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歪むリアル。B型という「怪物」    ゲーム「PANZER FRONT Ausf.B」



続編ゲームとしてのB型


さて、リアルさとほどよいエンターテイメント性を絶妙なバランスで配合した傑作、パンツァーフロントだが、
2004年5月27日、待望の次回作「PANZER FRONT Ausf.B」が発売された。ドイツ語でB型を示す単語の通り、
スタッフにとってもファンにとっても正統な後継者という認識だったのは言うまでもない。
もっとリアルな戦場を、もっとリアルな戦車戦を目指して作られたB型。
だが、そこには苦しい、余りにも苦しい「リアル」との戦いがあった。
まずは前作、無印ならびにbis(以後この2作を合わせて「A型」と表記する)との比較をしてみよう。

ハード マップ数 デフォルメ具合 扱う戦場
無印,bis PS 25以上+自作マップの製作可 4倍 バルバロッサ以降の東部・西部両戦線
Ausf.B PS2 7,ただし同じマップを複数の軍でプレイ出来るため実質2倍以上 2.5倍 1941年北アフリカ,フランス戦も一応ある

PS2になったおかげでマップはキレイになり車輌のポリゴン数も増え、より実物に近い物になった。
この作品が前作に勝っている最大の点はココだろう。しかし同時に前作未満になってしまった点もある。

まずはマップの数と登場するAFVの種類。前作より遥かに少なくなってしまった。
扱う戦場が1941年北アフリカというとても限定されたものであるため、大戦後半の戦車は全く登場しない。
ティーガーIやT-34/76、シャーマン(PAL版のみ)がおまけとして用意されているが、
有名どころの戦車が「おまけ」として扱われるほど登場する車両はマイナーだ。

戦車マニアでも「自車はM11/39です、頑張ってね」と言われればへこたれるものだ。
「戦車のことを少し知ってて、パンフロに興味がある」という新兵にはさらに取っつきがたい。
これが例えばA型だと、ドイツ軍マップの多くは自車がティーガーIやティーガーIIだったりして
「知ってる戦車に乗ってて気分が盛り上がる」効果が多少はあるだろう。

このゲームでは装甲の厚さと主砲の威力が文字通り命なので、
「自車の主砲の威力ならあの敵戦車の正面を大体○mで撃ち抜けるし、逆に△mまで近づけたら危険」というデータを
ある程度頭に入れておく必要がある。前作で影も形もなかったマイナー戦車を使う際はその数値を覚えることから始めなければならない。
「ティーガーでT-34の群れを迎え撃て!」みたいな分かりやすいモチーフは実はゲーム的な意味でも「分かりやすい」のだ。

全マップのうち1つを除いた他全ては北アフリカの砂漠を部隊としているが、これら砂漠はどのマップも代わり映えが無い。
A型が雪原や市街地、平野に森林といったレパートリーに富んだ内容だったのとは逆だ。
ただでさえ少ないマップがどれも似たり寄ったりだったから、当然の帰結としてファンはストレスを溜めていった。
デフォルメ具合が下がったこともありマップはとても広大に感じられる。実際ゲーム内のスケールでは7km四方の土地の中央に
5km四方の戦場が作られている。冗談抜きに広大なマップだ。しかし建造物が何もないため遮蔽物で敵の攻撃をかわすとか
物陰に隠れて相手を引きつけるといった駆け引きが出来ない。もっともこれは史実でも全く同じで、各軍とも四苦八苦したというが……。

バルクマン・コーナーやヴィレル・ボカージュのような、マニア以外にもそこそこ知名度がありそうなマップはことごとく消え失せ、
マルメディやゼーロウなど「名前だけは知っている」マップもまた無くなった。シリーズのファンにも初心者にも優しくないチョイスだ。

