ぼんくら小町


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予期せぬ訪問客が訪れたのは閻魔と別れた翌日だった。

「こんちはー」

玄関前でにこにこ笑う紅い髪の少女。
手にはおよそ実用的でなさそうなぐにゃぐにゃした大鎌が一振。
こんな酔狂なものを持ち歩く奴は幻想郷でも滅多にいない
わかりやすいトレードマーク、そう、彼女は死神だ。

「なんのようかな」

そっけなく答える。ここまで辿り着いたんだ。ボロは出したくない。

「いや、休憩中なんだけどさ、こうも寒いとあったかいお茶でもほしくなってさ
そしたら丁度いいとこにあんたの家があったもんだから」
「つまりお茶をたかりにきたと」
「まあそんなとこさね」

わるびれもせずそう答える。
さてどうしたものか。この死神鈍そうにみえて結構鋭い。
多分俺と閻魔の関係には気づいていたろうが……

「仕方ないな、あがりなさい」
「ありがと、旦那」

まあ適当にあしらえばいいさ、もう仕事は終わったも同然だ。
かたくなに拒んでいらぬ疑いを招き入れる必要もない。


畳敷きの居間に彼女をまたせお茶を淹れる。

「ぷはーありがと、やっぱりあついお茶がいちばんだねー」
「あいにく茶菓子はこれしかないがな」
「いやいやこんなおいしい羊羹までつけてくれるなんてあんたいいやつだね」

そういってぱくぱくと目の前の羊羹をかたげると満足したのか畳の上に大の字になってねっころがる。
どうやら用心しすぎたようだ。ただ単にたかりにきただけらしい。

「あーおいしかった。ところで書類はどこだい?」

虚をつかれるとはこういうことをいうのだろう。
最後の一言が脳に達するまで数瞬の時間がひつようだった。

「……書類?なんのことだ」

答えながらも心が冷えつく感覚を抑えられない
今この瞬間書類といえば俺にとっては一つしかない。
だがこいつにとってはそうでないはず。

「書類は書類さ。閻魔帳の一部っていったらわかりやすいかな」

あまりのことに二の句が継げない。何故ばれた、頭の中に警鐘が鳴り響く。

「どうして黙ってんだか。あんたが昨日ちょろまかした書類のことだよ」

目の前の少女は相変わらずニコニコ笑っていた。
玄関で出会ったときと全く変わらない。世間話でもするかのようにこちらの急所をついてくる以外は。

「四季様が閻魔帳の管理をおこたるなんて本来ありえないんだけどね
 フラれたショックで動揺するなんてかわいいところもあるじゃないか」

ゆっくりと体をおこし、こちらの反応をうかがう様子もなくそういってけらけら笑う。

「さっきからなんのことだかわからんのだが」

早鐘を打つ心臓を押さえつけ務めて冷静を装う。どういう方法でこちらの動きをしったかはしらんが
証拠を突きつけられたわけでもないのだ。しらばっくれる方法などいくらでもある。

「だから書類の場所だよ」
「なんのことだかわからんと……」

最後まで言い切ることができなかった。一瞬のうちに立ちあがった彼女の獲物が俺の首筋にビタりと当てられたからだ。

「じつのところあんたと問答するつもりはないんだ」

そういって大きくあくびをする。首筋に当てられた鎌の冷たさが身に染みる。
こんなもの役に立つはずはない。そう思っても体は動こうとはしなかった。

「わたしが知りたいのは書類の場所、そしたあんたが二度と四季様の周りをうろつかないこと、それだけ」

そういってこちらを見据える。さきほどまでのへらへらした笑みなどどこにもない。
無価値なものをみる凍てついた瞳、まさしく死神のそれだった。

「証拠もなしに失礼な話だな」

本能に逆らい抵抗をつづける。今回の依頼はいままでにない巨額の金が流れ込む。
それにいくら目の前の死神が真相に辿り着こうと証拠がなければ意味がない。
そして証拠を掴む前に雲隠れすればそれで依頼は完了なのだ。

「頑固だね」

そういって首筋に当てた鎌を引き戻す。助かったと思ったのもつかの間。
鎌を大きく振りかぶった彼女は私の足先に大鎌をたたきつけた。
衝撃とともに私の周囲は赤い霧状のものにつつまれる。

「何のまねだ」

震えそうな声をどうにか押さえ相手の目的を探る。

「そこからでてみなよ」

彼女のことばの意味を理解するのは簡単だった。
足を上げようにもほとんど前に進まないのだ。

「わかったかい、で、天井をみてみな」

彼女の指差す方向にはいつのまに呼び出したのか天井を覆いつくすほどの霊魂が集まっていた。

「あと2分後にあれが落ちる」

明日雨が降る、そんな調子で彼女は語る。

「のしいかになるかな、形がのこりゃいいけど」
「証拠も無しに裁判でもする気か!船頭風情にそんな権限などあるはずが」
「知らなかったのかい、あたいはいまさぼってるから仕事とは関係ないんだよ」
「そんな屁理屈がとおるはずが」
「あと一分、探し物は苦手なんだけどなあ」

世間話でもするかのように彼女はつぶやく。相変わらずこちらを見る眼は死神のそれ、蛇に睨まれた蛙、
いやもっとひどい、彼女にとって俺は虫けらにすら思われていない。


30秒。我慢できるのはそれが限界だった。




「小町、起きなさい」
「……ありゃりゃ四季さま。こっちまでやってくるなんて珍しい」
「あなたが勝手に閻魔帳を持ち出したせいで昨日は大変だったというのに」
「いやまあそのすいません……気づかれないと思ったんだけどなあ」
「気づかれなければいいというものではないでしょう、まったく」
「お陰でただでさえ眠れなかったといいのに……いえこれは関係ありませんね」
「……もしかして振られたんですか」
「関係ないといってるではありませんか!だいたいあなたは……」
「まあこれも閻魔経験ですって、裁判官たるもの経験豊富じゃなければ説得力がありませんからね」
「反省の色がまったくありませんね、仕方ない……」
「ありゃ罰則ですか?できれば軽いのがいいんですが」
「そうですね罰として今日は屋台にいきますよ」
「屋台ですか?なんでまた?」
「振られたら屋台で愚痴を吐くのが定番なんだそうで、これも閻魔経験ですね」
「これはぱわはらというやつでは?」
「ごちゃごちゃいわず付き合いなさい。それとそのう……ありがとう」
「へ……今なんて」
「とりあえずさっさと今日のノルマを達成しなさい。それができなければ給料抜きですよ!」
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