地下妄の手記

風のささやき#4

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  風のささやき #4

  「鉄道用語の不思議」にしろ、書かれていることは、専門家どころか一般にすら通用しない、常識から考えても有り得ない「用語」の「解説解釈」ですから、現される結果も、あまりにも些細で斟酌の必要をみとめられない一顧だに値しない、トリビアルな物としても更に塵芥のごとき「怪説怪釈」ばかりなのですが、今回はその「怪説怪釈」を、何んとなんでもわかる!鉄道用語大事典」と称されておられるので、明確に批判せざるを得ません。

  2015年10月16日本稿再読中に上記文庫本について標題の文字(既に修正済み)に誤りがあることが判明しましたので以下について修正することにいたしました。
  念のため申し上げます。


  次は、JRと言う言葉についての梅原氏個人の感想です。この項は「鉄道用語の不思議」と、「なんでもわかる!鉄道用語大事典」の間で相違は少ないのですが、間違いが全然改まっていない、──大幅に加筆修正しました。──「鉄道用語の不思議」以来のこの8年間は何だったんだと言うお話です。

      「鉄道用語の不思議」 50頁~53頁

       8 JR

        日本国有鉄道(国鉄)が分割・民営化(1987年)されたとき、新しい会社を何とい
       う名で呼ぶかが問題となった。北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州の各旅客鉄道
       株式会社、そして日本貨物鉄道株式会社という正式名称では言いにくいうえ、西日本旅客
       鉄道のように既存の西日本鉄道とまぎらわしい社名が現れたからだ。
        消滅間際の国鉄は、正式な社名とは別に愛称を作成し、これを一般に用いることを思い
       つく。愛称は、アルファベット3文字がよいと考えられた。判例によれば、アルファベッ
       ト3文字以上であれば商標として認められるからである。また、国鉄と同じ公社だった日
       本電信電話公社が1985(昭和60)年4月1日に日本電信電話株式会社として民営化さ
       れた際、NTT(Nippon Telegraph and Telephone corporation の略)というアルファベット
       3文字の略称を採用して広く親しまれている点も大いに参考となったという。
        ここで問題が発生した。国鉄が使用したいと考えた略称の大多数は、すでに商標として
       登録済みだったのである。公共性の高い鉄道といえど商標を侵害することは許されない。
       NTTの例とは異なり、愛称の数が7つと多かったことも一因となった。
        国鉄は考え方を変え、民営化された鉄道全体を表す愛称を考案する。これがJRだ。J
       RとはJapan Railwayの略。各社それぞれを呼ぶときには、JRに続けて地
       域名または貨物と付ける。言うまでもないことだが、JR北海道であるとかJR貨物とい
       った具合にだ。
        アルファベット2文字は、そのままでは商標としては認められない。このため、いま見
       られるJRのマークを考案し、これを商標として登録することとした。商標法第三条第四
       項は「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」
       以外なら商標登録を受け付けると定めている。JRだけでほ「ありふれた氏又は名称」だ
       が、マークとセットなら「普通に用いられる方法」ではないからだ。
        JRマークは「ジェイアアル」という称呼で1999(平成11)年12月3日に登録が完
       了した。登録番号は第3032279号だ。ちなみに、JR各社の子会社は「JR~」な
       どと命名される例が多い。この場合、正式な会社名は商標の呼称とは異なり、「ジエイア
       ール」と記される。
        当時の国鉄の発表によると、JRという言葉に深い意味はないのだという。国鉄はJN
       Rというアルファベット3文字の愛称を用いていた。Japan National R
       ailwaysの略である。民営化なのでここから単に「National」を抜き、J
       apan RailwaysとしたうえでJRという愛称を思いついたのだそうだ。20年
       前のこととはいえ、このあたりの事情は比較的有名だろう。
        JRという用語は一般に浸透したが、各社の正式名称はあまり広まらなかった。正確に
       言うと、その名自体はある程度知られているものの、正しく表記できる人が少ないのであ
       る。鉄道趣味6誌ではたいていの場合そうだが、実は本書も正しく記していない。表記す
       ることが困難だからだ。各社とも「鉄道」の「鉄」の字を金偏に「失」ではなく、金偏に
       「矢」と記す。「金を失う」ことを嫌い、「金を矢で射止める」という意味を込めているの
       だ(つまり「鉃」)。正式名称を発表した1987(昭和62年2月20日、誤字ではないか
       という記者団の質問に対し、国鉄は『難字大鑑』(山田勝美監修、「難字大鑑」編集委員会編
       集、柏書房、1976年)にこの字が掲載されていることを例に挙げ、俗字ではあるが誤
       字ではないと主張している。
        とはいうものの、「いまごろそんなことを気にしても」とか「正しい字を使うべきだ」
       などと世論は冷ややか。民営化後は各社の足並みはそろわず、現在、JR各社の会社案内
       を見ると、国鉄が定めた字を用いているのはJR東日本、JR東海、JR西日本、JR九
       州の4社に過ぎない。JR北海道、JR四国、JR貨物の3社は常用漢字である「鉄」を
       使用している。世の中がデジタル化され、パソコンの画面上などで容易に使用できない文

