桜井淳 発言研究まとめ@Wiki

ステンレス車体は弱い

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ステンレス車体は弱い

JR福知山線脱線:車両ひしゃげ、体が吹っ飛んだ(その2止) 加速優れた軽量車両
2005.04.25 毎日新聞東京夕刊より

◇「新幹線『安全神話』が壊れる日」(講談社)などの著作のある技術評論家、桜井淳さんの話

事故車両が鉄製車両に比べ強度の劣るステンレス製でなければ、車両がマンションにめりこむようなことはなかったのではないか。死傷者も鉄製車両なら半分で済んだと思う。鉄道各社は、車両を鉄から薄いアルミなど軽量の素材にして、電力コストを安くしようと取り組んでいる。コスト重視の一方で、このような万一の事故の際の車両強度などを十分に検討してこなかったのではないか。

古い資料になるが、鉄道ジャーナル誌1984年4月号より。

強度・剛性については、ステンレス車は鋼製車両とほぼ同等である。アルミは確かに材料としては弱いものの、部材や工法の工夫で保っている。(鋼鉄車体の0系の相当曲げ剛性(20^14Kg・mm2)よりも、アルミの200系の方が上(30^14Kg・mm2)・^=べき乗)

加えて、今回の事故の衝撃度は最大数十G(一車両に2,600tという計算もある)と、飛行機墜落にも匹敵し(参考)、たとえは猛烈に悪くなるが、

「ビルの上から、豆腐の入ったステンレスの弁当箱を落としたら、弁当箱が潰れて、中の豆腐が壊れた。じゃあ、潰れない鋼鉄製の重い弁当箱なら豆腐は潰れずにすむか?」

という問の答えを出すようなもの。

死傷者も鉄製車両なら半分で済んだと思う。

という発言も、根拠が出ていない。「じゃあ死者が50人強なら、それで良しなのか?むしろ脱線に至る因子を徹底的に潰すほうが、死者は出なかったのでは?」。完全に評論家的で、事故調査委員会を批判出来る発言ではない。

軽量の素材にして、電力コストを安くしようと取り組んでいる。

そもそも、ステンレスの比重は、鋼鉄とほぼ同じ(ステンレスは10.5%以上のクロムを含む鉄の合金)。決して「軽量の素材」ではないが、サビ代を考えなくても良いから、軽くできるという意味で「軽量素材」と言っていると解釈しないと、この後の考察がつながらないので、あえてそうする。

軽量素材(軽量車体)使用は、ジョイント音(ガタンゴトン音)の軽減や路盤のゆがみ減少(=安全性の向上)、電力消費量の減少=地球環境問題の側面がある。

加えて軽量と言うことは、慣性の法則により、より停止しやすい(初出忘れたが、209系登場当時、運転士さんが面食らったのは、軽量化により、ノッチオフ(アクセルオフ)したあと、減速する時間が早かったことだったとか)。より停止しやすいと言うことは、ブレーキ能力の向上にも繋がる。車体強化した結果、重くなりました=非常制動かけても止まりませんでした、になるのでは話にもならない。

このことを全く考慮していない発言であると判断する。

コスト重視の一方で、このような万一の事故の際の車両強度などを十分に検討してこなかったのではないか。

 正面強度は踏切事故を想定しなくてはならないが、側面は「想定外」としか言いようがない。事実、この後曽根教授佐藤氏に、ここを徹底的に論破される。

なお、
国土交通省が決定した尼崎脱線事故対策
―結果を見て解説するバカの壁―

にて、

〇車両構造と強度の再検討」
〇は私が主張・提案した項目

車両の専門家は、たとえば元東急車輛の佐藤国仁さんのように、私の主張に否定的であったが、行政側がよくここまで決断してくれたものだと感謝している。

と、述べてはいるが、国土交通省が鉄道総研に依頼したのは、サバイバルファクターの研究であり、これすなわち車両構造と強度の再検討ではないことは、念のために申し添える。

さらに。国土交通省の技術基準検討委員会の中間とりまとめが、2005年11月29日に出来ているが、国土交通省の意見も、「車体強度を闇雲に上げるのではなく、車内の乗客や衝突された相手方のダメージも考えて、研究を進めなくてはならない。」と、ほとんどこの事故をふまえた鉄道系blogなどで述べられた意見と同じとなった。