ミッションブリーフィングはA型と同じく説明+マップだが、マップを始めると無線であれこれ状況説明や自部隊の目標を指示してくれる。
それ自体はとてもありがたい。だけども例えば「第5中隊は国境線へ急行し伊軍野砲陣地及び『カプッツォ砦』を支援せよ」なんて無線通信を理解するには
自分の所属は何で、国境線はどっちの方向で、どの辺りに展開すべきかと言うことを確認しなければならない。
A型でもマップの目的やクリアするために必要なことが説明不足の感があったが(アンブレーブ川など)
B型ではより多くのユニットと広大なマップが用意されているためさらに分かりづらくなっている。
ブリーフィングでの説明が数ページ分用意されていることもあるのでなんとか相殺できていると言えそうだが、やはり初心者には理解しにくい。
スタートボタンを押してマップを呼び出せば色々役に立つのだが、コマンドや表記の一つ一つに至るまでが全て英語なので取っつきにくい。
A型と違い、慣れなければ野砲支援もおちおち要請できない。

あなたの所属はイタリア軍の132 Divisione corazzata Arieteの24 reggimento artuglieriaの2 batteriaの7番砲ですと言われて、
イタリア語が読めなくとも軍事と英語に通じた人なら「第132『アリエテ』機甲師団ね。第24砲兵連隊第2大隊を意味してるのかな?」
と分かり、自分を取り巻く状況の理解に繋がるが、そうでない人にはただラテン文字が羅列されているだけである。

とどのつまり、初心者に優しくもなければ旧作のマニアが絶賛することもないゲームなのだ。
シミュレーションゲームとは往々にしてそんなものであるかもしれないが。
結局「初期の北アフリカ戦線」を舞台にした時点で全ては決まっていたのかも知れない。しかし、制作者の石津監督は語る。
このようなゲームを作っていると、キングタイガー対スターリン戦車の対決に
必ずなってしまうのがあまりにも寂しくて、あえてこの戦場を選びました。
ファンの中でも、ゲームの出来はさておいて北アフリカ戦線を選んだ事への称賛は見られる。
同時に同じくらいかそれ以上に、「B型はA型のリメイクで良かったのに」という声も聞かれる。

広大なマップと大戦初期の性能の低い戦車砲は、場合によっては敵と撃ち合うまでだいぶ暇があるといったちょっと気になる現象を生み出す。
ただし、これはトレードオフの結果でもある。全ては同じマップの同じ時間帯に起こっている出来事という凄い仕様となっているため
この現象が起こるのだ。具体的には奇襲したイギリス軍、されたイタリア軍、救援に向かうドイツ軍がいるとすると、
それら3軍は同じマップで同時に行動しており、プレイヤーは3軍のうち好きな陣営を選び、さらに好きな部隊を自車&自部隊として選択できるのだ。
そしてゲーム的にもイタリア軍が壊滅しそうなまさにその時にドイツ軍が駆けつけるというドラマチックな展開となる。

陣営を問わず好きな部隊の好きな戦車や火砲を自分でプレイでき、しかもどの陣営を選んでもゲームはちゃんと成り立つ。
「お前なんぞ戦場全隊から見りゃワンオブゼムだ」という戦場の常識と、シミュレーションゲームとしての完成度が両立している。
逆に言うとプレイヤーの介入できる余地が限られている訳だが、そもパンフロは1人で戦場の趨勢を変えるようなゲームではない。

A型の「バルクマン・コーナー」では「戦闘が始まってすぐ目の前に敵が飛び込んでくる映画的なシチュエーション」が演出されていたが、
それを戦場全体へ拡大した訳だ。マップに同時に存在できるユニットの数もグンと増え、最大54のユニット、
400名以上の歩兵、45の火点が配置されているという。「広い戦場で仲間と共に一兵士として戦う」という感覚はA型よりずっと増しているのは間違いない。
ただ、その感覚を盛り上げるのに一役買っていた「無線通信を各国語の台詞で喋ってくれる」仕様が削られてしまったのは残念だ。

