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サイエンスダイバー

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サイエンスダイバー


BALLS

全長わずか40cm。重量30kg。
”BALLS”は飽く事無き労働者であり、太陽系領域の建設者である。
”ボロ・輸送システム”建設以前、宇宙開発は人類を地上に縛る絶望的な重力
によって苦しめられていた。
これは最終的に1kgあたりの、目が飛び出るような輸送価格として、200年後の
後々まで問題を残すことになる。

2070年においてもなお、水素と酸素の化学反応による推進システムは主力であった。
核融合や対消滅は、まだ一般化されていなかった。
その上でエンジンの簡素化、一体成形化、大型化と大量生産によるコスト低減には
限界があり、単段式SSTO(有翼式単段ロケット)は、知類(といっても当時は人類しかいなかったが)
の向かうところがより高軌道になるに従って、廃れてしまった。

問題を解決するには、宇宙に輸送しようとする貨物(ペイロード)を軽量化するしかなかった。
必要なものは現地(宇宙)調達し、可能な限り貨物そのものをダイエットするのである。
初期の宇宙開発が大変厄介だったのは、その現地で調達・加工行為する為の宇宙工場の
建設をする事にも事欠くほど、輸送コストが高かった事による。

ここに福音をもたらしたのは、当時すさまじい勢いで進歩していた
ロボット工学と、情報工学であった。
それは小さな工場計画と言われた。
”オートマン”による宇宙開発である。

すなわち、自己で自己の複製を製作し、自己増殖するロボットを
宇宙に打ち上げ、小惑星や彗星に取り付かせ、増殖させる。
次に、これらをプログラム更新により改良し、次の小惑星に移動させ、工場を作る。
そうして宇宙開発を進めるという概念である。

格納及び耐圧の関係からボール状になったその小さな工場、オートマンを当時唯一の
知類である人類は、”BALLS”と呼んだ。
これは最初、一括して12機打ち上げられ、そのうち7機が生き残って増殖を開始した。
以降、続々と”BALLS”が打ち上げられる事になる。

”BALLS”は改良を続けながら、今も太陽系領域の開発を行っている。
人を含む知類は、この小さくはあるが偉大な友の後を
追うように、進出を開始したのである。

バンアレン帯の外で、生命にとって無視できない程の深刻なダメージをもたらす
宇宙放射線被爆は、この小さな友によって回避された。

”BALLS”に自己進化、自己適用機能を持たせようと試みが
始められたのは、2100年初頭である。
そしてその試みは、紆余曲折あったにせよ、最終的には完全に成功した。
A-LIFE、すなわち人工生命、人工知能としての形質の付与である。

”BALLS”は、今やあらゆる領域に踏み入れては増え、あらゆる領域で奉仕を開始した。
もはや人の指図を一々受ける必要もない程、進歩していた。

2252年現在、太陽系に存在すると思われる”BALLS”は、80兆に上る。
多くの”BALLS”が毎年事故や耐用年数が尽きて破壊されたが、
それ以上に多くの”BALLS”が作られていたのである。

第三世代以降の自己進化型”BALLS”は、多くの機械のコアユニットにもなった。
積極的に”BALLS”は自己の形・プログラムをよりそれぞれの用途向きに改変し、
適応していったからである。

”BALLS”は基本アーキテクチャーであり、最小のユニットである。
球形を維持しながら、合体や増殖の概念を獲得しつつ、拡張していった。

2252年現在太陽系内のほとんどの場所で、”BALLS”や”BALLS”の
建造物が見られるようになっている。
太陽系内を航行する宇宙船の主乗組員として”BALLS”が乗り込み、
その宇宙船自身にも多数の”BALLS”が組み込まれていた。

初めて太陽系に足を踏み入れた第2異星人(ネーバルウィッチ)は、
太陽系の支配者を”BALLS”と認識し、少数民族である人類を含む知類を
太陽系の支配者だとは信じようとしなかったと言われる。
200年を経ずして、人類を含む知類は”BALLS”の世界の
寄生虫に転落していたのである。



SS(シールドシップ)

絶対物理防壁を形成する盾を装備する、水中船舶の総称。
盾によって水抵抗を十分の一以下に抑え、艦尾のハイドロジェットによって
前進し、水中翼によって向きを変える。
時速700km以上の速度で前進する船。

前方を絶対物理防壁によって守られているため、前方を見る事も
攻撃する事も出来ず、必然的に戦闘する際にはお互いが
横腹を見せ合い、射撃を行う事となる。

このため魚雷発射管、機動水雷投下軌条を側面に多数擁し、
一斉射撃して戦闘を行うようにデザインされている。
高速移動中は索敵がほとんど出来ないため、もっぱら予測と直感で
敵の動向を探る。
絶対物理防壁は光学、電波系、磁場系、重力系、音波系のセンスを
シャットアウトするため、勘と先読みで敵の位置を予測するしかない。



