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糖尿病

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概説
 厚生労働省の実態調査によると糖尿病患者は予備軍も含めると現在日本人の約1割にものぼり、腎不全による人工透析の導入原因、また失明の大きな原因となっています。膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるインスリンの分泌低下により、または、分泌されていてもインスリンの作用低下により慢性に高血糖をきたしている状態が糖尿病と考えられます。日本糖尿病学会は糖尿病の診断基準と分類を1999年に、以前と変更した形で提唱しています。

糖尿病の病型
1)1型糖尿病:以前はインスリン依存性糖尿病(IDDM)と呼ばれました。何らかの原因による膵β細胞の破壊により発症し、通常は絶対的インスリン欠乏に至ります。原因として自己免疫性、特発性(原因不明)などがあり、若年発症の多くの例は1型です。

2)2型糖尿病:以前はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)と呼ばれていました。インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性(すなわちインスリンの働きの低下)が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがあります。中年以降の発症例の多くはこの型です。インスリン分泌低下をきたす素因に複数の遺伝的素因、さらに過食、肥満、運動不足、ストレスなどの生活習慣を含む環境因子および加齢が加わり発症します。

3)その他の特定の機序、疾患によるもの
[1]遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
[2]他の疾患、条件に伴うもの
 (1)膵臓疾患
 (2)内分泌疾患
 (3)肝疾患
 (4)薬剤や化学物質によるもの
 (5)感染症
 (6)免疫メカニズムによるまれな病態
 (7)その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの

4)妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM):妊娠を契機に発症した糖尿病あるいは耐糖能異常のことで、すでに糖尿病と診断されている患者さんが妊娠した状態とは区別されます。妊娠糖尿病は、[1]後年、真の糖尿病に移行しやすい、[2]胎児に巨大児などの合併症が起こりやすい、[3]子どもが将来糖尿病になる可能性がある、などの点で重要です。

症状
 糖尿病はよほど高血糖にならないと症状がでないため放置されやすく、後に重症な合併症が出現してから初めて診断されることもめずらしくありません。以下の症状も特に高血糖が著しい場合に出現します。高血糖時の典型的症状は、倦怠感、口渇、多飲(夜間多飲)、多尿(夜間多尿)、強い空腹感、多食、体重増加などですが、重症な場合は反対に体重が減少します。高血糖が続くと全身の血管が障害を受け、血管壁はかなり早い時期から障害を受け始めます。高血糖を長期間(10~20年)にわたって放置すると軽快することがない深刻な合併症が出現します。合併症には細い血管が冒された場合の網膜症(視力低下、最悪の場合失明)、腎症(蛋白尿、むくみなど、場合によっては腎不全による透析導入)、神経症(しびれ、感覚麻痺など)と太い血管の動脈硬化が促進された場合に起こる心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、壊疽などがあります。

診断
 糖尿病の診断基準について以下に示します。

1)糖尿病の診断基準(日本糖尿病学会、1999)
〈糖尿病型の判定〉
・75gGTT(ブドウ糖負荷試験)を行った場合
 [1]糖尿病型  空腹時  ≧  126
 または/および2時間値  ≧  200
 [2]正常型  空腹時  <  110
 および2時間値  <  140
 [3]境界型    上記のいずれにも属さないもの
・随時血糖が200mg/dl以上の時:糖尿病型と判定されます。

〈糖尿病型の診断〉
 別の日に行った糖負荷試験検査で再び糖尿病型だった場合または随時血糖が200mg/dl以上を確認したら糖尿病と診断されます。
 また、現在、糖尿病型で以下の場合は血糖検査を繰り返さなくても糖尿病と診断されます。
 ○糖尿病の特徴的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)がある
 ○HbA1c(ヘモグロビンA1c)が6.5以上
 ○過去に高血糖を示す資料がある
 ○過去に糖尿病として診断されたことがある
 ○糖尿病性網膜症がある

 糖尿病の特殊検査について以下に示します。

 ・HbA1c:過去1~2カ月間の平均血糖値を示す指標です。
 ・グリコアルブミン、フルクトサミン:過去約2週間の平均血糖値を示す指標です。
 ・1.5AG:尿糖の排出量の多少を示す指標です。
 ・尿蛋白、尿中アルブミン、尿中IV型コラーゲン:合併症の腎障害をみる検査です。初期の腎症をみるには尿中アルブミンや、アルブミンより初期から検出される尿中IV型コラーゲンのチェックが必要です。
 ・眼底検査:合併症の網膜症の状態をみる検査です。糖尿病がある場合、定期的な検査が必要です。
 ・神経検査:合併症の神経症をチェックするために腱反射検査、振動覚検査などを行います。