       字を社名に用いていると不便なのだろう。
        国土交通省鉄道局が監修した『鉄道要覧』を見ると、JR7社の正式名称はすべて金偏
       に失、つまり常用漢字の「鉄」が採用されている。また、企業情報を掲載した『帝国デー
       タバンク会社年鑑』(帝国データバンク、年刊)でも、各社の表記は当然のように「鉄」の
       字だ。結局のところ、JR各社は「金を失う」ことはなかったのかもしれないが、監督官
       庁や著名な書物からは「正式社名を表記してもらう機会を失った」のである。
        JRという用語について整理してみよう。

       JR
       1  国鉄を分割、民営化した際に誕生した新会社群の愛称。
       2 Japan Railwaysの略ではあるが、深い意味はない。
       3 商標上はジェイアアルだが、子会社はジェイアールと表記する。
       4 JRという愛称が採用された理由は、各社の正式名称が親しみにくく、まぎらわしいものも存
         在するからである。
       5 正式な社名に採用されている「鉃」を表記することは困難。国士交通省ですら用いていない。


       「なんでもわかる!鉄道用語大事典」 58頁~62頁

       8 JR

         
日本国有鉄道(国鉄)が1987(昭和62)年4月1日に分割・民営化されたとき、
       新しい会社を何という名で呼ぶかが問題となった。北海道、東日本、東海、西日本、
       四国、九州の各旅客鉄道株式会社、そして日本貨物鉄道株式会社という正式名称では
       言いにくいうえ、西日本旅客鉄道のように既存の西日本鉄道とまぎらわしい社名が現
       れたからだ。
        消滅間際の国鉄は、正式な社名とは別に愛称を作成し一般に用いることを思いつ
       く。愛称は、アルファベット3文字がよいと考えられた。判例によれば、アルファベ
       ット3文字以上であれば商標として認められるからである。また、国鉄と同じ公社だ
       った日本電信電話公社が1985(昭和60)年4月1日に日本電信電話株式会社とし
       て民営化された際、NTT(Nippon Telegraph and Telephone corporationの略)という
       アルファベット3文字の略称を採用して広く親しまれている点も大いに参考となった
       という。
        ここで問題が発生した。国鉄が使用したいと考えた略称の大多数は、すでに商標と

       して登録済みであったのだ。公共性の高い鉄道といえど商標の侵害は許されない。N
       TTの例とは異なり、必要とされる愛称の数が7つと多かったことも一因となった。
        国鉄は考え方を変え、民営化された鉄道全体を表す愛称を考案する。これがJRだ。
       JRとはJapan Railwayの略。各社それぞれを呼ぶときには、JRに続けて地域名ま
       たは貨物と付ける。(言うまでもないことだが、)JR北海道であるとかJR貨物といった具合にだ。
        アルファベット2文字は、そのままでは商標としては認められない。このため、い
       ま見られるJRのマークを考案し、こちらを商標として登録することとした。商標法
       第三条第四項は「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみ
       からなる商標」以外なら商標登録を受け付けると定めている。JRだけでは「ありふ
       れた氏又は名称」だが、マークとセットなら「普通に用いられる方法」ではないから
       だ。
        JRマークは「ジェイアアル」という称呼で1999(平成11)年12月3日に登録
       が完了した。登録番号(は)第3032279号だ。ちなみに、JR各社の子会社は「J
       R~」などと命名される例が多い。この場合、正式な会社名は商標の呼称とは異なり、
       「ジェイアール」と記される。
        当時の国鉄の発表によると、JRという言葉に探い意味はないのだという。国鉄は

       JNRというアルファベット3文字の愛称を用いていた。Japan National Railwaysの
       略である。民営化なのでここから単に「National」を抜き、Japan Railwaysとしたうえ
       でJRという愛称を思いついたのだそうだ。30年ほど前のこととはいえ、このあたり
       の事情は比較的よく知られているかもしれない。
        JRという用語は一般に浸透したが、各社の正式名称はあまり広まらなかった。正
       確に言うと、その名自体はある程度知られているものの、正しく表記できる人が少な
       いのである。鉄道趣味6誌ではたいていの場合そうだが、実は本書も正しく記してい
       ない。表記(することが)困難だからだ。各社とも「鉄道」の「鉄」の字を金偏に「失」ではなく、
       金偏に「矢」と記す。「金を失う」ことを嫌い、「金を矢で射止める」という意味を込
       めているのだ(つまり「鉃」)。正式名称を発表した1987年2月20日、誤字ではないかという記者
       団の質問に対し、国鉄は『難字大鑑』(山田勝美監修、「難字大鑑」編集委員会編集、
       柏書房、1976年)にこの字が掲載されていることを例に挙げ、俗字ではあるが誤
       字ではないと主張している。
        とはいうものの、「いまごろそんなことを気にしても」とか「正しい字を使うべき
       だ」などと世論は冷ややか。民営化後は各社の足並みはそろわず、現在、JR各社の
       会社要覧や経営計画といった書類を見ると、国鉄が定めた字を用いているのは(JR東日本、)JR東

       海、JR西日本(、JR九州)両社だけ。JR北海道、JR東日本、JR四国、JR貨物の社は
       常用漢字である「鉄」を使用しており、JR九州に至っては中期経営計画を記した
       「つくる2016JR九州グループ中期経営計画」というタイトルからもわかるとお
       り、九州旅客鉄道という社名自体を用いていない。
世の中がデジタル化され、パソコ
       ンの画面上などで容易に使用できない文字を社名に用いていると不便なのであろう。
       国土交通省鉄道局が監修した『鉄道要覧』を見ると、JR7社の正式名称はすべて
       金偏に失、つまり常用漢字の「鉄」が採用されている。また、企業情報を掲載した
       『帝国データバンク会社年鑑』(帝国データバンク、年刊)でも、各社の表記は当然の
       ように「鉄」の字だ。結局のところ、JR各社は「金を失う」ことはなかったのかも
       しれないが、監督官庁や著名な書物からは「正式社名を表記してもらう機会を失っ
       た」のである。
        (JRという用語について整理してみよう。)