 名指し批判された、佐藤国仁氏の意見(日経ものづくり2005/06)

「事故が起きた。車体がひしゃげた。だから、車体強度を上げよ」と言う要求は、事故時のエネルギーを勘案すれば実現不可能な暴論であることは明らか。無論、事故対策の理念としても誤っている。

や、曽根教授の意見(2005年05月25日 読売新聞紙面(参考))

「車体強度の向上という意見には同調できない。」

とも合致していると言えよう。


(追記)

尼崎脱線事故大破、想定外「なぜ」線路逸脱、専門家に衝撃原因究明徹底を
2005.04.25 大阪夕刊

今回の事故では、衝突した車両が原形をとどめないほど大きくひしゃげて大破し、事故のすさまじさを見せつけた。最近の鉄道車両は、省エネや高速運転のため、薄いステンレス製が主流となっており、事故車両も最新型のステンレス車両。専門家は、軽量化で車両の剛性が弱まったのではないか、とも指摘する。

事故車両は、1991年1月から製造が開始されたステンレス製で、2003年度までに484両製造されている。JR西日本では、京阪神を結ぶ主力車両となっている。

ステンレス製車両は、JRに移行する前、国鉄末期から登場し始めた。それまでの鉄製に比べて▽軽量で速度向上が図れる▽「型枠ができれば、製造面でも造りやすい」(JR西日本)――との利点がある。

しかし、鉄に比べて衝撃を吸収しやすい構造で、今回のように大きな圧力が加わると、剛性の高い鉄製に比べて車内にいる乗客に、その衝撃力が伝わるという危険性も併せ持っている。

軽量化で剛性云々という専門家は、桜井氏しか思いつかないのだが。
(川島令三氏も、どこかのTV番組でステンレスの板を持ち込んでいたが・・)

衝撃吸収ボディなら車内に衝撃力が伝わらなくて良いじゃないか、と、思ったら、「衝撃力が伝わるという危険性」と意味不明の展開。

 なお、衝撃を吸収しやすい特性は、ニッケル誌(ニッケル協会発行)1999/12号5 ステンレスはどのようにして解決の一要素となり得たか:ステンレス鉄道車輌の安全性に、次のように記されている。

 それは曲げられるとより強くなる異常な性質を有することである。これは他の材料よりもより多くの衝突エネルギーを吸収できることを意味する。又、ステンレスはその靭性のために破壊せずにかなり衝撃に耐えることができる。ステンレスは衝撃点から漸進的にしわくちゃになるから、損傷の危険は減少し、変形部分はしばしば除かれ、取り替えられる。
(略)
これがステンレスが他の材料よりも明らかに優れている所である。試験結果は、オーステナイト系ステンレスは炭素鋼やアルミよりも強いだけでなく、変形時に炭素鋼の2.5倍の多くのエネルギーを吸収できることを示している。従って、ステンレスは衝突時に大量のエネルギーを吸収する端部を有するより強くより安全な乗客のコンパートメントを作るのに用いられている。


(更に追記)
読売新聞-国交省、鉄道車両の安全義務づけへ&側面衝突対策など(2005/05/03)

