2007-05-26

盲点の検出


 私たちの眼にはフィルムの代わりになる網膜があります。ここにある視細胞に光が当たると興奮が発生し、それが視神経を通じて大脳に伝えられることで視覚が生じます。網膜上には視細胞が存在しない領域である盲点(盲斑)が存在します。通常私たちは2つの眼を持っているので、左右が補い合うことで盲点の存在には気付くことはありません。また、私たちは無意識のうちに眼を細かく動かしてもいます。下の図を用いてその盲点を検出することができます。
 右眼を閉じ、左眼を黒点(・)の正面に置き、点を見つめてください。そのままの状態で図に顔を近づけていくと15cmくらいのところで白丸(○)が消えるはずです。その時、黒点からの光は網膜の中心(黄斑といいます)に、白丸からの光は盲点に当たっているのです。



脳は世界を描く


 盲点には視細胞がないので、その部分では光を受け取ることができません。だから視界の盲点に相当する部分は黒く塗りつぶされたようになってもよさそうです。でも上の図で確認できたように、白丸だけが消えうせて、全体が灰色に塗りつぶされています。脳は、網膜からの情報に欠陥があると、それを滑らかに、矛盾のないように勝手に補ってしまうのです。そのことをはっきりと確認するために次の図を見てください。
 この図も先程と同じように、右眼を閉じて左眼を黒点の正面に置き、点を見つめながら図に顔を近づけてください。あなたにはどう見えましたか?


 つながっていない直線がつながってしまいましたね。私たち脊椎動物が今までの進化の過程で見てきたものはほとんどの場合、盲点の上下で別のものになっているのではなくひとつながりのものだったので、そのように自動的に脳で修正をかけてしまうように私たちの脳は進化したのです。次の図はどうでしょうか?



錐体(すいたい)細胞と桿体(かんたい)細胞


網膜の中心部を黄斑といい、そこには錐体細胞が集まっています。錐体細胞は色覚を感知する細胞で、赤・緑・青のいずれかの光に反応します。黄斑の周囲には桿体細胞があり、これは明暗と輪郭を感知する細胞ですが、色覚は感知できません。
ということは、本当なら私たちは自分の正面の狭い範囲だけで色を認識し、周辺視野は白黒の世界として認識するはずなのです。でも普通は視界のすべての部分で色を認識しています。正確に言うと、視界のすべての部分で色を認識しているつもりになっています。周辺視野の色は、記憶を元に脳が勝手に着色しているのですね。脳ってすごい!


参考文献

Wikipedia 盲点
『脳のなかの幽霊』V.S.ラマチャンドラン サンドラ・ブレイクスリー 角川書店


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最終更新:2007年05月30日 16:50