フォート・カプッツォというマップがある。ドイツ+イタリア軍とイギリス軍との戦いで、ここでとあるイタリア軍守備隊を
自部隊として選ぶとなんとプレイヤーは砲兵にさせられてしまう。生身の兵隊が大砲をゴロゴロ転がして戦車と撃ち合うのだ。
撃っても撃っても撃破できない敵戦車を前にプレイヤーは頭を抱えるが、自分をイギリス軍にすると立場はそのまま逆になる。

フォート・ピラストリノというマップもこれまたイタリア軍が主役の戦いなのだが、飛行場の端にポツンと居る
「バルビエリ」を自車とすると戦闘開始直後に戦車長とクルー、周囲に展開する歩兵「ロッシ分隊」との熱いやりとりが交わされる。
A型の会話は一部を除き事務的な交信ばかりだったので非常に新鮮で、今でもファンの間では語りぐさになっている。
また前作と同様、ユニットをより強力な戦車に変えたり、まったく別の国の兵器にしたりと別のユニットに変更できるので、妄想の余地はさらに広がる。
戦場が拡大された分「ここから先へは俺が行かせん!」とか「こんな兵器でどうやって戦えばいいんだよ!」とか妄想できるシチュエーションは増えているし、
マップを眺めて「こんな所に1両だけポツンと配備されてる戦車、何か笑える」なんて発見もある。
これをもって「B型はスルメゲー」というファンも居る。

基本的にバグは見あたらないが、重大なミス、あるいは仕様が2つある。ひとつは砲弾の速度があり得ないほど速いこと。
これはPAL版で修正されたバグだ。もうひとつはフレームレートが異常に低いこと。体感だが20fpsくらいしか出ていない気がする。
とにかくカクカクでとてもプレイしづらい。これはB型の評価を下げている一因だ。


リアルな戦車ゲームって?


前回のコラムでパンフロは敵兵の肉薄攻撃も戦車の乗員の負傷も無いと書いた。B型ではしっかりシミュレートされており、
敵歩兵を砲撃・銃撃・蹂躙などでしっかり掃討しないと死角からの一撃でいとも簡単に撃破される事がある。また乗員が負傷すると、
それが操縦手なら一定時間戦車が行動不能になり装填手なら以後砲弾の装填速度が遅くなる。確かに、実際の戦闘でもそのような事は起こりえただろう。
しかし、それを「ゲーム」に組み込むとなると疑問符を付けざるを得なくなる。要するに戦車が撃破されずとも乗員が負傷したら即ゲームオーバーな訳だ。
無論それとは別に戦車本体の故障も設定されている。主砲が故障し射撃不能になったとしたら、これもまたゲームオーバーとほぼ同義だ。

そして重要な事だが、オプションから故障のオンオフは設定出来ても乗員の負傷は変更出来ない*1
今までは「撃破されなきゃ大丈夫。撃破されれば即終わり」という分かりやすい抽象化が、「重装甲の安堵感」や「紙装甲という緊張感」を
プレイヤーに与え、敵戦車との距離が非常に重要なファクターとなっていたのが、B型は距離に関わりなく起こる*2乗員の負傷を常に気にしながらプレイするという
なんともストレスがたまるゲームになってしまったのだ。撃破した敵戦車から乗員が湧き出し、その乗員に対戦車銃で撃破された日にはふて寝したくもなる。
そりゃ、実際の戦車兵だって常にストレス下に置かれていただろう。だがそれをゲームに組み込む必要性は、いかほどのものだろう。

つまり、B型は現実の要素をこれでもかと言うほど注ぎ込んだ結果、実にプレイしにくいゲームになってしまった。

リアルにするほど爽快感やエンターテイメント性は無くなっていく。A型では「戦車戦の抽象化」「リアルさとゲーム性とのバランス」に対する
決定打を放ったが、それは同時に超えては行けないラインでもあった。砲塔を廻すとそれに合わせてアンテナが倒れるとか、
キューポラから戦車長が顔を出すとか、砲と照準器のずれを再現するとか、砲弾貫徹時のエフェクトが
徹甲弾と榴弾では微妙に違うとか、敵発見の報告を受けると歩兵が前屈みになるとか、砲兵が測距儀を構えているとか、
B型はものすごく細かいところにこだわっている。そういうこだわりはおれも大好きだし評価したい。でも、そうじゃなくても良くないか?
そう言った細かいところに変にこだわらずとも、「戦場の緊張感・リアルさ」をA型では演出出来ていた。