標準治療
 糖尿病の細小血管合併症はある程度進行してしまうとその進行を阻止するのは難しくなります。細小血管症の発症予防や進行を遅らせるためには、糖尿病発症直後からの血糖をはじめとする代謝コントロールが必要です。そのためには食事療法、運動療法、薬物療法などが必要となります。

[1]食事療法
 ・性、年齢、肥満度、活動量、血糖値、合併症の有無などを考慮し、1日のエネルギー摂取量を決めます。
 ・決められたエネルギー摂取量内で糖質、蛋白質、脂質のバランスをとり、適量のビタミン、ミネラルも摂取して、いずれの栄養素も過不足ない状態にします。一般的には指示エネルギー量の1/2を糖質、蛋白質は標準体重1kg当たり成人の場合1.0~1.2g(1日約50~80g)とし、残りを脂質でとるようにします。食事は朝、昼、夕ほぼ等しいカロリーを摂取します。
 ・血糖コントロールができていない場合、肥満、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を合併している場合は極力禁酒が必要です。
 ・高血圧合併症例、腎症合併例では食塩を制限します(7g/日)。
 ・腎機能が低下し始めたら蛋白制限(0.8/kg×標準体重 以下)も必要です。

 <エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量>
 標準体重(kg)=身長(m2)×22
 身体活動量の目安
 軽労働(デスクワークが主な人、主婦など):25~30 kcal/kg標準体重
 中労働(立仕事が多い職業):30~35kcal/kg標準体重
 重労働(力仕事の多い職業):35~40kcal/kg標準体重

[2]運動療法
 ・歩行運動では1回15~30分間、1日2回などが適当(7,000歩/日以上程度)です。
 ・運動の糖代謝に対する効果はインスリン感受性の改善です。運動療法を制限したほうがいい場合(血糖コントロールが極端に悪い場合、増殖性網膜症による新鮮な眼底出血がある場合、腎不全のある場合、心・肺機能に障害のある場合)は個々の症例での検討が必要となります。

●標準治療例
経口血糖降下剤
〈SU剤(スルフォニル尿素剤)〉
 膵β細胞からのインスリン分泌促進作用があります。
 ・ダオニールオイグルコン:1錠1.25mgと2.5mgがあり、血糖の状態によっては、最初は1.25mgの半分の量から始めます。1回投与の場合、朝食前または朝食後に服用。2回投与は朝夕食前または後に服用します。そして徐々に増量し、維持量を決めます。ただし、1日5mg以上になると増量してもあまり効果はあがらない、低血糖に注意が必要、体重が増えやすくなるなどの欠点があります。
 ・グリミクロン:1錠40mg。服用方法などは上記と同様。抗血栓作用、血小板機能抑制作用があります。
 ・アマリール:1錠1mgと3mgがあります。インスリン分泌促進作用だけでなく膵外作用をあわせ持ち、インスリン感受性増強作用があります。そのため、他のSU剤の欠点の体重増加はありませんが、血糖降下効果はダオニールオイグルコンのほうが強いと考えられます。1日1mgから開始し、服用方法は上記と同様です。

〈速効性インスリン分泌促進薬〉
 SU剤と同様に膵β細胞からインスリン分泌を促進するが速効性があり、食後の高血糖の改善に有効です。空腹時の血糖値がかなり上昇している例ではあまり効果が期待できず、食後高血糖をきたす比較的発症早期に効きめがあります。食事の直前に服用します。
 ・スターシス ファステイック:1錠30mgと90mgあり。1回90mg1日3回、毎食直前服用。

〈BG剤(ビグアナイド剤)〉
 消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性改善などにより血糖低下作用を発揮します。SU剤の欠点である肥満をきたしません。SU剤と作用メカニズムが違うためSU剤単独でコントロール不良な例やインスリンとの併用などで用いられます。
 ・メルビングリコラン:1錠250mg 1日250~750mg、1~3回に分服 食後服用。
 ・ジベトスB:1錠50mg 1日50~150mg 1~3回分服 食後。

