尼崎JR脱線 速度・急ブレーキ・経験… 計算できぬ複合要因 専門家指摘 『置き石』説には否定的
2005.04.27 朝刊 26頁 第2社会面 (全781字)
尼崎JR脱線事故で、快速電車の速度はカーブでは時速百八キロに達していたとみられる。制限速度の七十キロを四十キロ近く上回ったが、JR西日本は「百三十三キロを超えないと脱線しない」としてきた。複数の要因が重なり大惨事につながったとの専門家の見方もある。超過速度と脱線事故との間の因果関係は-。
『新幹線安全神話が壊れる日』などの著書がある技術評論家の桜井淳さんは、カーブに入ってから急ブレーキをかけたことが、脱線の引き金になったとの見方を示す。
「百八キロで脱線したのは、遠心力がかかるカーブで急ブレーキをかけたことにより摩擦力が大きくなり、車輪のフランジ(つば)がレールの上にせり上がる現象が起きたのではないか」
「置き石」を脱線要因とする見方には桜井さんは否定的だ。過去にマンホールのふたなどが置かれ脱線につながったことはあったが、子どものいたずらのような「置き石」で脱線した例はないからだ。直前の電車との間隔は五分ほど。線路に入り込むのは難しい。
「百八キロならそのまま走っても脱線しなかったと思う。ベテランなら徐々にスピードを落としやりすごしただろう。運転士の経験が浅かったためにこういった結果になったのではないか」と桜井さんはみる。
独立行政法人「交通安全環境研究所」(東京)の松本陽・交通システム領域長は「私たちの試算では、百二十五-三十キロが転覆する可能性がある限界速度。百八キロは脱線する速度ではないのではないか。ただ、車輪の摩擦係数などの要因が複雑に絡み、単純計算はできない。こうした要因についても検証する必要がある」と話す。
急ブレーキ原因説に対し、松本さんは「ブレーキがバランスを崩す要因になることは少ないのではないか」と否定的だ。一方、国交省の幹部は「レールの形状や車体のバランス、天候などで百三十三キロという計算値は下がる可能性もある」と指摘している。
中日新聞社