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一方その頃(時間経過)その4

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匿名ユーザー

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一方その頃(時間経過)その4




火星傀儡政権

アンナ・グレースの悩み1

一方その頃

火星では、火星暫定政府主席が
視察旅行をしていた。

運転手/
ひどい状況ですね、街は。

アンナ・グレース/
ホントに。
軍隊ってのは、
ホント物壊すのにしか使えないわ。

運転手/
どうされるんですか、お嬢様。
このまま、奴等のいいなりに
なるおつもりで?

アンナ・グレース/
私、もうお嬢様なんて年じゃなくてよ。

運転手/
…なんでしたら、
火星独立軍でも頼れば、
いいんじゃないですかね。

運転手/
あそこにゃナイアル・ポーも
いるって話ですぜ。
それに…。

アンナ・グレース/
ポー教授か、お元気かしら。
でも駄目よ。
奴等、それを狙ってるんだから。

アンナ・グレース/
本格的に火星を直轄領に組み入れるつもりよ。
必要なら、NEPの一つも使うつもりかも。

運転手/
そこまでやりますか。

アンナ・グレース/
教授は、自分で考えろって言っていたわ。

アンナ・グレース/
私は優等生のつもり…どんなにお飾りでも、
火星政府がある限り、独立国として扱うしか
ないはずよ。

運転手/
…宇宙人相手ならともかく、
同じ地球の子らにNEP撃ちこむ奴等が
信用出来るんですかね。

アンナ・グレース/
…私が向こうへ行っても、働く場所はないわ。
あそこにはアキもいれば、教授もいる。

アンナ・グレース/
私が役に立つとすれば、
それはあの人達の目の届かないところよ。
あ、あそこ見て、壊れてる。

運転手/
戦車が通った道はみんなあんな風に
なるんですよ。

アンナ・グレース/
んまっ、なんてことでしょう。
あれもこれも、みんなお金が足りないわ。

アンナ・グレースの悩み2

一方その頃

火星では、火星暫定政府主席が
お忍び旅行をしていた。

運転手/
ますますひどい状況ですね、街は。
お嬢様、ここから先は危険です。

運転手/
運転手として言わせてもらいますが、
戻った方がいいですぜ。
あなたを恨んでる人だっている。

アンナ・グレース/
同胞を売った裏切り者、ですものね。
ただ、武力解決を嫌がっただけなのにね。

運転手/
学生運動時代のお嬢様を知っている人や、
リーダーであるお嬢様を知っている人は
悪く言いませんよ。

運転手/
昔から非暴力、対話主義でしたから。

運転手/
地球軍と対話することに期待していた奴等が
多かったのも事実です。

アンナ・グレース/
…ほんと、ひどい道。
治安にも公共投資にも予算を回さないと
いけないわね。

アンナ・グレース/
んまっ、なんてことでしょう。
あれもこれも、みんなお金が足りないわ。

運転手/
今や地球の傀儡と言われる始末。
おお、アリアンの導きあれ、ですな。

アンナ・グレース/
…それ、最近流行ってるみたいね。
火星独立軍の首班て、
アリアンて言うんでしょ?

アンナ・グレース/
誰なの、それ?
私がいた火星労働党の頃から火星独立軍は
知ってるけど、そんな奴、見たこともないわ。

アンナ・グレース/
ポー教授でもないし、アキは、まさかねえ。

運転手/
あたしみたいな運転手にはなんとも。
話によれば、別の世界からふらりと現れた
みたいですぜ。

アンナ・グレース/
んまっ、なんてロマンチック。
歴史の授業で出たグレートワイズマンの
話みたいね。

アンナ・グレース/
でもそれじゃ、
火星人の火星人による火星のための
独立にならないんじゃない?

運転手/
民衆はすがるものがないから、
民族自決を言うだけでさ。

運転手/
すがることが出来るのなら、
第1異星人だろうと学生運動のヒロイン…
…いや、失礼。

アンナ・グレース/
そうね、選挙で私を選ぶくらいだものね。
別の世界の人間でも構わないか…。
でも、本当に誰かしら。

選挙対策

一方その頃

火星 首都ユートピア。

スミス/
実にいい気分ですな。
実にいい気分だ。
もう一度その言葉、お願い出来ますか。

アンナ・グレース/
…選挙協力をお願いしますわ。

スミス/
よく聞こえませんなあ。

アンナ・グレース/
選挙協力をお願いしますわ!

