問題研究要件事実のまとめ。

第1問 売買代金支払請求


  • 請求の趣旨

被告は、原告に対し、2000万円を支払え。

  • 訴訟物

売買契約に基づく代金支払請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)原告は、被告に対し、甲土地を代金2000万円で売った。(×)
平成18年3月3日 が必要。
(2)よって、被告は、原告に対し、売買代金2000万円を支払え。(不要)
原告は、被告に対し、上記売買契約に基づき、代金2000万円の支払を求める。 とする。
  • (理由)
代金額 必要
代金支払時期 不要
売主の目的物所有 不要
売買契約締結の動機 不要
土地の引渡し 不要
代金の不払い 不要
  • 第2 抗弁
以下空白

第2問 売買代金支払請求(消滅時効の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、2000万円を支払え。

  • 訴訟物
売買契約に基づく代金支払請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)原告は、被告に対し、平成8年3月3日、甲土地を代金2000万円で売った。(×)
(2)よって、原告は、被告に対し、上記売買契約に基づき代金2000万円の支払を求める。(不要)

  • 第2 抗弁
消滅時効
(1)平成18年3月3日は経過した。(不要)
(2)よって、上記売買契約に基づく代金支払債務は消滅した。(不要)
被告は、原告に対し、平成18年9月29日の本件口頭弁論期日において、上記時効を援用するとの意思表示をした。 とする。よって書きではない。ただし、問題文には口頭弁論期日は現れていない。

  • (理由)
1.代金債権の消滅時効の要件事実
①権利を行使する事ができる状態になったこと(166条)
②①の時から10年間が経過したこと(167条1項)
③援用権者が相手方に対し時効援用の意思表示をしたこと(145条)
ただし、①は既に請求原因に現れているので、Yは抗弁で改めて主張する必要なし。
2.時効期間の経過
初日不算入の原則(140条)
そして、143条により、平成8年3月4日から10年間を経過した、平成18年3月3日経過時に時効期間が満了となる。
3.時効援用の意思表示
判例は、不確定効果説のうち停止条件説を採る。
なお、意思表示は到達主義であるが(97条1項)、顕著性(民訴179条)を示すために、そのことを表現するのが通例。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第3問 売買代金支払請求(履行期限の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、20万円を支払え。

  • 訴訟物
売買契約に基づく代金支払請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)原告は、被告に対し、平成18年7月15日、パソコン1台を代金20万円で売った(以下「本件売買契約」という)。(○)
(2)よって、原告は、被告に対し、上記売買契約に基づき代金20万円の支払を求める。(不要)
  • 理由
売買契約における代金支払時期の合意(履行期限の合意)は、契約の本質的要素ではなく、付款である。
従って、上記合意はその存在我認められることにより利益を受ける被告が主張立証責任を負う抗弁である。

  • 第2 抗弁
履行期限
(1)上記売買契約につき、代金支払期日を平成18年10月末日とすると定めた。
(2)平成18年10月末日は未到来である。
→(1)(2)を一つとした上で、 原告と被告は、本件売買契約において、代金支払期日を平成18年10月31日とするとの合意をした。 とする。
→その上で、抗弁に対する認否は (×) である。
→「未到来である」などと主張する必要はない。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第4問 貸金返還請求


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、2000万円を支払え。

  • 訴訟物
消費貸借契約に基づく貸金返還請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)原告は、被告に対し、平成17年8月8日、返還期日を同年12月1日と定めて、2000万円を貸した。(一部○、一部×)
弁済期を…貸し付けた。 とする。
→その上で、平成17年12月1日は到来した。 という項目を付け加える。
→認否は、(2000万円の交付については○、その余は×) となる。
(2)よって、原告は、被告に対し、上記消費貸借契約に基づき、貸金2000万円の支払を求める。(不要)
(3) となる。

  • 理由
1.消費貸借契約における要件事実
①金銭の返還合意
②金銭を交付したこと
③弁済期の合意
④③の弁済期の到来
なお、①②をの両事実を表す用語として「貸し付けた」という表現を用いる。
③については以下。
2.弁済期の合意
消費貸借契約の成立を基礎づけるものであるから、弁済期の合意は要件事実である。
3.弁済期の到来
原告は弁済期の合意を主張し、これが請求原因として現れるので、請求のためには弁済期の到来の主張も必要。

