僕とパチュリー

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紅い月が佇む 時は丑三つ 妖(あやかし)どもは月と踊り 人間どもは寝静まる 霧深き湖の傍らに凛として咲く花あり 花はふわりと風に揺られその愛らしさを奏でる ゴーン 一つ鐘が鳴る 湖の近く 月より紅き館 紅魔館 その屋根に聳える鐘の重い音が夜を深い夜演出する 「お嬢様、お茶をお持ちしました」 「そこへ」 「はい」 従者の君は主のテーブルにカップを音も無く置く。 続いてポット、砂糖、パウンドケーキを順に並べる。 それが済むと月を仰ぐ主にそれではと残し姿を消した。 コンコン ドアがノックされる。 「お茶かしら」 「はい」 小声であるにも関わらずドア越しに会話が成立する。 ドアを開け、消える。 無数の本棚の森の端のデスクへと。 この部屋の主、パチュリー・ノーレッジの元へと。 しかし、そこにはもう一人、男が隣に座っていた。 「なお様とご一緒でしたか。カップとケーキをお持ちしますので少々お待ちください」 メイド服の彼女はそう言い一礼をする。 「いや僕はいいです」 そう答える。 どうもこの館の紅茶は僕の口には合わない。 人間とそれ以外との違いか、それとも・・・ 「それは残念です。今日は新しい葉を用意したのですが」 カップ、ポット、砂糖、ケーキを並べそう零した。 「それでは、失礼します。なお様もどうぞごゆっくり」 咲夜さんはまた一礼し、消える。 ドアの閉まる音が微かに聞こえた。 パチュリーはといえば、ずっと魔導書を読んでいた。 何かを言おうとしたが、やめる。 彼女に倣い、魔導書に意識を戻す。 普通の人間の僕には、簡単な魔導書ですら難しい。 法則性を見つけ、解読し、鍵を見つける。 そうして初めてその魔導書に記された魔法が使えるのだ。 僕は魔法が使いたいわけではない。 ただ隣にならんで本を読むだけで… パタン パチュリーは本を閉じ、紅茶を淹れ、口をつける。 この館のポットやカップは常に温かく、紅茶の温度が落ちないような作りをしている。 なんとも羨ましい。 「魔導書の進み具合はどう?」 「ああ、うん。手応えは感じてる」 溜息を吐き、本を閉じる。 パチュリーはカップを置き立ち上がる。 「なら、ちょっと実践してみましょうか」 「実践?」 「そう。人間のあなたは魔法を使った事が無い。つまり頭より体を動かしたほうが効率が上がるのよ」 なるほど。 納得。 「よし、やってみるよ。どうすればいい?」 「これを使うの」 パチュリーはデスクの引き出しから小さなガラス玉の様な物を取り出す。 「それは?」 「これは発光球。木の属性魔法と同調して発光するの。この館の照明は全てこれよ」 「木の属性? 光なら火とか日とか月の属性っぽいけど・・・」 「それはただの愚かなイメージよ」 呆れたといった顔をし、属性についての講義が始まった。 「理解できた?」 「なんとか…」 頭がパンクしそうだけどね。 「それじゃやってみて」 差し出された発光球を受け取り距離を置く。 右手に魔導書を開いて持ち、左手を前へ突き出す。 左手に握っている発光球へ力を流すイメージ。 そっと左手を開くと発光球は宙に浮かんだ。 よしっ、いける。 右手の魔導書へ頭から知識を送り込む。 そこからさらに頭へ知識を送り返し、最後に左手を通し発光球に流し込む。 光った。 発光球は弱くも淡い光を放った。 が、しばらくして光を失い、床に落ちる。 「あっ」 落ちた発光球を拾おうとした瞬間眩暈に襲われた。 体が宙へ投げ出される。 「力の使いすぎね」 パチュリーが倒れる体を受け止めてくれた。 椅子に座らされて、紅茶とケーキを食べるように言われた。 「初めてであれだけやったんだもの。倒れて当然よ」 怒っているのかそれとも違うのか。 霧のかかったような頭ではわからなかった。 紅魔館の玄関を開くと朝靄が広がっていた。 近くに湖があるからいつもの事だといつか咲夜さんが言っていた。 「道中、お気をつけて」 咲夜さんは一礼する。 「うん。ありがとう」 まだ少し頭がくらくらするけれど、家に帰るのに差し支えるほどではなかった。 「なお様」 突然呼ばれ、振り返る。 「今日のパチュリー様はとてもご機嫌でした。何があったかは存じませんが、お礼を申し上げます」 いつもの一礼ではなく、朝の陽射しがよく似合う綺麗な笑顔で見送ってくれた。

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