ツンデレとアリス

アリスという名の少女と出会ってどれくらいになるだろうか。
綺麗な顔立ちに、流れるような金髪。
おそらく誰もが彼女を見たならば、「美しい」と形容するのだろう。
人形遣いでありながら、さながら自身が人形のような容姿である


ところで、正直、俺は彼女が好きじゃない
社交的な性格じゃないこともあるが、いつも仏頂面でつまらなそうな顔を見せられては気が滅入る。なんであんなにお高くとまってるのかと常々思うくらいだ。
もちろん、こんなことを本人の前で言ったらしばらく根にもつので口が裂けても言わないけれど。
ただ、彼女の人形師としての技巧は評価している。
彼女の繊細な指先から紡がれる糸の一つ一つが作り出す作品――もちろん人形だ――には目を見張るものがある


そう、指先!指先で思い出した!
「アリスさんの指って綺麗そうだよなー」
どこかでふと耳にした言葉が俺の心を掻き乱す。
なんで見ず知らずの男にそんなことがわかるってんだ?アリスのことは俺が誰よりも――
って待て
どうしてこんなことで俺は怒らなきゃいけないんだ?
どうしてアリスのことなんかで・・・
あいつとはただの腐れ縁ってだけで・・・



「あら、今日も来てたのね。」
当の本人が来てすぐに思考が吹っ飛んだ。
「待ってて。今紅茶を淹れるわ。」
平坦な声で、でもかすかに嬉しそうに彼女はキッチンへと向かう。
彼女はいつも通りなのに対して、俺だけがこんなにモヤモヤを抱えている。
そんな事実に苛々して、気がついたら口に出していた
「なあ、俺は――ずっと居るぞ。」
「あら、じゃあもう少しお湯を沸かしましょう」
伝えたいことがねじれて伝わっていることにも歯がゆさを感じる。
「たくさん――迷惑をかけるぞ」
「もう貴方からの迷惑なんて慣れっこよ」
「っ―」
「それにね」
何か言おうとして遮られる。
ふと顔を上げるとアリスは滅多に見られない微笑みで――

「貴方と一緒だと、退屈しないもの」

くすくすと可愛らしく笑う彼女をみて、俺ははじめて――

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最終更新:2009年04月17日 01:21
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