  • 認否
被告は一部を認めて一部を否認しているが、ブロックダイアグラムに従えば以下の通りとなる。
あ X・Y H17.8.8
  2000万円の返還合意 (×)
い X→Y H17.8.8
  2000万円交付 (○)
う X・Y (あ)の際、弁済期をH.12.1とする合意 (×)
え H17.12.1到来 (顕)

  • 第2 抗弁
以下空白

第5問 貸金返還請求(弁済の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、100万円を支払え。

  • 訴訟物
消費貸借契約に基づく貸金返還請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)原告は、被告に対し、平成17年6月15日、弁済期を同年9月1日として100万円を貸し付けた。(○)
と定めて の方がよい。
→末尾に、(以下「本件消費貸借契約という。) を付け加える。
(2)平成17年6月15日は到来した。(不要)
(3)よって、原告は、被告に対し、上記消費貸借契約に基づき、貸金2000万円の支払を求める。(不要)
→(1)に従い、本件消費貸借契約 とする。

  • 第2 抗弁
弁済
被告は、原告に対し、平成17年9月1日、上記消費貸借契約の履行として、100万円を弁済した。
本件消費貸借契約に基づく債務の履行として100万円を支払った。 とする。
→認否は、(×) とする。

  • 理由
弁済の抗弁の要件事実
①債務の本旨に従った給付をしたこと
②給付がその債権についてされたこと
本件では、
①Yが、Xに対し、平成19年9月1日、100万円を支払ったこと
②①の支払が本件消費貸借契約に基づくXの貸金債権についてされたこと
となる。

  • 認否
抗弁に対する認否は明らかではないが、債務の履行を求めているので、当然に主張を否認していると考えられる。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第6問 土地明渡請求(所有権喪失の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。

  • 訴訟物
所有権に基づく土地明渡し請求権 1個
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権

  • 第1 請求原因
(1)原告は、甲土地を所有している。
原告は、平成17年9月9日当時、甲土地を…していた。 とする。
→その上で、認否は (○) となる。
(2)被告は、甲土地を占有している。(○)
(3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲土地の明渡しを求める。(不要)

  • 理由

1.所有権に基づく返還請求権の発生要件は、
①請求権者がその物を所有していること
②請求の相手方がその物を占有していること
であり、
③相手方がその物に対する正当な占有権限を有していること、は発生障害要件である。

2.民法188条は、
「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する」と定める。
では、原告は、被告が占有権限を有しないことを証明しなければならないか。
この点、同条の占有の権利推定は、その占有を伝来的に取得した前主に対しては効力を有しないとか、この所有者に対しては同条の権利推定を主張できない、などと説明される。
したがって、占有権限を有していることの証明責任は被告にある。

3.「所有」の要件事実
所有とは、事実ではなく法的評価である。
したがって、所有していることの要件事実として主張すべき事実は、「過去のある時点におけるXの所有権取得原因となる具体的事実」である。
しかし、原理的には所有に関する証明は無限に遡り、また、所有概念は日常に溶け込んでいることから、権利自白を認めて良いとされる。
そこで、権利自白の成立時点を特定して明示することになる。

具体的には、①について、事案に応じて権利自白の成立を前提に、
ア 原告の現所有
イ 原告のもと所有
ウ 原告の前主のもと所有及び原告の前主からの所有権取得原因事実
のいずれかを摘示することになる。
(以上、問題研究P.129参照)

4.「占有」の要件事実
占有は、評価概念ではなく事実概念である。
しかし、占有の要素である所持自体が社会観念に従って決定されるものであり(180条)、また、民法は代理占有も認めており(181条)、占有概念は相当に観念化している。
したがって、争いがない場合は、概括的抽象的事実としての「占有」について自白が成立したものとする。
ただし、争いがある場合は、「攻撃防御の対象が何であるかが分かる程度の、所持の具体的事実」を主張することが必要。