いや逆に考えることも出来るだろう。「A型」はハード面の制約のせいで色々な点を削ったり省略せざるを得なかった。
しかしそれが「戦車戦」と言う、下手するとそれを研究するだけで一生を終えることが出来るかも知れないバケモノを
ゲームとして成り立たせることに繋がった。要するに「A型」は各要素をものすごく上手に抽象化出来た。
抽象化の結果、プレイヤーは余計なリアル――例えば対戦車銃でいきなり乗員が負傷するとか――を気にすることなく
装甲を抜くか抜かれるかのスリルや、僚車を何処に配置するかの駆け引きを存分に楽しむことが出来た。

マップが広大な事は記したが、それを補うためかオプションには「戦車のトルクを5倍にする」という項目がある。
「砲弾の装填速度2倍」と合わせて初心者をなんとかつなぎ止めるための難易度調整機構だが、しっかり機能しているかは怪しい。
パンフロは覚えゲーな側面があって、「ここから敵の増援が出てくるからあそこの敵を倒したら移動」みたいな戦術を立てる必要があり、
戦術さえ立てれば低性能な戦車でもなんとかなる(場合がある)のはA型で証明されている。
初心者にはその「攻略の手引き」を公式から与えた方がいい気がする。難易度を思い切って調整するなら
「自車の装甲貫通力2倍」「自車の装甲厚2倍」なんてオプションがあったとしてもまだ生ぬるい。
「敵の増援が来ない」「時速100kmで走れる」くらいぶっ飛んだ項目が必要だろう。


リアル=面白い?


戦争ゲームを作る際、何処まで具体的にして何処まで抽象的にするかは昔から議論の的だった。
「単位が細かければリアル! 要素が多ければリアル!」という考えのもと、到底プレイできないようなゲームが生み出されもした。

一例を挙げよう。大戦略というゲームがある。ちょっとマニアぶった人間はこのゲームをアンリアルだと言う。
具体的にはクリック一つで生産・配備される兵器はおかしいとか、鹵獲した敵兵器を何の問題もなく乗り回すのはおかしいとか、
占領した都市からすぐさま収入が得られるのはおかしいとか、歩兵が航空機に対してZOCを持つのはおかしいとかetc。
そう言った批判は余りにも的はずれだ。なぜなら「シミュレーション的な意味での正しさ」よりずっと大事なことである
シンプルなルールや遊技性、とっつきやすさを重視した結果、そのような作風になったからだ。

ゲーム性とは何か? いろいろ考えはあるのだろうが、プレイしてて楽しめる要素があるかどうか、だとおれはとりあえず考える。
ゲームは勝ち負けが楽しいのではなく勝つまでの過程、試行錯誤の連続が楽しいのだ。
もちろん勝つ必要がないという訳ではない。仮にじゃんけんをするとして、何を出しても勝つ確率は3分の1だ。で、勝ったとする。そこに喜びなどあるだろうか?
「敵の100倍の戦力を私たちが用意しました。後はあなたがクリックするだけで勝利をつかめます!」と言われても、面白みも何もない。
知力を出し切って勝ち負けを競うから面白いのであり、サイコロを振るかの如き勝ち負けなど無味乾燥でしかない。

