ATO
自動列車運転装置(AutomaticTrainOperation)の略称です。ATCがブレーキを制御する保安装置であるのに対し、列車の運転操作を自動化したシステムです。
ワンマンATOでは、運転士はスタートを指示するボタンを押すだけで、その後は列車の力行(りっこう=加速走行することや、定速走行、惰行(モーターの電気を切ってそれまでの勢いで走ること)、制動操作、定点停止なども自動的に行います。
新交通などの無人ATOでは、更に出発指令から、走行、停止、ドアの開閉までが自動で行われます。
東京メトロ・南北線や、8月開業のつくばエクスプレス(TX)の全列車が自動列車運転装置で自動運転をしています。
この装置は、お客さまの安全が確認された後でなければ発車できない、停車位置に円滑に停止させる、ブレーキ装置を乗務員が操作した場合には自動運転状態が解除される…などの基準(普通鉄道構造規則第161条)が設けられています。
新幹線の安全管理はもっと徹底している。集中列車制御装置(CTC)と自動列車制御装置(ATC)でコンピュータ管理されているのである。各列車は、CTCセンターからの制御信号で運行され、運転士が操作しなくても、自動的に定められた規則に則り、速度を増し、あるいは減速し、所定の駅に停止されるようになっている。制御信号により、一定時間ドアを開放し、つぎに閉じれば、列車はつぎの駅に向かう。(参考)
と、新幹線の運転扱いを「完全に勘違い」(新幹線CTCが制御するのは列車の運行に関わるポイント制御等であって、列車の加減速や停止、ドア扱いを制御などしない。)してはいるが、ATCをATOに読み替えれば、まさに新交通型無人ATOの説明になる。
ATOは、すべて自動化でなく、スタートと停止位置調整くらいはするものもある。(参考)
それは、ATOではありません。つくばエクスプレス(以下TX)の場合、ATOのスタート指示ボタン操作のみで済めばよいのです。そう設計されています。
しかし、ATOはATCの制限の下に自在な走行制御が出来るようにフェールセーフ設計とはしていません。 TXの運転区間のほとんどは明かり区間です。 つまり、気象に大きく左右されやすい環境にあります。
通常は、プログラムにのっとったオペレーションで正常運転できますが、降雨その他異常発生時には、マニュアルコントロールに頼らざるを得ない現状も予測しているわけです。また、そうした異常に対しての手段は、当然備えられていてしかるべきです。機械任せでは制御できない可能性があるときには、運転士の判断(滑走警告が発せられたときなど)で、マニュアル操作をするのです。
ちなみに、開業日の不祥事(?;(不祥事とは筆者はちっとも思いませんけれど)はこれが相当します。)は、運転士がATOによる制動に不安を感じてATOを解除の上、手動で制動をかけたところ、思わぬ滑走によってオーバーランしてしまったということです。
なお、桜井氏は「新幹線が危ない!」(健友館・1994)内、「『大阪ニュートラム大暴走』は起こるべくして起きた事故」において、大阪ニュートラムの暴走事故(1993/10/06発生)をふまえ、
コンピュータでメカニカルな部分を制御するというコンピュータシステムの信頼性の問題。もう一つは電車を制御する命令の伝達に電波誘導方式を採用したことだ。
コンピュータの信頼性は、コンピュータ単体についてみるならば相当高度な水準に達していて問題にならないが、それにブレーキをかけるとかモーターを回すなどのメカニカルな要素が加わると、信頼性は大きく落ちる。不確定要素が多すぎるのだ。(p215)
と論じていて、市民的危機管理入門で言う、
新幹線もCTCとATCとATOの組み合わせで、完全自動化を図り、運転士は、突発的事象に備えるだけの監視業務にしたらよい。それができる技術レベルにある。(参考)
との食い違いを見せている。
すべてを任せてATOの不備を叩くことが善なのか、それとも、万が一を思いATO解除をしてエラーを起こしてしまったことを叩くのが善なのか、安全危機管理をなさる桜井先生! さぁ、どっち!?