  • 第2 抗弁
抗弁なし

所有権喪失―売買
原告は、被告に対し、平成17年9月9日、甲土地を代金2000万円で売った。(×)
とする。

  • 理由
原告が、ある一時点において所有していることと、原告が、それ以降の時点において所有を喪失したことは、両立する。
したがって、原告が所有権を喪失したこと、は抗弁となる。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第7問 土地明渡請求(対抗要件の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。

  • 訴訟物
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)原告は、Aから、平成17年4月4日、売買代金1800万円で甲土地を買った。(○)
→Aを主体として、以下のように書き換える。
(1)Aは、平成17年2月2日当時、甲土地を所有していた。(○)
(2)Aは、原告に対し、平成17年4月4日、甲土地を代金1800万円で売った。(○)
(2)被告は、甲土地を占有している。(○)
→上記基づき、 (3) とする。
(3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲土地の明渡しを求める。(不要)
→上記基づき、 (4) とする。

  • 理由
1.権利自白の時期
本件においては、過去―(ア)―平成17年2月2日―(イ)―平成17年4月4日―(ウ)―現在、という時間の流れ。
そのうち、アについてはA所有で一致しているが、イの時点では原告はA所有、被告は被告所有と主張している。
よって、アにもとづき、平成17年2月2日の時点でA所有につき自白が成立する。

  • 第2 抗弁
対抗要件
被告は、原告が登記を具備するまで、原告を所有者と認めない。
(1)Aは、被告に対し、平成17年2月2日、甲土地を代金2000万円で売った。(×)
 (2)原告が対抗要件を具備するまで、原告の所有権取得を認めない。(不要)

  • 理由
対抗要件の抗弁の要件事実

Yが登記の欠缺を主張するには、正当な利益を有する第三者であることを基礎づける事実を主張する必要。
したがって、AY間の売買を主張する。

上記に加えて、登記の有無に関して主張する必要があるか。
ア 第三者抗弁説=①のみ
 例えば、地上権を主張する場合で、対抗要件の抗弁を主張するつもりがなくても、主張したことになってしまう。
イ 事実抗弁説=①に加えて、Xが対抗要件を具備していないこと
 Yに自らが関与しない消極的事実の主張立証責任を負わせるのは酷である。
ウ 権利抗弁説=①に加えて、Xが対抗要件を具備するまでは土地の所有権取得を認めないとの権利主張
 対抗要件の有無を問題とする意思があることを要件事実として取り出し、要件を具備した者に主張させることでイの問題も生じない。
 正当である。

  • 認否
Xは「AがYに対して甲土地を売ったはずはなく」と言ってるので、×である。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第8問 土地明渡請求(対抗要件具備による所有権喪失の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。

  • 訴訟物
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)Aは、平成17年2月2日、甲土地を所有していた。(○)
…2月2日当時… を加える。
(2)Aは、原告に対し、平成17年4月4日、甲土地を代金1800万円で売った。(○)
(3)被告は、甲土地を占有している。 が抜けている。
(3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲土地の明渡しを求める。(不要)
→上記に基づき、 (4) とする。

  • 第2 抗弁
→見出しとして、 対抗要件具備による所有権喪失―売買 を加える。
(1)Aは、被告に対し、平成17年2月2日、甲土地を代金2000万円で売った。(×)
(2)Aは、同年4月10日、対抗要件を具備した。
(2)Aは、被告に対し、同年4月10日、上記売買契約に基づき、甲土地につき所有権移転登記手続をした。(×)

  • 理由
1.対抗要件具備による所有権喪失の抗弁の要件事実
上記の抗弁を主張するには、
①(過去の一定時点においてAが甲土地を所有していたことを前提として、)
 AとYとが甲土地の売買契約を締結したこと
②AがYに対し、甲土地について上記売買契約に基づく所有権移転登記手続をしたこと
の主張立証が必要である。

2.「対抗要件の抗弁」と「対抗要件具備による所有権喪失の抗弁」との関係
一方だけ主張することも、両方とも主張することもできるが、Yの主張によれば後者のみの主張である。

  • 認否
XはYの売買契約を否認している以上、所有権移転登記手続をしたという事実も否認していると解される。

  • 第3 再抗弁

第9問 土地明渡請求(占有権原の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。

  • 訴訟物
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)原告は、甲土地を所有している。(○)
(2)被告は、甲土地を占有している。(○)
(3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲土地の明渡しを求める。(不要)