たとえばじゃんけんでも「100回じゃんけんをし、それまでの結果にかかわらず100回目の勝負に勝った方が勝ち」なんて前提が付くと話は変わる。
あなたが10回、20回とグーを出し続けるとする。相手は「こいつバカじゃないか?」と思いつつもしっかりパーを出し続けるだろう。
しかしそれが70回、80回と続いたら……? 相手は疑心暗鬼になるに違いない。100回目の「本戦」でもグーを出すだろうか。
それとも裏を読みチョキを出すのか。あるいは「裏を読んだこと」を読みパーを出すかも……?
話をもっと単純にして、「俺グー出すから! 絶対グー出すから!」の一言を勝負の前に言うだけで読み合い、駆け引きは生まれる。
具体的な現実味と駆け引きの楽しさは余り関係がない。正確に言うと、リアリティと面白さは必ずしも比例関係ではない。

前述の大戦略は「リアルじゃない戦争ゲーム」じゃなくて「将棋を複雑にした戦争ゲーム」と捉えると少しは分かりやすくなるかもしれない。
現実の「堅苦しい」戦争と違い、効率なんて無視して自分の好きな兵器を生産しまくってもいいし、負けが込んでる状況で一矢報いる事に全力を挙げてみたりしてもいい。
そういう緩さが認められてるゲームと考えるべきだろう。

戦争ゲームのお約束


世界中の軍事マニアが納得するようなガチガチに理詰めのゲームがあるとして、それはやって楽しいのか? 爽快感はあるのか? カタルシスはあるのか?
我々がやりたいのは戦争ではなくて戦争「ゲーム」である。兵器の生産に歩兵で3ヶ月、戦艦なら700日かかったり、占領した都市から湧き出すパルチザンとの戦いを
シミュレートしたいのなら大戦略じゃなくHoI2をやるべきだ。もっともHoI2にしても「陸海空を師団単位で動かして兵器の生産も決めて大臣も更迭出来る俺って何者なの?」
とか「全戦線の状況をリアルタイムで観察し、即座に命令を下せるっておかしくね?」などとというシムシティと同じ疑問点が出て来るし、
だからといって予算会議に出席するところから始まる戦争ゲームがあったとして、面白いかどうかは果てしなく疑問だ。
「提督の決断2」の会議システムもカードやコマンドといったゲーム的要素を持たせる事で解決しているのだから、最終的にはどこかで抽象化することが求められる。
「地平線から土煙を上げて突撃してくるT-34とアウトレンジで撃破せんと迎え撃つティーガー」という誰もが持つ共通認識は実はそんなに起こらなかったのかもなんて
話があるが、この話に基づいたゲームにどれだけ遊びの余地があるのか。そもそも現実の戦争に面白みなどが介入する余地があるのかどうか。
多少不謹慎な言い回しだが「面白い戦争」「気持ちの良い戦争」がしたい見たい聞きたいからゲームをするのだ。

多くの戦略級~作戦級シミュレーションゲームに共通する「お約束」がある。プレイヤーは国家の全権を任されており、どれだけ負けが込んでも
ある日突然解任されることはない。前線の部隊がドイツ革命ばりに反乱を起こして国家機能が麻痺することもなければ
将軍達が団結して自分を暗殺しに来ることもないし、国民の厭戦感情が爆発して柱に吊される恐れも無い。ある日突然隕石が落ちてきて文明崩壊なんてこともないし、
戦線を思い切り縮小したところで誰かに怒られることもなければ、金食い虫の戦艦を片っ端から廃艦にしても背中から刺されることはない。
プレイヤー演じる総統(や大統領や書記長や首相)が交通事故に巻き込まれてゲームオーバーなんて事もない。それはもう大前提だ。*3
でもこれらの要素をぶち込んだゲームは多分つまらない。「軍隊を縦横無尽に動かしてドンパチする」というゲームの目標を無意味に妨げるからだ。
つまり、世の中には加えても良い「アンリアル」と加えるべきでない「リアル」がある。

軍司令官の階級章を付けたプレイヤーが攻撃を命令し、後は司令部でタバコをくゆらせて報告を待つだけの「リアルな」ゲームと
陸海空全てを指揮出来るプレイヤーが末端の一部隊まで細かく命令を出し知恵を振り絞って戦う「余りリアルでない」ゲームのどちらが面白いかなど論を待たない。
同じ勝利を手に入れてもその重みは全く異なる。リアルにすればするほど「戦争って疲れるし、面白くない」という感想になるのではもはやゲームの意味がない。
プレイヤーが意志を持って介入出来ないのにゲームを名乗って良いのか、というヘンテコな方向へ話が行きかねない。