       JR
       1 国鉄を分割・民営化した際に誕生した新会社群の愛称。
       2 Japan Railway(s)の略ではあるが、深い意味はない。
       3 商標上はジェイアアルだが、子会社はジェイアールと表記する。
       4 JRという愛称が採用された理由は、各社の正式名称が親しみにくく、まぎらわしい
         ものも存在するからである。
       5 正式な社名に採用されている「鉃」を表記することは困難。国土交通省ですら用いて
         いない。

  相変わらず日本語がおかしい。

        西日本旅客鉄道のように既存の西日本鉄道とまぎらわしい社名が現れたからだ。

 国鉄、JRが自らがなしたことで、他動的な「…現れた…」って何だろうか。まあ、これは小ネタですが。

  問題は次からです。

         …愛称は、アルファベット3文字がよいと考えられた。判例によれば、アルファベ
        ット3文字以上であれば商標として認められるからである。

 「アルファベット3文字以上で」あっても

         商標として認められる

 とは限りません、認められない根拠は、

         判例

 ではなく商標法に拠ります。また、「判例」とされていますが、正しくは特許庁が商標登録の申請を受けたときになす「審決」です。


         …愛称は、アルファベット3文字がよいと考えられた。判例によれば、アルファベ
        ット3文字以上であれば商標として認められるからである。


  しかもこれは、後の文章と整合していません、

         アルファベット2文字は、そのままでは商標としては認められない。このため、い
       ま見られるJRのマークを考案し、こちらを商標として登録することとした。商標法
       第三条第四項は「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみ
       からなる商標」以外なら商標登録を受け付けると定めている。JRだけでは「ありふ
       れた氏又は名称」だが、マークとセットなら「普通に用いられる方法」ではないから
       だ。

 これができるなら、各社の3文字呼称も「普通に用いられる方法」にできる筈なのですから。
  もちろん、まず、

                                                      …商標法
       第三条第四項は「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみ
       からなる商標」以外なら商標登録を受け付けると定めている。

 これがまちがい。
  商標法第三条には第四項はありません。

    第二章 商標登録及び商標登録出願

    (商標登録の要件)
    第三条  自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
           その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
           その商品又は役務について慣用されている商標
           その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号に
             おいて同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、
             提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方
             法で表示する標章のみからなる商標
          四  ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
          五  極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
          六  前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

        前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務である
          ことを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

 ご覧のとおり、「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、

   第三条1項四号

 の要件です。そして、

         アルファベット2文字は、そのままでは商標としては認められない。

 は、第三条1項四号への抵触ではなく、アルファベット2文字に適用されるのは、商標法第三条1項五号「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」への抵触です。この様な体たらくを見ると、以上の段落の間にあるこれなど


         ここで問題が発生した。国鉄が使用したいと考えた略称の大多数は、すでに商標と
       して登録済みであったのだ。公共性の高い鉄道といえど商標の侵害は許されない。N
       TTの例とは異なり、必要とされる愛称の数が7つと多かったことも一因となった。

  本当にそのような事実があったのかと、疑わしくなります。なぜなら、

        JRマークは「ジェイアアル」という称呼で1999(平成11)年12月3日に登録
       が完了した。登録番号(は)第3032279号だ。ちなみに、JR各社の子会社は「J
       R~」などと命名される例が多い。この場合、正式な会社名は商標の呼称とは異なり、
       「ジェイアール」と記される。

 と書かれているのですが、商標の登記登録情報を見れば、「JR」の商標登録は、最初の分は各社より平成4年に出されてお り、梅原氏の言う「登録3032279」号はJR東日本の登録商標として、平成4(1992)年9月4日に出願され。平成7(1995)年3月31日登録となっています。
  登録があれば、出願がその前にあるはずです、梅原氏何ゆえ出願日とそして最初の登録日をネグられたのか。
 国鉄が分割民営化されたのが

         日本国有鉄道(国鉄)が1987(昭和62)年4月1日に分割・民営化されたとき、
       新しい会社を何という名で呼ぶかが問題となった。

 この時点で、JR呼称は使われていたかと思います。JR発足当時現在のようなラッピングシールが発達していなかったため、ステンシルにエアブラシを掛けたような、ほぼ手書きのJRマークが、通勤車両などにあったのを記憶しています。まずもって、商標と言うものに意識があるにも拘わらず商標登録出願がJR発足から5年の後、登録までには8年越しです。梅原氏流では12年掛かりです。


         消滅間際の国鉄は、正式な社名とは別に愛称を作成し一般に用いることを思いつ
       く。愛称は、アルファベット3文字がよいと考えられた。判例によれば、アルファベ
       ット3文字以上であれば商標として認められるからである。また、国鉄と同じ公社だ
       った日本電信電話公社が1985(昭和60)年4月1日に日本電信電話株式会社とし
       て民営化された際、NTT(Nippon Telegraph and Telephone corporationの略)という
       アルファベット3文字の略称を採用して広く親しまれている点も大いに参考となった
       という。
        ここで問題が発生した。国鉄が使用したいと考えた略称の大多数は、すでに商標と