  • 第2 抗弁
占有権原
占有権原―賃貸借 とする。
(1)原告は、被告に対し、平成17年6月6日、甲土地を、賃料1か月20万円、期間を同日から平成20年6月5日までと定めて貸し付けた。
…20万円、賃貸期間同日から平成20年6月5日までとの約定で賃貸した。(×) とする。
(2)平成20年6月5日は未到来である。
原告は、被告に対し、平成17年6月6日、上記賃貸借契約に基づき、甲土地を引き渡した。(×) とする。

  • 理由
1.賃貸借契約の成立要件(民法601条)
目的物の特定 必要
賃料額の合意 必要
返還時期の合意 必要
敷金・使用目的の合意 不要
賃貸人の目的物所有 不要

2.基づく引渡し
仮に、Yが抗弁として主張している賃貸借契約とは全く関係のない事情で甲土地を占有しているとすれば、占有権限の抗弁として上記賃貸借契約締結の主張をすることが意味をなさない。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第10問 所有権移転登記抹消登記手続訴訟(所有権喪失の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、別紙目録記載の所有権移転登記抹消登記手続をせよ。
被告は、甲建物について別紙登記目録記載の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

  • 訴訟物
所有権に基づく所有権移転登記抹消登記手続請求権 1個
''所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権 1個''

  • 理由
登記請求権は、
①物権的登記請求権
 =現在の実体的な物権関係と登記が一致しない場合に、この不一致を除去するため
  物権的請求権の一つである。
  なお、
  ア 返還請求権
  イ 妨害排除請求権
  ウ 妨害予防請求権
  のうち、本件は、占有以外の方法による物権侵害なので、イである。
②債権的登記請求権
 =物権の移転を目的とする契約の効果としての財産権移転義務の一内容として
③物権変動的登記請求権
 =物権変動の過程・態様と登記とが一致しない場合に、その不一致を除去するため

  • 第1 請求原因
(1)原告は、平成16年7月1日、甲建物を所有していた。(○)
(2)被告は、別紙登記目録記載の所有権移転登記を有している。(○)
甲建物について、別紙登記目録記載の被告名義の所有権移転登記がある。 とする。
(3)よって、原告は、被告に対し、別紙登記目録記載の所有権移転登記の抹消登記手続を求める。(不要)
…所有権に基づき、上記登記の抹消登記手続をすることを求める。 とする。

  • 理由
登記の推定力
登記には事実上の推定力を有するに過ぎないので、Yの登記の存在を証明しても所有権が法律上推定されることはない。


  • 第2 抗弁
所有権喪失
所有権喪失―売買 とする。
被告は、Aから、甲建物を代金800万円で買った。
原告は、Aに対し、平成16年7月1日、甲建物を代金800万円で売った。(×)

  • 理由
1.AY間の売買
XA間の売買の主張が認められれば、それだけでXは甲建物の所有権を喪失する。
したがって、これに付加してAY間の売買の主張をする必要はない。

2.登記保持権原の抗弁は?
同抗弁は、原告の所有権が認められた場合に、被告が登記を保持することができる権限を有するとの主張である。
本問では、自分が所有者であるとYが主張しているので、不適当である。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第11問 所有権移転登記手続請求(取得時効)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲土地につき所有権移転登記手続をせよ。
…甲土地について、平成8年6月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。 とする。

  • 理由
時効の効果
起算日に遡るので(144条)、登記原因の日付は占有開始日になる。

  • 訴訟物
所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権
''所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権 1個''

  • 第1 請求原因
(1)原告は、甲土地を、平成8年6月1日から10年間、善意、平穏、公然、無過失で占有した。(×)
(2)原告は、口頭弁論期日において、上記取得時効を援用するとの意思表示をした。(不要)
(3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、所有権移転登記手続を求める。(不要)
→下記のように書き直す。
 (1)原告は、平成8年6月1日、甲土地を資材置場として占有していた。(△)
 (2)原告は、平成18年6月1日経過時、甲土地を資材置場として占有していた。(△)
 (3)無過失の評価根拠事実
  ''ア Aは、平成8年6月1日当時、甲土地を資材置場として占有していた。(○)''
  ''イ 原告は、平成8年6月1日、Aから甲土地を1000万円で買った。(△)''
 (4)原告は、被告に対し、平成18年○月○日送達の本件訴状により、上記時効を援用するとの意思表示をした。(不要)
 (5)甲土地について別紙登記目録記載の被告名義の所有権移転登記がある。(○)

