コラム > SMB

Return to Super Mario Bros.


我々はしばしば過去の名作がなにゆえ名作なのかを「自明」とし、「説明不要の傑作」とか「歴史的名作」といった言葉でお茶を濁しがちである。
そしてその自明の上でジャンルや業界をああでもないこうでもないと批評してみたりする。垢のついた過去を振り回して現在の作品を評価してみれば
立派な懐古主義者の仲間入りだ。「自明」を分解し、作品の面白さを伝えなければ優れた作品もあっという間に過去の遺物となってしまう。

本題。「スーパーマリオブラザーズ」である。超有名な横スクロールアクションである、と言うだけでは説明になっていない。
「マリオ」のどこがどう凄いのか考えてみることで、ゲームに対する新たな見地を得られるかも知れない。今回は手短に。

コースをクリアする方法が明確である
http://web.archive.org/web/20090420112503/http://intara.net/og/smb.shtml
このサイトが詳しい。コースをクリアするのに鍵を取って箱を開けてその中のアイテムを…なんていう、回りくどさが一切無い。

コースが長すぎず短すぎない
宮本茂氏の「ひとつのコースは1分くらいで遊べるように」との指示によりコースの長さが決まった。
1985年前後のダメなゲームには、いやアクションに限らず今のゲームですら「長すぎてだれる」「短すぎて面白くない」はよくあるのだ。

全32ステージのボリューム
陸・海・空・地中・城といった多種多様なステージが用意されている。当時のテレビCMでも強調されていた点だ。

ミスが明白である
マリオがやられる原因は「穴に落ちる・ファイアバーや炎や敵にぶつかる・時間切れ」の3つしかない。
ミスした時には画面が停止するので、これまたダメなゲームにありがちな「何にやられたかすら分からないう」ということは起こらない。
タイムアップの時はキチンと「TIME UP」と表示されるほど親切だ。

アイテムと敵の区別が明確である
http://www.nintendo.co.jp/wii/interview/smnj/vol1/index4.html
これは宮本氏本人の話を読んだ方が分かりやすいだろう。画面下の動画「キノコはどうやってもとれるようにできているんですね。」は
目から鱗が落ちる思いだ。

敵に対するアクションが多彩
全ての敵を倒す必要はなく、適当にあしらうことも片端から踏みつけまくることも出来る。
プレイヤーにルート選択の自由を与えている。

パワーアップするキャラクター
各種アイテムを取ることにより、ブロックを壊すとか火の玉を撃ち出すとかいう新たなアクションを取ることが出来る。
同時にダメージを受けても即死することが無くなるため、熟練者でも初心者でもアイテムを積極的に取りに行く必然性が生まれる。

キャラクターが大きく、わかりやすい
これも良くある話で、小さすぎて敵(もしくは敵弾)が見えづらいとか、潰れてしまって訳の分からないオブジェクトに見えるとか言うゲームが少なからず存在した。
「トランスフォーマー コンボイの謎」を参照せよ。

コントローラーの操作性が良好である
Bボタンがダッシュ、Aボタンがジャンプという不文律を確立したマリオだが、これには理由があるように思われる。
右手親指の先でBボタンを押したまま、指の腹でAボタンを押せるのだ。助走しながら大ジャンプとか、ダッシュしたまま
小刻みにジャンプという動作が可能だ。その時左手は十字キーを操作出来るので、アクションの幅がより広がる。
いい加減くどいが、同時代のゲームには「十字キーの上でジャンプ」というゲームが存在したのである。

キャラクターの操作性が良好である
一方マリオの操作性も良い。「マリオ3」や「ワールド」以降のそれに比べるとジャンプ中の方向転換が難しいものの、
「ボタンを押す長さでジャンプの高さが変わる」といった点や、キビキビとした動作はそれを補ってあまりある。
ちなみに、ジャンプ中のマリオは進行方向より後ろ方向の方がより制御が効く。停止した状態で試してみれば一目瞭然だ。

水色の背景
「マリオブラザーズ」も「ドンキーコング」も背景は黒色であった。地上ステージは明るい雰囲気に、地下ステージは暗い雰囲気に、と差別化を図っている。
world3と6は背景が黒色だが、いつもの水色の背景に見慣れているとなんとも薄気味悪い気がしてくる。
タイトル画面にもそれは現れている。ファミコンのゲームに限らず「黒背景にタイトルとクレジット、それと"PUSH START"」なんていうのは良くあるが、
マリオは地上ステージのマップがタイトル画面として使われており、華やかでポップな印象を受ける。

洗練された音楽
何度繰り返し聞いても飽きが来ない、しかも耳障りでないBGMだ。マイナーコードを使っていないという特徴がある。

致命的なバグがない
バグのせいでクソゲーの烙印を押されたゲームは古今東西枚挙にいとま無い。上はworld256から下はチビファイアマリオまで、基本的に
意図しない限り起こらないバグだ。


あらゆる要素を含んでいるworld1-1
SMBは最初のworld1-1で基本となるアクションが身につけられ、しかもゲーム中に出てくる全てのアイテムが登場する。
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Sunnyvale/6160/newtech/smb111.htm
このサイトによれば段階的に練習が出来る構成になっているとのこと。

http://www.nintendo.co.jp/wii/interview/smnj/vol2/index4.html
また先ほども出てきた任天堂のサイトによると…

中郷 キノコは土管に当たって
   跳ね返って戻ってきますからね。
   そもそもワールド1-1には
   『スーパーマリオ』のすべてのネタが
   惜しむことなく全部入っているんです。
岩田 ワールド1-1は
   やっぱり最後のほうでできたんですか?
中郷 そうです。間違いなく最後です。
   それにいちばん最後まで修正をかけたのも1-1ですね。

world1-1にはマリオの全てが、そしてゲームの全てが詰まっていると言っても過言ではない。
マリオの分析はそれこそ本が1冊書けそうだ。

「スーパーマリオ」では,Aボタンの学習効果が著しい=遊戯性がAボタンに集約されている,と解釈できるという。


最終更新日 2010-09-03




.
最終更新:2010年09月03日 11:53