兵庫県尼崎市のJR福知山線事故を受け、国土交通省は2日、鉄道事業者や鉄道車両メーカーに対し、これまで想定外の側面衝突対策を含め、車両に一定の衝突安全性を確保することを義務づける方針を固めた。
強い衝撃を受けて車両が損傷しても、乗客の「生存空間」が確保できるような構造を求めることも検討しており、同省では具体的な指針作りに近く着手する。
自動車の場合、道路運送車両法の保安基準に基づき、一定の衝突安全性の確保が義務づけられている。これに対し鉄道車両は、鉄道事業法に基づき、台車など重要部品の強度や内装素材の難燃性の確保を義務づけているが、衝突安全性についてはこれまで一切、基準がなかった。
各車両メーカーは独自に、衝突の際も一定の安全性が確保できるよう車両を設計してきた。
だが主に想定されてきたのは列車同士の正面衝突や追突事故による「タテ」方向の衝撃。車両の側面から大きな衝撃が加わるような事故は想定外で、タテ方向に比べて「ヨコ」方向の衝突安全性は軽視されてきたのが実情だ。
 また近年はJR、私鉄とも、都市部の在来線は、旧来の鋼鉄製車両より強度が劣るステンレス製車両が主流だ。
今回、事故を起こした「207系」車両もステンレス製。マンションに横向きに激突した2両目は、幅約3メートルの車両が、最も狭いところでは約50センチにまで圧縮され、約70人の犠牲者を出すなど、側面衝突に対するもろさを露呈した。
車両強化の必要性は、2000年3月に起きた営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線の脱線事故でも浮上。この事故では、
ステンレス製よりもさらに強度が低いアルミ製の脱線車両が対向車両と衝突、乗客5人が死亡した。
 この事故後、運輸省(当時)の事故調査検討会は、「衝突時の乗客被害低減のため、車体構造の研究が必要」と提言。しかし我が国では、米国のような実際の車両を使用した衝突試験が行われていないこともあり、提言後も基礎研究にとどまり、車両強化対策は事実上、手つかずのままとなっていた。
国交省は今回の事故を深刻に受けとめ、
米国の実験データも参考にし、側面からの衝撃も考慮するようメーカーに義務づける方針。また車両が衝突した際、車両を変形させて衝撃を吸収する一方、乗客の「生存空間」を同時に確保する設計も求めていく。

福知山線事故の後で、どこかのTV局で箱を使った実験をやっていたけど、どうしたって横の方向は弱くなるのは当たり前。

弱い車両として、日比谷線事故を持ち出してきたようだが、これでは、営団(当時)03系のアルミ車の方に死者が出たかのような、ミスリードを発生させている。(実際は東武20050系ステンレス車。参考

確かに破損の度合いは03系の方がそれこそチキになってしまうほど酷かったが・・。(外板が人を傷つけないように、めくり上がらせない強度に設定するべき、とは、佐藤国仁氏の意見。但し、潰れないように頑丈に、とまでは言っていない。)

米国の衝突試験・・「電車を創る(土岐 實光・交遊社)」によれば、圧縮360tという試験はあるも、なぜ360tなのか根拠はなく、ただ「こう決められてるから」「衝突しても大丈夫なように」だけ。しかも、この基準はATS・ATCも無い頃のもので、電車専用の鉄道にはこの基準はなく、土岐氏は、この基準を「アメリカの本線用電車の発達を妨げている。」とまで断じている。
参考までに。これが村上龍氏の、作り話であることを祈りたいが・・・・。これ、本当?

=(引用)=========
もっと言うと、ATSなんていう気の利いたものもありません。今はアムトラックを
中心に余りに事故が多いので、無線でのコミュニケーションシステムなどを入れてい
るようですが、基本的に線路に設置されたATSなどはありません。その結果として、
私たちはまず先頭車両には乗りません。何故かというと事故があるからです。

2009年3/29追記

2009年3月26日のエントリで「ステンレスやアルミ製の車両は鉄製車両に比べて構造強度が弱い」という従来の持論を展開し、

ステンレススチール製車体に問題があるという意味は、脱線を想定した構造設計をすることなしに軽量化するため、構造材の厚さと数を減らしているためです。 いまは、昔と違って、コンピュータシミュレーション等の採用によって、計算の合理化や最適化は、達成できるでしょうが、それでも、同じ安全性レベルを保ち つつ、従来の半分(安田浩一『JRのレールが危ない!』、金曜日(2006))まで軽量化できるほど、構造設計は、単純ではありません(すべての車体が半 分に軽量化されているわけではなく、2割、3割のものもあります)。

と述べている。しかし、従来の鋼製車体の設計においても、脱線時の被害程度が考慮されていた訳では決してない
また、ステンレスはその名の通り「錆びない」(正確には錆びにくい)から、錆び代をあまり取らずに済むために構造材の厚みを減らすことが出来るだけである。決して設計基準の強度を下げたから薄くなったわけではない。
また、一般にこういう鋼(或いはステンレス・アルミも)構造部材のつなぎ目は溶接される。ところが溶接部というのは母材に比べて強度が低いという少々困った特性がある。よって構造部材の点数を削減して一体化するのは強度向上の理にかなっている。

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