       して登録済みであったのだ。公共性の高い鉄道といえど商標の侵害は許されない。

 この時点で、すなわちJR発足前の国鉄時代に
──梅原氏によれば──既に「商標」について、これだけ意識していながら、出願が発足から5年後と言う点から見ると梅原氏の書かれるようなことが事実だったのか、疑念を呈さざるを得ません。

        JRマークは「ジェイアアル」という称呼で1999(平成11)年12月3日に登録
       が完了した。登録番号(は)第3032279号だ。

 梅原氏の言う、

        1999(平成11)年12月3日に登録が完了した。

 は登記登録情報によれば、平成11(1999)年12月3日の登録は他の役務に対する防護のためにJR東日本によって登録されたもので、登録番号は最初の登録番号「登録3032279」号の分割番号と言うか付番号で「登録3032279(01)」であり、完了したはずの登録は、なおも防護登録として平成 16(2004)年11月19日「登録3032279(02)」が、平成20(2008)年4月25日「登録3032279(03)」の登録がそれぞれなされ ています。
  梅原氏が「JR」を説明するために商標登録を持ち出され、これほど精緻に誤りを書かれていることを見るに、

    やはり、梅原氏は無能な働き者なのだと

    梅原氏はトリビアの種本を誤読、誤認、誤解した上で、裏付け取りを一切なさらないのだろう

 と言う確信を抱かざるを得ません。
  あるいは、有能な怠け者を気取って、データマンが上げて来た原稿をそのまま書いているのか。一つの項題の中で、相矛盾することから見てひょっとするととも思います。雑誌の特集など、ノンフィクションでよく行われる、データマンからアンカーへと言うものですが、アンカーが「無能な働き者」だとそんな文章ができるのかもしれません。
  さて、

          JRという用語は一般に浸透したが、各社の正式名称はあまり広まらなかった。正
        確に言うと、その名自体はある程度知られているものの、正しく表記できる人が少な
        いのである。鉄道趣味6誌ではたいていの場合そうだが、実は本書も正しく記してい
        ない。表記(することが)困難だからだ。各社とも「鉄道」の「鉄」の字を金偏に「失」ではなく、
        金偏に「矢」と記す。「金を失う」ことを嫌い、「金を矢で射止める」という意味を込
        めているのだ(つまり「鉃」)

 要するところは、──東日本旅客「鉃」道株式会社──の様に、「旅客道」、「貨物道」が各社の正式名称と仰りたいようなのだが。確かにこれらの表記が一番顕著に表れるのが、事業所の会社銘板などですが、その様に各社記されています。
  しかしながら、発足当時から、現在に至る「JR」グループには、東日本、東海、西日本、三島会社、貨物以外に
基幹となる組織があります。
  これらについても、JRマークが「ジェイアアル」と言う称呼で商標登録されています。しかし、これらは「JR」略称が使われていません。また、梅原氏の言う正式名称

          ……。表記(することが)困難だからだ。各社とも「鉄道」の「鉄」の字を金偏に「失」ではなく、
         金偏に「矢」と記す。「金を失う」ことを嫌い、「金を矢で射止める」という意味を込
         めているのだ(つまり「鉃」)

 なるものとは異なった扱いになっていますが、どう言うことなのでしょうか。その組織とは、

  公益財団法人鉄道総合技術研究所
  鉄道情報システム株式会社
  ソフトバンクテレコム株式会社
 
 です。
  新幹線などに係わる記事の多い梅原氏、少なくとも、国分寺市は光町平兵衛新田は旧「鉄道技研」、梅原氏が色々と歪曲した元資料でお世話になった、「公益財団法人鉄道総合技術研究所」をお忘れとは。それは聞こえぬ話ではないでしょうか。
  たとえ素人でも、光町の秋の恒例行事「平兵衛まつり」「鉄道技研」のオープンハウスの日に「公益財団法人鉄道総合技術研究所」を訪れたとき会社銘板を見れば「」ではなく、違和感なく「」であることを発見しますし、ましてや自称にしろ「鉄道ジャーナリスト」様がお気付きにならないなんて不思議ですし、一筋東のバス通り沿いに「道情報システム株式会社」の会社銘板も渉猟できますのに。
  これらの事業体の「JR」商標は、

   公益財団法人(旧財団法人)鉄道総合技術研究所「登録3077399」(平成4年9月16日出願、平成7年9月29日登録)
   鉄道情報システム株式会社「登録3014874」(平成4年9月25日出願、平成6年12月22日登録)
   ソフトバンクテレコム株式会社「登録3126644」(平成4年4月30日出願、平成8年3月29日登録、旧日本テレコムを継承鉄道電話のシステム所管)

 となっています。

        JRマークは「ジェイアアル」という称呼で1999(平成11)年12月3日に登録
       が完了した。
 
 これは最早、意味不明と申し上げるしかないかと存じます。まあ、「商標法」持ち出した時点で「JR」を語るのは無謀でしたし、

        JRという用語は一般に浸透したが、各社の正式名称はあまり広まらなかった。正
       確に言うと、その名自体はある程度知られているものの、正しく表記できる人が少な
       いのである。鉄道趣味6誌ではたいていの場合そうだが、実は本書も正しく記してい
       ない。表記(することが)困難だからだ。