〈α-グルコシダーゼ阻害剤〉
 腸管からの糖吸収抑制作用により食後高血糖を是正します。ベイスン・1錠 0.2mgと0.3mg 1回 0.2mg1日3回毎食前服用 1回0.3mgまで増量可。
 ・グルコバイ:1錠50mgと100mgあり 1回100mg1日3回食直前服用 1回50mgより投与開始。

〈インスリン抵抗改善剤〉
 インスリン抵抗性を改善します。
 ・アクトス:1錠15mg、30mg 1日1回 15~30mg服用 食前または食後 重症の肝機能障害を起こすことがあり、肝機能をチェックしながら使用します。女性で特に浮腫をきたしやすく、また心不全の発症や悪化する場合があります。

インスリン
 ・近年はペン型注射器の開発により、よりインスリンが使用しやすくなっています。
 ・従来のインスリンには作用時間から速効型(R)、中間型(N)、持続型(U)、2相性(10R、20R、30R、40R、50R)がありました。正常のインスリン分泌には持続的に分泌されている基礎分泌と食事後などに分泌される追加分泌とがあります。インスリン分泌がほとんどない例では基礎分泌を中間型や持続型で、追加分泌を速効型インスリンで補っていました(強化療法)。
 最近、速効型より速く効き、速く血中から消失する超速効型インスリン(ノボラピット、ヒューマログ)が使用されるようになりました。食事の直前に打てば良いため使いやすく、低血糖の頻度が減る、食後高血糖がより改善される――などの利点があり、多くの患者さんに対して使用されています。また、水溶性持続型インスリンが使用可能となっています。これは中間型、従来の持続型と比べて作用のピークがないため、正常人のインスリンの基礎分泌に相当する部分を補う際に、より正常分泌に近いパターンをつくりだせます。ただ、インスリン注射器のトラブルにより、現在、使用を控えている場合もあるようです。今後、安全に使用できるようになり、超速効型インスリンとの併用が行われればより有用であると考えられます。インスリン分泌がある程度残っている例では混合型や中間型インスリンの1日1~2回投与などを行っている場合も多くあります。
 以上の薬物療法はいずれも低血糖への注意が必要です。

アルドース還元酵素阻害剤:糖尿病性神経症の末梢神経障害の自覚症状を改善。
 ・キネダック:1錠50mg 1回50mg1日3回毎食前服用。

【糖尿病緊急状態の治療】
 [1]ケトアシドーシス性昏睡:非常に高い血糖値(300~1,000mg/dl)を示し、血中・尿中ケトン体が陽性となり脱水をきたします。放置すれば生命の危険があります。

 [2]非ケトン性高浸透圧性昏睡:高血糖(600mg/dl↑)を示しますがケトン体は陽性になりません。脱水を伴います。放置すれば生命の危険があります。

 [3]低血糖性昏睡:経口剤、インスリン使用中に規則正しい食事をしなかったりした場合起こりえます。不安、動悸、脱力感、冷や汗などの症状があります。放置すれば昏睡に陥る可能性があります。

治療
 ・ケトアシドーシス性昏睡、非ケトン性高浸透圧性昏睡は糖尿病患者が治療中に発熱、下痢、嘔吐などをきたし、または食欲不振のため食事ができない時(シックデイ)に起こることがあります。こうした時はすぐ主治医の指示を受ける必要があります。これらの状態では持続インスリン注入、大量輸液などが必要です。
 ・低血糖時は砂糖(α-グルコシダーゼ阻害剤服用中はブドウ糖が有効)や糖分を含んだものを摂取します。経口摂取が不可能の場合は砂糖を歯肉の間に塗りつけ、なるべく早く病院に行ってグルコース注射を受けます。場合によっては家族にグルカゴン(血糖上昇作用あり)の筋肉注射をしてもらうこともあります。


※「標準治療」は診療活動をする専門医により行われている一般標準的な治療法の解説です。厚生労働省や学会で作成した「ガイドライン」そのものではありません。
病後の経過/生活上の注意
 糖尿病(境界型も含む)と診断されたら、できるだけ早い時期から標準治療の項で述べたような方法で血糖のコントロールを行うことが必要です。血糖が良好にコントロールできていれば、合併症の進展の心配はあまりなく、正常の人と同様な生活ができます。

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