  • 理由
1.請求原因
まず、所有権移転登記請求権発生の要件事実は、
①Xが甲土地を所有
②甲土地についてY名義の所有権移転登記が存在
である。
本問では、Yが①を争っているので、具体的な主張立証が必要。

2.短期取得時効の要件事実
162条2項の条文上は、
①所有の意思をもって
②平穏かつ公然に
③他人の物を
④10年間占有すること
⑤占有開始時に善意であり
⑥⑤について無過失であること
が必要。
しかし、①②⑤については、186条1項が主張立証を緩和。
また、同条2項が、前後の両時点で占有をした証拠があるときは、その間占有が継続したことを推定する。
そして、③については、取得時効の対象物は自己の所有物であってもよいとするのが判例であるため、主張立証の必要なし。
以上より、Xが主張立証すべきは、
 ア ある時点で占有していたこと
 イ アの時から10年間経過した時点で占有していたこと
 ウ アの時点で無過失であったこと
である。
ウについては、事実ではなく評価根拠事実である。
上記に加えて、時効の援用について判例は不確定効果説―停止条件説にたつため、
 エ XがYに対して時効援用の意思表示をしたこと
が必要。

  • 第2 抗弁
以下空白

第12問 抵当権設定登記抹消登記手続請求(登記保持権原の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、甲土地について、別紙目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。

  • 訴訟物
所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)甲土地は、Xが所有している。(○)
(1)原告は、甲建物を所有している。(○) とする。
(2)甲土地について、被告名義の抵当権設定登記がある。(○)
…、別紙登記目録記載の被告名義の抵当権設定登記がある。(○) とする。
(3)よって、原告は、被告に対し、甲土地について別紙目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続を求める。(不要)

  • 第2 抗弁
登記保持権原
(1)被告は、原告に対し、平成17年7月1日、弁済期を平成20年7月1日と定めて1000万円を貸し付けた。
(×) を加える。
(2)被告は、原告と、上記消費貸借契約に基づき甲土地について抵当権を設定するとの合意をした。
(2)原告と被告は、平成17年7月1日、原告の1の債務を担保するため、甲建物に抵当権を設定するとの合意をした。(×)
 (3)原告は、2の抵当権設定契約当時、甲建物を所有していた。(○)
 (4)請求原因2の登記は、2の抵当権設定契約に基づく。(×)

  • 理由
抵当権設定登記の保持権原の要件は、
①被担保債権の発生原因事実
②抵当権設定者が抵当権者との間で、①の債権を担保するため抵当権設定契約を締結したこと
③抵当権設定者が②当時その不動産を所有していたこと
④登記が②の契約に基づくこと
である。
つまり、抵当権は特定の債権を担保するものなので①、抵当権設定契約の締結を主張するには被担保債権との結びつきを示す必要があるので②、抵当権設定契約は物権契約なので③、抵当権設定登記と②の関連性と手続の適法性をあらわすために④、がそれぞれ必要となる。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第13問 土地明渡請求(民法上の期間満了による賃貸借終了、建物所有目的の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。

  • 訴訟物
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個
''賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての土地明渡請求権 1個''

  • 理由
1.訴訟物の選択
本件では、物権的請求権である不動産明渡請求権と債権的請求権である不動産明渡請求権が考えられる。
Xは、後者を選択している。

2.終了原因による訴訟物の異動
終了原因が複数ある場合の、訴訟物に関する考え方として、
ア 多元説=終了原因ごとに訴訟物が異なる
イ 一元説=終了原因は攻撃方法に過ぎない
があるが、賃貸借契約の終了に基づく明渡請求権は、賃貸借契約自体の効果として発生するのであり、解除・解約申し入れ等の「終了原因自体の効果」として発生するものではない。
したがって、イが妥当。