 こんな話に繋げる意味、「JR」となぜ「道」、が繋げられるのか、実はここには「JR」を説明する意味がトリビアルなものだとしても、何一つありません。


       国土交通省鉄道局が監修した『鉄道要覧』を見ると、JR7社の正式名称はすべて
       金偏に失、つまり常用漢字の「鉄」が採用されている。また、企業情報を掲載した
       『帝国データバンク会社年鑑』(帝国データバンク、年刊)でも、各社の表記は当然の
       ように「鉄」の字だ。結局のところ、JR各社は「金を失う」ことはなかったのかも
       しれないが、監督官庁や著名な書物からは「正式社名を表記してもらう機会を失っ
       た」のである。

  梅原氏は正式な社名、「正式名称」と仰っておられますがJR各社法人登記では、「」の字になっています。法人登記には常用漢字以外も使えるのにもかかわらず、
JR各社と公益法人は法人名を「」で登記されていないのです。
  つまり、『国交省』も『帝国データバンク』も、登記簿上の法人名を『鉄道要覧』や『帝国データバンク会社年鑑』には使用しているわけです。

       ……………、監督官庁や著名な書物からは「正式社名を表記してもらう機会を失っ
       た」のである。


 は、梅原氏の御門違いと言うことです。
 まあ、こうお書きになった時点で、

       国土交通省鉄道局が監修した『鉄道要覧』を見ると、JR7社の正式名称はすべて
       金偏に失、つまり常用漢字の「鉄」が採用されている。

如何にもな、まともな日本語がお書きになれない梅原氏らしくはありますが。


  従って、以下のおまとめも、2項の〝Japan Railway(s)〟のsが本文には変わりがないのに、まとめでなぜ抜けたのかと言うささやかな疑問はありますが、これは措くとしても、3項と5項については妥当なものとは言えますまい。

       JR
       1 国鉄を分割・民営化した際に誕生した新会社群の愛称。
       2 Japan Railway(s)の略ではあるが、深い意味はない。
       3 商標上はジェイアアルだが、子会社はジェイアールと表記する。
       4 JRという愛称が採用された理由は、各社の正式名称が親しみにくく、まぎらわしい
         ものも存在するからである。
       5 正式な社名に採用されている「鉃」を表記することは困難。国土交通省ですら用いて
         いない。

  商標登録は、元来は、「トレードマーク」すなわち商標について登録することで法律的に保護すると言う主旨のものでした。商標法が文字商標の登録に特に多くの判断を掲げているのもこのことによります。

      

  すなわち、このマーク(商標)が登録されるわけですが、これを何と呼んだらよいのか、登録するためには書かねばなりません。それが、「ジェイアアル」や「ジェイアール」です。「JR」商標の登録情報には「ジェイアアル」も「ジェイアール」もそれぞれ「称呼(参考情報)」とあります。これは何かと言うと、上記「JR」マークをどう呼べばいいか、その呼び方の説明だから「称呼」なのです。

       3 商標上はジェイアアルだが、子会社はジェイアールと表記する。

ではありません。「商標上は」あくまでもこのマークですし、商標として「表記」といえば、
      
 このマークそのものを挙げることが「表記」です、そしてこのマークをどう言葉にして特定したらよいのかと言うことでの、「称呼(参考情報)」が「ジェイアアル」や「ジェイアール」なのです。
  
       5 正式な社名に採用されている「鉃」を表記することは困難。国土交通省ですら用いて
         いない。

 は上記の通りで、言わずもがなな、御見当外れと申し上げるにとどめておきます。



  続いては、国鉄と言う言葉についての、以下は梅原氏個人の感想です。

       「鉄道用語の不思議」 54頁~59頁

       9 国鉄

        1987(昭和62)年4月1日午前0時、国鉄は事業をJR各社に引き継ぎ、この瞬間
       に消滅した。国鉄の杉浦喬也総裁は、新生JRに向けて次のようなメッセージを託し、国
       鉄との別れを惜しんだ。
        「国鉄は1世紀にわたる栄光の歴史を閉じた。これは同時に21世紀に向けての新しい時代
       の幕開けだ。ここに、国民の期待と信頼にこたえ得る鉄道を目指し、鉄道事業を将来にわ
       たり発展させていただくべく、世界に誇るダイヤと、それを支えてきた国鉄マンの英知と
       技術と勇気とを新鉄道会社に引き継ぐ……」(東海旅客鉄道株式会社新幹線鉄道事業本部、
       『新幹線の30年』、1995年2月、357~358ページ)
        杉浦総裁の言葉から判断すると、国鉄は100年以上もの間存在していたらしい。先に
       挙げた『新幹線の30年』 の356ページには 「国鉄115年の歴史にピリオドを打つ」と
       あった。1987年から見て、115年前とは1872(明治5)年のことだ。どうやら、
       国鉄は明治5年5月7日(旧暦、新暦では6月12日) の品川-横浜間の仮営業開始と同時に
       誕生したようだ。