「どんだけ頑張ってもドイツがソ連に勝てないゲーム」はリアルかもしれないが、プレイしても楽しめないかもしれない。
「頑張っちゃうとドイツがソ連に勝てるゲーム」はプレイして楽しいかもしれないが、リアルではないかもしれない。
でも軍用シミュレーターが求めるリアルとゲームが求めるリアルって方向性が違うんじゃないか。

結局「マリオカートとグランツーリスモを同じ土俵で語ったって何の意味もない」という非常に分かりやすい例えに、この議論は収束する。

総論 B型という怪物


パンフロB型の製作スケジュールがいっぱいいっぱいだったことは公式HPにも載っている。
戦車ゲーというジャンルが売り上げを期待出来ず、結果として予算も大きく取れないのも理解している。

steel furyやT-34 vs. Tiger等何作品か有るのだが、どうにも盛り上がっていない。FPSが毎年何作とリリースされるのと比べると雲泥の差だ。
とはいえFPSも、銃弾1発で死ぬようなゲームはまれで、リアル系とスポーツ系の中間くらいの作品が受けているようだ。
リアルを謳っているFPSでも、「死ぬこと」がべらぼうに安いマルチプレイならともかく、シングルプレイではストーリーの都合上
何だかんだで一対多のランボー的シチュエーションを余儀なくされる。である以上「ワンミス・一発被弾でやられる」のではゲームにならない。
戦車と違って人体は被弾に耐えようがないのだから。「爽快感がないから流行らない」「楽しさとリアルさを両立させるのはもの凄く疲れる」という2点のせいで、
これらシミュレーター的要素を持つゲームはあんまり人気がない。
IL-2シリーズやSilent Hunterシリーズのファンを全部足しても人気FPSのファンの足元にも及ばないだろう。

パンフロB型の評価は難しい。正統進化ではあるけれど皮肉にもゲーム性は薄まってしまった。無印・bisよりも手に汗握って
肩肘張るようなプレイを余儀なくされる。くどいようだがゲーム性とのトレードオフの結果、確かにシミュレーターとしての出来は良くなっているのだ。
それは間違いない。つまらなくてどうしようもないゲームでは無いがじゃあ隠れた名作だと胸を張れるかというとそうでもない。
このゲームでは闇雲に敵に突っ込んで行くと瞬く間に地雷で履帯を吹き飛ばされたり、対戦車ライフルで戦車長が死亡したり、
対戦車砲の集中砲火を浴びたりする。それに対して「そりゃそうか!」と思う人と「なんだこのクソゲー!」と思う人とでは、当然主観的面白さは変わる。
そしてお前自身はどうなんだと聞かれた時、おれは「面白い。面白いが、唐辛子の辛さのような、痛みや汗を伴う面白さだ」と答える他に言葉を見つけられない。

リアルという名前の付いた怪物。それがB型を端的に示す言葉だとおれは思う。







最終更新日 2012-10-25

10/25 追記に追記を重ねて訳が分からなくなっていたので改訂

参考
「制作のアレコレ」 第2回 いろいろなこと/発売から半年を経て
http://web.archive.org/web/20070409175640/http://www.enterbrain.co.jp/game_site/pzf/ausfb/arekore02.html

監督自ら「仕様を削った」とか「納期に追われてマップを減らした」という苦しい開発具合を吐露している。
公式サイトにこのような文章が出てくるのは普通ではない。スタッフの苦労は察するに余りある。











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最終更新:2012年10月25日 18:04

*1 はず

*2 はず

*3 無論、プレイヤーが軍の最高指令官に過ぎず、ために解任されてゲームオーバーなんて作品もある