スミス/
おお! いいですとも。
ははは、あはははは。

スミス/
いやはや、政治家というものは、
なんとも背骨がないことですな。

スミス/
覚えておいでですか、
貴方が我が軍を追い出すと
大統領に告げ口した時のことを。

アンナ・グレース/
…革命派政党が政権を取ったら、
すぐ議会を停止するくせに。

スミス/
それはもちろんですよ。
地球よりの党以外に、
存在する価値はありませんな。

スミス/
そもそも、あの海賊どもと組んでいるという
噂がある火星解放戦線党が合法というのが
おかしいのです。

アンナ・グレース/
…疑わしければ罰するなんて、
地球でも禁止されているはずですが。

スミス/
個人と国家は違うのです。
我々は平和を守り、
戦いを予防するために軍事力を行使します。

スミス/
腰抜けの政治家とは違う…ははは、いや、失礼。
あなたは別だ。
我々の仲間ですからな。

スミス/
いいでしょう、協力しましょう。
選挙監視団は我々がやっているのです。
どうとでもなります。

アンナ・グレース/
私はただ、軍の火星出身者の投票を
依頼するようにお願いしただけで。

スミス/
それでも負けたらどうするのです。
その場合でも、結局、投票結果をいじるのは
同じでしょう…。

スミス/
まあ、そんな顔をしないでください。
今後とも、色々よろしくやりたいものですな。
…アンナ。

アンナ・グレースの苦い勝利

一方その頃

火星 首都ユートピア。

部下/
暫定主席。
先ほどコーストガードから連絡が入ってきました。

部下/
火星独立軍の大敗です。
火星独立軍は、ほぼ息の根を止めました。

アンナ・グレース/
そう。
ナイアル・ポーは?

部下/
死亡を確認しました。

アンナ・グレース/
ありがとう。
それじゃあ、アキも死んでいるわね。
ありがとう、祝勝会の準備をしておいて。

アンナ・グレース/
これで、火星はまた一つに戻るのよ。
それからいますぐこの部屋から出ていって。

部下/
……は?

アンナ・グレース/
ちょっと泣くから、一人にさせてと言っているの。

部下/
おめでとうございます。

アンナ・グレースは、
一人になったことを確認すると
手で顔を覆って泣き始めた。

アンナ・グレースの最後

一方その頃
火星 首都ユートピア。

運転手/
どこにいきますか。

アンナ・グレース/
どこでもいいわ。
何もかも、終わったもの。
何もかも。

運転手/
政府の廃止、ですね。

アンナ・グレース/
ええ、もうおしまい。

アンナ・グレース/
名目的なものでさえ、
火星人が火星人を統治する形は
無くなったのよ。

アンナ・グレース/
民族自決も自治権も、みんなさよなら。
独立の父と言われた祖父も、
なんのために働いてきたんだかわからないわ。

運転手/
…ほんとに、どこに行ってもいいんで?

アンナ・グレース/
ええ。

運転手/
じゃあ、海に行きましょうや。
観光するのもいい。

アンナ・グレース/
それって、火星独立軍へいけってこと?

運転手/
あなたのお祖父さんは、
火星独立のために戦いました。

運転手/
孫が同じことしちゃいけないって法は
ないと思いますがね。

宇宙総軍からの恫喝

一方その頃

火星首都ユートピア、議会ビル。

スミス/
大変なことをしてくれましたな。

アンナ・グレース/
なんのことでしょう?

スミス/
我々の友情に対して、泥を塗るおつもりか?
タフト大統領は、我が将軍に厳命を
下しましたぞ。

アンナ・グレース/
そしてあなたが、殴られたのですね。

スミス/
そう!
いや、それはどうでもいい。
問題なのはあなたの行動だ。

スミス/
あなたが悪い!

アンナ・グレース/
なぜですか?