3.個数
一元説に立つと、訴訟物の個数は契約の個数によって定まる。

  • 第1 請求原因
(1)原告は、甲土地を所有している。(○)
(2)被告は、甲土地を占有している。(○)
(3)よって、原告は、被告に対し、甲土地の明渡しを求める。(不要)
→賃貸借契約終了に基づく返還請求であるので、以下の通り書き換える。
 (1)原告は、被告との間で、平成12年12月25日、甲土地を、賃料月額10万円、賃貸期間同日から平成17年12月25日までとの約定で賃貸するとの合意をした(以下「本件賃貸借契約」という。)。(○)
 (2)原告は、被告に対し、平成12年12月25日、本件賃貸借契約に基づき、甲土地を引き渡した。(○)
 (3)平成17年12月25日は経過した。(不要)

  • 理由
1.賃貸借契約の終了に基づく土地明渡請求の要件
①土地について賃貸借契約を締結したこと
②賃貸借契約に基づいて土地を引き渡したこと
③賃貸借契約が終了したこと

2.賃貸借の目的が建物の場合と土地の場合の違い
賃貸借の目的物が建物である場合、当然に借地借家法の適用を受ける。
しかし、目的物が土地である場合、当然にはその適用を受けない。

3.基づく引渡しが必要な理由
賃貸借契約は諾成契約である。
しかし、目的物の返還を請求するには、基づいて引き渡していたことが前提となる。

4.Yの占有が要件とはならない理由
賃借人は、目的物の返還義務を負っているから、たとえ占有をしていなくても返還義務を負っていることに変わりはないから。

5.賃貸借契約の終了
民法604条は、賃貸借契約の存続期間を最長20年とする。
したがって、
ア 存続期間が20年以下の場合は、契約で定めた期間の経過
イ 存続期間が20年以上の場合は、20年の経過
を主張する。

  • 第2 抗弁
占有権原―賃貸借
原告は、被告に対し、平成12年12月25日、甲土地を、賃料月額10万円、賃貸期間を同日から平成17年12月25日までと定めて貸し付けた。(○)
建物所有目的
 原告と被告とは、本件賃貸借契約において、建物の所有を目的とすることを合意した。(×)

  • 理由
建物所有を目的とする賃貸借契約が平成4年8月1日以降に締結されたものであれば借地借家法が適用され、30年以上の存続が認められる(借地借家法3条、9条)。

  • 第3 再抗弁
平成17年12月25日は経過した。(不要)
(削除する。)

  • 第4 再々抗弁
本件賃貸借契約は、建物所有目的である。(×)
(削除する。)

第14問 動産引渡し請求(即時取得、悪意の抗弁、過失の評価根拠事実の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲パソコンを引き渡せ。

  • 訴訟物
所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権 1個

  • 第1 請求原因
(1)原告は、Aから、平成17年12月25日、甲パソコンを代金20万円で買った(以下「本件売買契約」とする。)。
(1)Aは、原告に対し、…で売った。(不知) とする。
 (2)Aは、原告に対し、同日、1に基づき、甲パソコンを引き渡した。(不知)
(2)被告は、甲パソコンを占有している。
(3)…。(○) とする。
(3)よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、甲パソコンの引渡しを求める。
(4)…。(不要) とする。

  • 理由
1.請求原因
所有権に基づく動産引渡し請求権を基礎付けるために、
①X所有
②Y占有
が必要。

2.X所有
Yは、Xの所有権だけではなくYの所有権も認めていない。
したがって、Xの所有権そのものを摘示することができないだけでなく、Aからの承継取得も摘示できない。

3.即時取得
しかし、動産については即時取得制度があり、
要件は、
①AがXとの間で甲パソコンの売買契約を締結したこと(取引行為)
②Aが①に基づいて甲パソコンをXに引き渡したこと(基づく引渡し)
である。
なお、Aが占有してたことは②に含まれるので不要。
また、平穏・公然・善意は186条1項で推定される。
そして、無過失は188条によって推定される(判例)。
加えて、②は占有改定によることは認められていないが、本件では現実の引渡しなので問題なし。

