたち作っています。スチレン棒を材料に、流動モザイクモデルのモデルを作ってみました。
材料
スチレン棒φ6mm、スチレン棒φ10mm、ステンレス木ねじ(2.7×20mm)、銅線、
ビーズ、木工用ボンド、ペットボトル500mL、アクリル絵の具、希土類磁石、
作り方
リン脂質
リン脂質はグリセリンに脂肪酸が2分子とリン酸化合物が結合した分子です。脂肪酸の炭化水素鎖が疎水性を、グリセリンとリン酸が親水性を示します。隣り合ったリン脂質分子は結合しておらず、その隙間を通って小さい水分子が細胞内外を出入りしますが、大きい分子はこの隙間を通り抜けることができません。その結果が半透性という性質となって表れるのです。
φ6mmのスチレン棒を50mmに切断し、アクリル絵の具で中央2mmを黒に、両端5mmを青に塗りました。青はリン脂質分子の親水性部分を表し、黒は2つのリン脂質分子の間の隙間を表し、塗り残した白い部分は疎水性部分を表しています。つまり、1本のスチレン棒は膜の表側と裏側で向かい合った2個のリン脂質分子に相当します。一端に爪楊枝で下穴をあけ、オモリ代わりの木ねじを1本ねじ込みました。
ナトリウムポンプ
ナトリウムポンプは細胞膜にあるタンパク質のはたらきのひとつです。リン脂質二重層を通過できないイオンを、このポンプのはたらきにより出し入れします。ナトリウムポンプは細胞内のナトリウムイオンを細胞外に出し、逆にカリウムイオンを外から中に入れます。入ってきたカリウムイオンは別のルートを通って細胞外に出ていくので、細胞内のプラスイオンは少なくなり、細胞外に対して電位がマイナスになります。この状態(静止電位といいます)を維持することは細胞が活動していく上で必須の条件なので、ナトリウムポンプは生きているすべての細胞に備わっています。ある種の毒はこのポンプを停止させることで細胞を死に至らせます。
φ10mmのスチレン棒を75mmに切断し、赤色に塗りました。下側に下穴を3カ所開け、3本の木ねじをねじ込みました。これを4本束にして、イオンの通り道を表現することにしました。が、4本束にしてしまうとペットボトルの口に入りません。2本なら通るので、接着剤で2本ずつ接着し、ボトル内で磁石の磁力により4本の束になるようにしました。磁石はなるべく小さく強力なものが欲しかったので、ピップエレキバンから調達しました。
ABO式血液型抗原
ABO式血液型は細胞膜タンパク質につながった糖鎖による血液型です。糖鎖の先頭にN-アセチルガラクトサミンがあればA型抗原、ガラクトースがあればB型抗原、どちらもなければO型抗原です。この糖鎖をビーズを使って再現してみました。
φ10mmのスチレン棒を赤色に塗りました。ビーズに銅線を通し、その銅線をスチレン棒の上部に刺し、接着剤で固定しました。こちらはビーズの重さがかなりあるので、オモリ代わりの木ねじは1本です。そのため、重心が高く単独では真っすぐに立って浮くことはできません。
すべての部品ができたらナトリウムポンプ、血液型抗原をまず入れ、
水を適量入れたあとに、リン脂質を投入しました。太いストローを使うと狙ったところにリン脂質を投入できます。
完成品ギャラリー
ペットボトルを揺らすと、膜がゆらゆら動きます。指でボトルを押すとリン脂質の間をぬってタンパク質が移動します。
参考サイト
関連項目
コメント
- 先日メールしました東京在住の生物講師です(その節はどうもでした)。
こちらへの書き込みは「はじめまして」ですね。
このペットボトルを利用したアイディアはいいですね。
生徒は、膜の構成分子が拡散したり、ウニ卵をガラス針で2つに切ったときに中身がこぼれずに膜が閉じたり、といった現象がイメージできないようです。
そんなときの助けになるのでは、と思いました。 -- AKIO (2010-03-01 00:50:33)
- AKIOさん、こんにちは。
先日はお誘い頂きありがとうございました。
AKIOさんのおっしゃるとおりなんですが、リン脂質二重層の膜を縫ってタンパク質が移動するイメージを持つのが難しいようなのは、私も授業の中で感じていました。
で、手に持ってそんな様子を見ることができるものとして今回の作品を作ってみました。
ただ、作ってみてわかったのは思ったほど流動しないことです。
水でボトルの内面にへばりついてしまいます。
それと、糖鎖はプラスチックビーズではなく小さいスチロール球で作るべきでした。
そうすればもう少しバランスよく浮かぶようにできたはずです。
-- yu-kubo (2010-03-01 08:52:19)
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最終更新:2010年03月03日 11:01