ボロ輸送システム

人類が2070年頃を境に宇宙に進出するにあたり、最も重視したのは、
巨大な重力井戸である地球からの貨物の持ち出しと、バンアレン帯の外に
出た時に不可避的に生じる生命体への宇宙放射線ダメージである。

どのようなものであれ、質量があるものを高重力である地球から
持ち出すには、莫大なコストが掛かる。
初期の宇宙開発の頃は、これこそが最大の壁になっていた。

知類、当時においては人類がこの高コスト体質を限定的にせよ
解決するには2070年から数えて100年掛かった。
すなわち、大昔において考えられた”軌道エレベータ”の子孫にあたる、
”ボロ輸送システム”の建造である。

ボロとは低軌道と高軌道を回転する数千kmに及ぶ棒である。
弾道飛行するジェット機は、ほぼ真空の中でくるくる回って
ボロの端に接触、ペイロードを渡す。
反対に宇宙側では同重量の質量物(帰りの貨物)をボロの端にわたす。

回転するボロは、どこかのタイミングでペイロードを離す事で、ペイロードを
楕円軌道に乗せ、次のボロに向かわせるのである。
この回転する棒の出現によって、知類は宇宙へ文字どおり、跳躍した。

この重力井戸を利用する輸送システムによって、1機10万t、3機のボロで
年間30万tにおける物資が、比較的安価に輸送され始めた。
それでも、わずか年30万tである。
大型タンカー数隻分の輸送能力しかない。
何でもかんでも宇宙に持って行けるという考えは、2170年代には、無くなってしまっていた。



機動兵器とRBの発生

太陽系戦争においてBALLSは、太陽系における免疫系として
人類を守護するために、自己を改装し、次々と戦闘用のBALLSを
就役させ、投入した。

火星軌道でマーズ・エクスプレスを操業していた知類は最初、BALLS達が
次々と仕事を離れ、推進剤や小惑星と共に高加速を行うのを見て、暴走したと考えた。

2225年 知類は、自分達が知らない間に戦争が始まっていた事を知る。
その年の間に知類達による外交使節団が結成、高加速で瀕死になりながら
4年後に冥王星系までたどり着いた時には、戦争は既に手がつけられぬ程、激化していた。

知類は、否応なくBALLSに協力、あるいは統率し
この最低の戦争に望むことになる。
宇宙の戦争とは、高加速と使い捨てと塵とレーザーである。
限界まで高加速をした宇宙船はもはや母艦に戻ることは出来ない。
大気や重力のある地球上と異なり、宇宙空間では推進剤の続く限り
加速することが出来る。

逆に、減速にも反転にも莫大な推進剤が必要であり、同様の理由で帰還出来うる推進剤を
残した経済的な機動を行う戦艦は、使い捨ての同級艦に機動力で決定的に劣った。

恒星間移動する高技術力を持った第二異星人”ネーバルウィッチ”に対し、
未だ対消滅レベルのエネルギー源しかない太陽系軍が互角の戦いを演じる事が
出来たのは、高い生産力を活用したこの使い捨て戦法であった。

塵は、高加速で進む船にとって、絶大な損害を強いた。
ボルト一個の質量物であろうとも、毎秒100kmを越える移動速度を持つ300m級の
戦艦を砕くには十分な力を持つ。
だから、塵を撒く事は、それだけで重大な損害を与える理由になる。
レーザーは、1万kmを超える射程の物が開発され、大量に装備された。

BALLSは、戦場への片道を全速で行く船に乗り、自爆して塵の雨を降らせ、
レーザーを撃ちまくった。そしてほどなく、戦場は完全に膠着した。
両軍が撒き散らした塵(スペースデブリ)とレーザー撹乱膜(気体の事)が、
冥王星外縁と、天頂方向を埋め尽くし、星系外からのジャンプアウトと
侵攻を不可能にして見せたのである。

2229年、ようやく冥王星系まで到着してBALLSから直接の戦争指導の
指導主権を奪回した知類は、太陽系連合、宇宙総軍を組織、翌年にかけて
この塵と撹乱膜を浸透する形で、逆侵攻を開始した。
知類は、専守防衛をよしとしなかったのである。

この時使われたのが”人形”と呼ばれる小型の機動兵器である。
BALLSを一機搭載し、自由に動く四肢を持ち、慣性姿勢制御を行いながら、
長い時間(一年)かけて塵の海を突破し、主エンジンに点火して最終加速を行ない、
したたかな痛撃を与えるこの新種の兵器は、彼我の戦闘バランスを完全に逆転させた。

この人型の兵器こそがRB,ラウンドバックラーの原型である。
BALLSは最終的な戦争の解決手段として、自分達の創造主と
同じ形に行き着いたのだった。

そして、RBの誕生。
ラウンドバックラーとは人形を元に、惑星上、その中でも海中での戦闘を
目的に開発された太陽系の機動兵器である。
空間接続素子と、そこから生まれた絶対物理防壁により、この機動兵器は
空前の機動性能と卓越した攻撃力、防御力を持つに至った。

火星独立戦争では、敵味方両軍が主力兵器として、
この海を走る巨人を投入する事となる。

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