  • 第2 抗弁
1 悪意
原告は、本件売買契約の際、被告が所有者であることを知っていた。
原告は、請求原因2の当時、Aが所有者であると信じていなかった。(×)
2 過失
(1)甲パソコンには被告の住所と名前を書いたシールが貼ってあった。
(2)原告は、本件売買契約の際、上記シールを確認しなかった。
過失の評価根拠事実
 ''(1) 請求原因(2)の当時、甲パソコンには被告の住所と名前が書かれたシールが貼ってあった。(×)''
 ''(2) 原告は、被告に対し、請求原因(2)に際し、甲パソコンの所有者について何の確認もしなかった。(○)''

  • 理由
1.悪意の意義
「権利者であると信じていたこと」は善意であり、「無権利者であることを知っていたこと」は悪意であることには疑いない。
しかし、「権利者であることを疑っていたこと」は、一般の善意には含まれるが、即時取得の善意には含まれない。
なぜなら、一般の善意とは「無権利者であることをしらなかったこと」であるが、即時取得の善意とは「権利者であることを信じていたこと」だからである。
したがって、やはり即時取得における悪意には、半信半疑であった場合も含むこととなり、そこでの悪意とはすなわち「権利者であることを信じていなかったこと」となる。

2.規範的要件たる「過失」の要件事実
考え方は、
①間接事実説=過失が主要事実であり、それを根拠づける事実は間接事実である。
②主要事実説=過失の評価根拠事実が主要事実である。
の二つがある。
しかし、①は、
A 過失が主要事実であるならば、過失そのものを直接立証できなければならないが、それができないのは明らか。
B また、過失はそれを根拠づける具体的事実なしには成立しない。
C そして、弁論主義のもとでも、裁判所は当事者の主張しない間接事実を認定できるため、不意打ちが起きる。
等々の理由から、②が妥当。

3.即時取得における無過失の意義
無過失とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産の権利者であると信ずるにつき過失がなかったことをいう(判例)。
この場合の過失の基準時は、Xの占有取得時である。
過失の有無は、調査確認義務の存在と、調査確認義務の懈怠にかかる。
本問では、シールが貼ってあったことが前者、確認しなかったことが後者にあたる。

  • 第3 再抗弁
以下空白

第15問 譲受債権請求(債務者対抗要件の抗弁)


  • 請求の趣旨
被告は、原告に対し、20万円を支払え。

  • 訴訟物
売買契約に基づく代金支払請求権 1個
AY間の… を加える。

  • 理由
債権が譲渡された場合、帰属主体が変更するだけで、債権の同一性が変わることはない。

  • 第1 請求原因
(1)Aは、被告に対し、平成17年10月1日、パソコン1台を代金20万円で売った。(○)
(2)Aは、原告に対し、同年11月1日、上記債権を代金15万円で売った。(不知)
…、上記売買代金債権を… とする。
(3)よって、原告は、被告に対し、(1)の売買契約に基づき、代金20万円の支払を求める。(不要)

  • 理由
譲受債権請求の請求原因は、
①譲受債権の発生原因事実
②①の債権の取得原因事実
である。

  • 第2 抗弁
債務者対抗要件
被告は、Aが、被告に対し、請求原因(1)にかかる代金債権を譲渡したことの通知をするまで、原告を債権者と認めない。(不要)
請求原因(2)の債権譲渡につき、Aが被告に通知し又は被告が承諾するまで、原告を債権者と認めない。(不要) とする。

  • 理由
債務者対抗要件をめぐる主張立証責任は、物権変動の場合と同様に考える。
したがって、権利抗弁説が妥当。
その際、通知だけでなく承諾がないことも前提とした権利主張とすべき。

  • 第3 再抗弁
以下空白
→再抗弁を主張しているので、 Aは、被告に対し、平成17年11月1日、請求原因(2)の債権譲渡を通知した。(×) とする。

―――――
以下、コピペ用

現在進行中

第 問

  • 請求の趣旨
  • 訴訟物
  • 第1 請求原因
  • 第2 抗弁
  • 第3 再抗弁

  • 第1 請求原因
  • 第2 抗弁
  • 第3 再抗弁
最終更新:2009年02月06日 23:28
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