夏休み特別企画、夏厨の数を統計から調べろ! あるいはプレテクストとしての存在
毎年夏になるとあちこちでうっとおしがられる夏厨。自分としてはそんな存在が本当にあるのか疑問だったし、
正直「夏だなぁ厨」の方がうっとおしいような気もするのだが、実際の所どうなのかと調べてみた。
最初に、「夏厨」を「~10代のネット利用者で2chを利用する者」と定義する。
かなりおおざっぱな定義だが、世代別の2ch利用者数を割り出すことで実態に迫っていきたい。
まず、2chの年代別利用者層を調べたのだが、これがなかなか難しい。
一応下の2つを見つけたのだが、より詳細な調査があったら教えてください。
どの記事も鵜呑みには出来ないが、なかなか興味深い数字になっている。
0-17 15%
18-24 4%
25-34 13%
35-44 42%
45-54 20%
55-64 5%
65- 2%
各年齢の利用者が均等に分かれているとして無理矢理変換するとこうなる。
~10代 16%
20代 9%
30代 28%
40代 31%
50代~ 17%
(四捨五入しているので合計101%になっていることに注意)
表にするとこうだ。
|
2005年 |
2008年 |
2011年 |
~10代 |
20.0 |
16 |
16 |
20代 |
15.0 |
11 |
9 |
30代 |
30.7 |
28 |
28 |
40代 |
21.9 |
29 |
31 |
50代~ |
12.5 |
16 |
17 |
(単位は%)
05年のソースは日本広告主協会Web広告研究会、08年はネットレイティングス、11年はGoogle Ad Plannnerによる。
10代と同じくらいの50代、ガクンと落ち込む20代、
ほぼ同数で両者を足すと半数を占める30&40代と、おおむねどの調査にも類似が見られる。
また年を経るにつれて利用者が高齢方向にシフトしていっているようにも見える
次に年代別の「ネット人口」を割り出してみたい。
より、
平成21年(2009年)のインターネットの利用者は9408万人に達し、人口普及率は78.0%
世代別利用率は、6~12歳が68.6% 13歳~19歳が96.3% である
6歳から12歳までの人口は815万6千人、世代別利用率68.6%を掛けると559万5千人となる
13歳から19歳までの人口は846万人、世代別利用率96.3%を掛けると814万7千人となる
二つを足した1374万人が「夏厨」になりうるネット利用者となる。
5歳以下のネット利用者やネラーというのは流石に考えにくいので、ここでは政府の統計通り無視することとする。
さて、この1374万人で先ほど上げた2chの2011年の10代利用者16%を占めることになる。86万人で1%だ。
この「86万人で1%」は「その世代の2chへののめり込み具合」を表す。
2chの利用者1%を占めるのに必要な人数が少ないほど、頻繁に2chを使っていると言うことだ
20~29歳の人口は1442万人。世代別利用率は97.2%で、ネット人口は1402万人となり、利用者数の9%を占めるので、156万人で1%
30~39歳の人口は1831万人。世代別利用率は96.3%で、ネット人口は1763万人となり、利用者数の28%を占めるので、63万人で1%
40~49歳の人口は1641万人。世代別利用率は95.4%で、ネット人口は1566万人となり、利用者数の31%を占めるので、51万人で1%
表にするとこうなる
年代 |
人口(万人) |
ネット利用者(万人) |
その年代が2chに占める割合(%) |
2ch利用者1%あたりの人口(万人/%) |
~10代 |
1662 |
1374 |
16 |
86 |
20代 |
1442 |
1402 |
9 |
156 |
30代 |
1831 |
1763 |
28 |
63 |
40代 |
1641 |
1566 |
31 |
51 |
要するに、40代のネット利用者に石を投げたとき、石に当たった人が2chを使っている確率は
10代のそれより1.6倍高いと言うことになるわけだ。
この表からは夏厨の存在そのものを読み取ることはできない。が、参考にはなるだろう。
10代はネット利用者の数も、2ch利用者の数も他の年代に比べ劇的に多いわけではなく、
夏休みという「うねり」があったとしても、彼らの書き込みがそうそう目に付くようなことはないはずだ。
10代のネット利用者全てが夏休みにいつもの倍2chにかじり付いている(!)としても、ようやく40代を超える利用頻度になる程度だ。
そもそも、夏厨という現象の根拠は「10代は夏休みの最中暇なはず。よって2chにフラフラとやってきて、お馬鹿な書き込みを残すはず」という
一見筋が通っているように見えて実は無茶苦茶なものに基づいている。彼ら10代の人々が夏休みに暇なのかどうか、
暇をつぶすためにネットをするかどうか、2chをするかどうか、書き込みをするかどうか、その書き込みが「夏厨的」なものか、という
数回のフルイを突破した上でようやく夏厨という現象が観測されるのだから、はっきり言って数字上は誤差として吸収されてしまいそうな物だが…。
以上より7・8月にページビューが劇的に増加しているという訳ではない事が分かる。
少なくとも2chには、言うほど夏厨はいないんじゃないか? と個人的には思える。
これが(比較的低年齢層も利用していると言われる)twitterやmixiやamebaならまた少し違うデータが出てくるはずだ。
次に、各機関が公開している犯罪統計を調べてみる。
夏休みの期間である7,8月に少年犯罪の認知数や検挙数が有意に増加しているのならば、つまり「夏になると学生のタガが外れる」
と言えるのならば、夏厨も観測されやすくなるはずだからだ。
以上より月別の犯罪認知数を表にしてみる。警察庁ではなく警視庁のデータな点に注意。
総数 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
205708 |
15038 |
14933 |
16691 |
17640 |
16875 |
17971 |
18152 |
17912 |
17529 |
18630 |
16935 |
17402 |
うーむ。目立って大きいとは言えないようだ。
しかし、これは全年代をまとめた統計で、ここでの論点である「少年」を正しく反映しているとは限らない。
そこで少年犯罪に限った月別のデータを探したのだが、なかなかよい統計を得られなかった。
年度 |
総数 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
H20 |
766 |
55 |
102 |
65 |
52 |
54 |
65 |
60 |
36 |
60 |
51 |
73 |
93 |
H21 |
786 |
44 |
75 |
64 |
37 |
37 |
49 |
106 |
59 |
91 |
87 |
56 |
81 |
年度 |
総数 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
17 |
806 |
75 |
43 |
65 |
36 |
54 |
113 |
70 |
87 |
57 |
52 |
110 |
44 |
18 |
580 |
36 |
50 |
46 |
43 |
27 |
80 |
41 |
50 |
69 |
37 |
74 |
27 |
19 |
516 |
49 |
30 |
48 |
24 |
30 |
65 |
28 |
47 |
17 |
76 |
69 |
33 |
20 |
498 |
38 |
20 |
42 |
23 |
29 |
61 |
31 |
28 |
37 |
60 |
99 |
30 |
21 |
420 |
25 |
20 |
41 |
19 |
12 |
71 |
21 |
23 |
28 |
43 |
94 |
23 |
ただし、大分県の非行少年数は全国で検挙されたすべての非行少年の0.7%程度、
鳥取県のそれは0.3%程度を占めるに過ぎずデータ的な正しさには疑問符がつくが、参考程度にはなるだろう。
両県とも7,8月に非行少年の数が激増する、という訳ではないようだ。
夏厨は我々が思うほどにはいないのだ、と言えそうなのだがどうだろうか?
※よりよい統計資料、計算の間違いなどがありましたらトップページより連絡いただけると幸いです
最終更新日 2011-07-26
.
最終更新:2011年07月26日 15:27