2006-02-04

JT生命誌研究館/実験室見学ツアー


大阪府高槻市のJT生命誌研究館実験室見学ツアーに行って来ました。

生命誌研究館は進化・発生・生態などの生物学の研究所であり、そのような研究内容の表現・伝達についても研究する場所だそうです。研究者が自らの研究を市民に語ることは、これからもっと積極的になるべきだと思う私にとっては、とても興味深い施設です。普段公開されている展示の他に、通常は公開されない実験室が見学できるということで、岐阜から大阪まではるばる遠征してきました。


講演『高槻の蝶』


まず最初に生命誌研究館顧問の吉川さんのお話を聞きました。吉川さんがお昼休みの散歩の際に近所で見かけた、高槻市内の蝶についての話をしてくださいました。その後、普段は入れない3階の研究室に移って、各ラボの研究についての説明を研究員から直接聞きました。


脳の形はどうやってできるのかラボ


このラボはアフリカツメガエルを使って発生の研究を行っています。
最初の受精卵には上下の区別はありますが前後・左右の区別はありません。それがどのような過程を通じて作られていくのかというと、「背中になれ」という命令を出す部分(形成体)があって、その命令で背中になるからだということを、高校の生物学で勉強します。今回の説明では「○○になれ」という命令ではなく、「○○になるな」という、否定の命令があるのだという話が面白かったです。


昆虫と植物の共進化ラボ


アゲハチョウの幼虫は特定の植物の葉をエサとして成長します。親はその葉を選んで産卵します。ある種はミカンを食草とし、別の種はニンジンを食草とします。これら2種のアゲハチョウの共通祖先はミカンもニンジンも食草としてたのかなあと、何となく思ったのですが、他のアゲハチョウの食草を考えると、その共通祖先はやはりミカンを食べていたと考えられるんだそうです。進化の歴史のどこかの時点で、ニンジンを食べ始めた変わり者が現れたってことですよね。そう考えると不思議ですね。


ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ


クラゲは放射状の体(放射相称)を持っていて、上下はあるけど前後や左右はありません。われわれヒトは左右相称です。その発生のしくみは不思議ですが、それが違うから違う種になるんですよね。
ところでヒトデは五放射相称ですが、どのような発生のしくみになっているのでしょうか? そしてそして、4でも6でもなく、どうして“5”という数になったのでしょうか?


DNAから共進化を探るラボ


節足動物は昆虫やエビ・カニ、ムカデなどを含む、地球で最多の種を擁する生物グループです。これらの系統関係をDNAの塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列から解明しようとしている研究室です。


チョウのハネの形づくりラボ



チョウのハネの輪郭は、ヒトの胎児の指が水かき部分のアポトーシスによってできるように、アポトーシスでできるのだそうです。そして、ハネの鱗粉は細胞なんだそうです(ビックリ!)。このようなハネの形成がどのような配置・パターンによって作られるのかを研究しているそうです。


今回は研究に用いている電子顕微鏡の操作を見学させていただきました。上左の写真が電子顕微鏡の本体で、上右はサンプルに金メッキをかけるイオンスパッタリングという装置です。


上左は金メッキ済みのチョウの翅です。上右はこれを実際に電子顕微鏡で撮影したものです。


Ω食草園



4階にある、チョウのための食草を集めた庭です。いつか、バタフライガーデンを作ってみたいなあ、なんて思いました。


参考文献

JT生命誌研究館のホームページ


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最終更新:2006年02月09日 09:01