        さて、「国鉄」という用語は正式のものではなく、略語である。『広辞苑 第5版』によ
       れば、「日本国有鉄道の略称」だという。では、日本国有鉄道とは何の意味かといえば、
       同じく『広辞苑』によると「国の特別会計をもって鉄道事業およびその付帯事業を経営す
       る公共企業体。1949年、独立採算の企業的立場で従来の鉄道省・運輸省などによる政
       府直営事業を引き継ぐ。87年4月に民営化、その事業は7株式会社(略称JR)に分割し
       て継承される。国鉄」とある。
        補足しよう。日本国有鉄道は1948(昭和23年2月20日に公布された日本国有鉄道
       法(1987年4月1日廃止)に基づき、翌1949(昭和24年6月1日に発足した。か
       つて三公社と呼ばれる国の公共企業体があり、そのうちの一つが日本国有鉄道だったのだ。
       残る二つの公社は日本電信電話公社(現在の日本電信電話株式会社)と日本専売公社(現在
       の日本たばこ産業株式会社) である。
        1949年6月1日から1987年3月31日まで存在した日本国有鉄道の歴史は37年10
       ヵ月。切り上げても38年だ。115年と38年とを比べると、77年もの開きが生じてしまっ
       ている。杉浦総裁やその言葉を伝えたJR東海は、年数の計算を間違えてしまったのだろ
       うか。
        筆者は長い間、日本国有鉄道法に基づいて発足した国鉄よりも前に存在した鉄道、つま

       り、政府直営の鉄道事業を何と呼んでいたのか疑問に感じていた。現在の「JR」、日本
       国有鉄道時代の「国鉄」に相当する呼び名があったはずで、明治や大正、戦前の人たちは
       一体どのような用語を使用していたのかという点だ。
        鉄道趣味6誌を眺めてもよくわからない。日本史の教科書などで比較的よく目にする用
       語は「官設鉄道」だ。しかし、この用語は明治政府が敷設した鉄道だけに当てはまる。
        ご存じのとおり、後の国鉄線、現在のJR線の多くは民間の鉄道会社によって建設され
       た。日本鉄道による東北線、山陽鉄道による山陽線などだ。これらは1906(明治39)
       年3月31日に公布・施行された鉄道国有法(1987年4月1日廃止)によって買収されて
       政府直営の鉄道路線となった。したがって、国有化によって誕生した組織を官設鉄道と呼
       ぶのは誤りだ。
        さすがに鉄道趣味6誌はこの点ははっきり区別しているが、他の分野の書物を見ると案
       外間違いが多い。誌名は失念してしまったが、大正時代に撮影された山手線の電車の写真
       の説明文に「官設鉄道」とあって驚いた覚えがある。山手線を敷設したのも日本鉄道だか
       らだ。
        鉄道に詳しい諸先輩方ならこう言うだろう。「省線」だと。「省線」とは鉄道省の路線と
       いう意味である。「国鉄線」や「JR線」という用法に相当する言葉で鉄道事業全体を示

       してはいない。
        それならば、「省線」から「線」を除いた「省」と呼んでいた可能性も考えられる。だ
       が、省はほかにも設けられていた。それに政府直営の鉄道事業を行う組織名は目まぐるし
       く変わっており、鉄道省が存在したのは1920(大正9)年5月15日から1943(昭
       和18)年10月31日までの23年5カ月間だけ。それより前には鉄道掛、鉄道寮、鉄道局、鉄
       道庁、鉄道作業局、帝国鉄道庁、内閣鉄道院、それより後には運輸通信省、運輸省が鉄道
       事業を行っていた。そのたびに「掛」「寮」「局」「庁」「院」と呼び換えていたのかもしれ
       ないが、手間がかかる。世間の動きに疎いと、的外れな呼び方をしてしまいそうだ。
        日本国有鉄道より前に政府直営の鉄道が何と呼ばれていたのかを、比戟的容易に知る方
       法がある。国会議事録を参照することだ。現行の憲法に基づいて第1回国会が行われたの
       は1947(昭和22牢6月23日のこと。つまり、日本国有鉄道発足の2年前である。こ
       の日から1948年5月31日までの間、国会で使用されていた用語を調べれば、非常に信
       頼性の高い答えが得られるはずだ。
        調べた結果、やはり「国鉄」と呼ばれていたことが判明した。この用語も略語だが、当
       然ながら日本国有鉄道という組織の略称ではない。国が所有する鉄道、国有鉄道を縮めた
       ものだ。

        1947年6月23日から1948年5月31日までの間、国会で「国鉄」という用語
       (「国鐵」「國鉄」「國鐵」を含む)が登場した回数は549回。最も古いのは、1947年7
       月7日に開催された衆議院運輸及び交通委員会で、説明を行った伊能繁次郎運輸事務官の
       発言中に現れる。
        いっぽう、「国有鉄道」という言葉(「国有鐵道」「國有鉄道」「國有鐵道」を含む)が登場
       した回数は511回だ。正式な言い方よりも略語のほうが登場回数が多い。発言しやすか
       ったのだろう。
        当時、国有鉄道である国鉄についてどのような議論が国会で交わされていたかというと、
       莫大な赤字の解消策だ。国有鉄道は明治以来、1944(昭和19)年度まで黒字経営を続
       けていた。ところが、戦後になって多額の復興費用が必要となり、さらに燃料費など、諸
       経費の高騰によって赤字に転落。1948年度だけで何と330億円(現在の貨幣価値に
       換算して約3175億1587万円)もの赤字を計上してしまう。こうした状態を打開する
       ために独立採算制の公社とする日本国有鉄道法の成立が急がれたのである。
        新しい公社の名は、それこそJRとしてもよかったはずだ。だが現代とは異なり、物資
       不足が深刻で情報伝達網も未整備となると、あまりに突拍子もない名称では混乱を招く。
       従来どおりの「国鉄」をそのまま使用することを前提に、日本国有鉄道と命名したという

       のが真相ではないだろうか。
       それではまとめてみよう。

       国鉄
       1 現在のJRの前身。
       2 
日本国有鉄道という公社の略称。
       3 
国有鉄道の略語。
       4 日本国有鉄道の発足前も用いられていた。



        「なんでもわかる!鉄道用語大事典」 62頁~68頁

       9 国鉄

        1987(昭和62)年4月1日午前0時、国鉄は事業をJR各社に引き継ぎ、この
       瞬間に消滅した。国鉄の杉浦喬也総裁は、新生JRに向けて次のようなメッセージを
       託し、国鉄との別れを惜しんだ。

        「国鉄は1世紀にわたる栄光の歴史を閉じた。これは同時に21世紀に向けての新しい
       時代の幕開けだ。ここに、国民の期待と信頼にこたえ得る鉄道を目指し、鉄道事業を
       将来にわたり発展させていただくべく、世界に誇るダイヤと、それを支えてきた国鉄
       マンの英知と技術と勇気とを新鉄道会社に引き継ぐ……」(東海旅客鉄道株式会社新
       幹線鉄道事業本部、『新幹線の30年』、1995年2月、357~358ページ)
        杉浦総裁の言葉から判断すると、国鉄は100年以上もの間存在していたらしい。
        先に挙げた『新幹線の30年』の356ページには「国鉄115年の歴史にピリオドを
       打つ」とあった。1987年から見て、115年前とは1872(明治5)年のこと
       だ。どうやら、国鉄は明治5年5月7日(旧暦、新暦では6月12日)の品川-横浜間
       の仮営業開始と同時に誕生したようだ。
        さて、「国鉄」という用語は正式のものではなく、略語である。『広辞苑 第版』
       によれば、「日本国有鉄道の略称」だという。では、日本国有鉄道とは何の意味かと
       いえば、同じく『広辞苑』によると「国の特別会計をもって鉄道事業およびその付帯
       事業を経営する公共企業体。1949年、独立採算の企業的立場で従来の鉄道省・運
       輸省などによる政府直営事業を引き継ぐ。87年4月に民営化、その事業は7株式会社
       (略称JR)に分割して継承される。国鉄」とある。

        補足しよう。日本国有鉄道は1948(昭和23)年2月20日に公布された日本国有
       鉄道法(1987年4月1日廃止)に基づき、翌1949(昭和24)年6月1日に発
       足した。かつて三公社と呼ばれる国の公共企業体があり、そのうちの一つが日本国有
       鉄道だったのだ。残る二つの公社は日本電信電話公社(現在の日本電信電話株式会
       社)、日本専売公社(現在の日本たばこ産業株式会社)である。
        1949年6月1日から1987年3月31日まで存在した日本国有鉄道の歴史は37
       年10カ月。切り上げても38年だ。115年と38年とを比べると、77年もの開きが生じ
       てしまっている。杉浦稔裁やその言葉を伝えたJR東海は、年数の計算を間違えてし
       まったのだろうか。
        筆者は長い間、日本国有鉄道法に基づいて発足した国鉄よりも前に存在した鉄道、
       つまり、政府直営の鉄道事業を何と呼んでいたのか疑問に感じていた。現在の「J
       R」、日本国有鉄道時代の「国鉄」に相当する呼び名があったはずで、明治や大正、
       戦前の人たちは一体どのような用語を使用していたのかという点だ。
        鉄道趣味6誌を眺めてもよくわからない。日本史の教科書などで比較的よく目にす
       る用語は「官設鉄道」だ。しかし、この用語は明治政府が敷設した鉄道だけに当ては
       まる。

        (ご存じのとおり、)後の国鉄線、現在のJR線の多くは民間の鉄道会社によって建設された。日本鉄道
       による東北線、山陽鉄道による山陽線などだ。これらは1906(明治39年3月31
       日に公布・施行された鉄道国有法(1987年4月1日廃止)によって買収されて政
       府直営の鉄道路線となった。したがって、国有化によって誕生した組織を官設鉄道と
       呼ぶのは誤りだ。
        さすがに鉄道趣味6誌はこの点ははっきり区別しているが、他の分野の書物を見る
       と案外間違いが多い。誌名は失念してしまったが、大正時代に撮影された山手線の電
       車の写真の説明文に「官設鉄道」とあって驚いた覚えがある。山手線を敷設したのも
       日本鉄道だからだ。
        鉄道に詳しい諸先輩方ならこう言うだろう。「省線」だと。「省線」とは鉄道省の路
       線という意味である。「国鉄線」や「JR線」という用法に相当する言葉で鉄道事業
       全体を示してはいない。
        それならば、「省線」から「線」を除いた「省」と呼んでいた可能性も考えられる。
       だが、省はほかにも設けられていた。それに政府直営の鉄道事業を行う組織名は目ま
       ぐるしく変わっており、鉄道省が存在したのは1920(大正9)年5月15日から
       1943(昭和18年10月31日までの23年5カ月間だけ。それより前には鉄道掛、鉄

       道寮、鉄道局、鉄道庁、鉄道作業局、帝国鉄道庁、内閣鉄道院、それより後には運輸
       通信省、運輸省が鉄道事業を行っていた。そのたびに「掛」「寮」「局」「庁」「院」と
       呼び換えていたのかもしれないが、手間がかかる。世間の動きに疎いと、的外れな呼
       び方をしてしまいそうだ。
        日本国有鉄道より前に政府直営の鉄道が何と呼ばれていたのかを、比較的容易に知
       る方法がある。国会議事録を参照することだ。現行の憲法に基づいて第1回国会が行
       われたのは1947(昭和22年6月23日のこと。つまり、日本国有鉄道発足の2年
       前である。この日から194年5月31日までの間、国会で使用されていた用語を調
       べれば、非常に信頼性の高い答えが得られるはずだ。
        調べた結果、やはり「国鉄」と呼ばれていたことが判明した。この用語も略語だが、
       当然ながら日本国有鉄道という組織の略称ではない。国が所有する鉄道、国有鉄道を
       縮めたものだ。
        1947年6月23日から194年5月31日までの間、国会で「国鉄」という用語
       (「国鐵」「國鉄」「國鐵」を含む)が登場した回数は549回。最も古いのは、1947
       年7月7日に開催された衆議院運輸及び交通委員会で、説明を行った伊能繁次郎運輸
       事務官の発言中に現れる。

        いっぼう、「国有鉄道」という言葉(「国有鐵道」「國有鉄道」「國有鐵道」を含む)
       が登場した回数は511回だ。正式な言い方よりも略語のほうが登場回数が多い。発
       言しやすかったのだろう。
        当時、国有鉄道である国鉄についてどのような議論が国会で交わされていたかとい
       うと、莫大な赤字の解消策だ。国有鉄道は明治以来、1944(昭和19)年度まで黒
       字経営を続けていた。ところが、戦後になって多額の復興費用が必要となり、さらに
       燃料費など、諸経費の高騰によって赤字に転落。1948年度だけで何と217億円
       (現在の貨幣価値に換算して約1636億円)もの営業損失を計上してしまう。こう
       した状態を打開するために独立採算制の公社とする日本国有鉄道法の成立が急がれた
       のである。
        新しい公社の名は、それこそJRとしてもよかったはずだ。だが現代とは異なり、
       物資不足が深刻で情報伝達網も未整備となると、あまりに突拍子もない名称では混乱
       を招く。従来どおりの 「国鉄」をそのまま使用することを前提に、日本国有鉄道と命
       名したというのが真相ではないだろうか。
        (それではまとめてみよう。)

       国鉄
       1 現在のJRの前身。
       2 日本国有鉄道という公社の略称。
       3 国有鉄道の略語。
       4 日本国有鉄道の発足前も用いられていた。


  これについても、「風のささやき #2」で概ねの批判はしてありますので、ここでは「鉄道用語の不思議」と「なんでもわかる!鉄道用語大事典」の該当項の相違を対比したいと思います。

               鉄道用語の不思議: ご存じのとおり、後の国鉄線、現在のJR線の多くは民間の鉄道会社によって建設され
                           た。


      なんでもわかる!鉄道用語大事典: 後の国鉄線、現在のJR線の多くは民間の鉄道会社によって建設された。


                鉄道用語の不思議: ……………………………………………つまり、日本国有鉄道発足の2年前である。こ
                            の日から1948年5月31日までの間、国会で使用されていた用語を調べれば、非常に信
                            頼性の高い答えが得られるはずだ。


       なんでもわかる!鉄道用語大事典: ……………………………………………つまり、日本国有鉄道発足の2年
                            前である。この日から194年5月31日までの間、国会で使用されていた用語を調
                            べれば、非常に信頼性の高い答えが得られるはずだ。


                鉄道用語の不思議: 1947年6月23日から1948年5月31日までの間、国会で「国鉄」という用語
                            (「国鐵」「國鉄」「國鐵」を含む)が登場した回数は549回。


       なんでもわかる!鉄道用語大事典: 1947年6月23日から194年5月31日までの間、国会で「国鉄」という用語
                            (「国鐵」「國鉄」「國鐵」を含む)が登場した回数は549回。

 
                鉄道用語の不思議: ……………………………………1948年度だけで何と330億円(現在の貨幣価値に
                            換算して約3175億1587万円)もの赤字を計上してしまう。

       なんでもわかる!鉄道用語大事典: ……………………………………1948年度だけで何と217億円
                            (現在の貨幣価値に換算して約1636億円)もの営業損失を計上してしまう。

  いやまあ、これらを見ただけで、梅原氏の示されるものが、どれほどに信頼性に欫けるものかが見て取れると思います。

  さて、念のため、梅原氏が本項において、

        筆者は長い間、日本国有鉄道法に基づいて発足した国鉄よりも前に存在した鉄道、
       つまり、政府直営の鉄道事業を何と呼んでいたのか疑問に感じていた。

 と仰られて、

 
        鉄道趣味6誌を眺めてもよくわからない。日本史の教科書などで比較的よく目にす
       る用語は「官設鉄道」だ。しかし、この用語は明治政府が敷設した鉄道だけに当ては
       まる。

 であるとか、

                                      ………それより前には鉄道掛、鉄

       道寮、鉄道局、鉄道庁、鉄道作業局、帝国鉄道庁、内閣鉄道院、それより後には運輸
       通信省、運輸省が鉄道事業を行っていた。

などとかに挙げておられるのだが、何か頑なに取り上げられない言葉があります。

       日本史の教科書などで比較的よく目にする用語は「官設鉄道」だ。
       しかし、この用語は明治政府が敷設した鉄道だけに当てはまる。

 よりは教科書に載っていると思われる言葉で、「官設鉄道」この微妙に「無能な働き者」染みた厳密性に拘らなくて済む言葉、


  「官営鉄道」

 何の不都合があって、お隠しあそばされているものか。お使いにならない理由を承りたいものです。



                                            OP.2015.10.16. 04:45

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