スミス/
あなたはタフト大統領に通信をした。
我が軍を誹謗中傷する内容です。
すでに証拠はあがっている。

アンナ・グレース/
盗聴は犯罪ですよ。

スミス/
…あー、いや、もちろん今のは想像です。
…ふん。

スミス/
しかし、その非協力的な態度、
覚えておくことですな。
我が軍はかならず最終的に勝ちます。

アンナ・グレース/
んまっ、それまでにあなたが飛ばされて
なければいいのですけれど。

事態収拾に走り回るアンナ・グレース

一方その頃

火星では、火星暫定政府主席が
火星動乱の事態収拾のために動き回っていた。

通信スクリーンに向かって、
アンナは話し掛けた。

タイムラグのせいで、
通信にはずいぶんの間があいている。

アンナ・グレース/
地球大統領閣下にお願いがあります。

ジョージ・タフト地球大統領/
なんだろう、アンナ。
地球で出来ることがあれば、なんでもやろう。

アンナ・グレース/
地球軍を中心とした太陽系総軍の撤兵を
お願いしたいのです。

ジョージ・タフト地球大統領/
それは出来ない。
そちらで頻発している人質は、地球人だ。

ジョージ・タフト地球大統領/
地球人は地球の政府が保護するのでなければ、
どこの国民が自分達の政府を支持出来る?

アンナ・グレース/
まさに、そういう意味で撤兵を
要求しているのです、閣下。

アンナ・グレース/
火星人の安全を保護するために火星政府が
お願い申し上げています。

ジョージ・タフト地球大統領/
海賊も守る対称だと?

アンナ・グレース/
そうは申し上げておりません。
私が申し上げるのは、貴国の軍が都市で横暴を
働いていることを言っているのです。

ジョージ・タフト地球大統領/
太陽系総軍の規律は、
そこまでひどくないはずだ。

ジョージ・タフト地球大統領/
それに、ホン・サンも、
ノギもそのようなことを許すわけがない。

アンナ・グレース/
宇宙では、物理的に略奪が出来ませんでした。
やりたくてもやれなかっただけかもしれません。

アンナ・グレース/
それに昔と違って、
軍人は十分に給料を貰っているわけでは
ありません。

ジョージ・タフト地球大統領/
…わかった、アンナ。
より一層の綱紀粛正をはかろう。

ジョージ・タフト地球大統領/
すぐ司令部には通達する。
だが、軍は引けない。

アンナ・グレース/
閣下、それでは駄目なのです。

ジョージ・タフト地球大統領/
わかってくれ、アンナ。
そして信じてくれ。

ジョージ・タフト地球大統領/
私は最善をつくす。
ホン・サンには、きつく言っておく。

アンナ・グレース/
そのホン・サンが心変わりしていたら
どうするのです。

唐突に切れる通信スクリーン。

アンナは、スクリーンにハイヒールを投げた。

アンナ・グレースの視察

一方その頃

火星では、火星暫定政府主席が
ストレス発散旅行をしていた。

運転手/
街に出なくても、
奴等の横暴は知っているでしょう。
なんでお忍びで街をうろつかれるんで?

アンナ・グレース/
どうしてかしらね。
…あの通り、昔、アキと手を繋いで歩いたわ。

アンナ・グレース/
今はひどいわね。
大学も閉鎖されているし。

運転手/
やれやれ。

アンナ・グレース/
なんでそちらに行くの?

運転手/
こっちには、太陽系総軍がいるんでさ。

アンナ・グレース/
そう、詳しいのね。

運転手/
運転手も長いですからね。

アンナ・グレース/
そうなの?
私、深く考えたことなかったけど、
アレよ、アレ、あなたのこと、知らないわ。

アンナ・グレース/
記憶力だけには自信あるのに。

運転手/
平凡な顔ですしね。

アンナ・グレース/
火星独立軍の手は、
ずっと彼方まで広がっているみたいね。

運転手/
…まあ、地球が好きな火星人は今、
いないんじゃないですかね。

運転手/
平和を理由に軍隊を送りつけてくる
あの馬鹿野郎よりは、品のいい海賊を
応援したくなる人間もいるもんでさ。

アンナ・グレース/
…火星独立軍は私を守る価値があると
思っているわけ?

運転手/
すべてはアリアンの導きのままに、ですよ。
彼がそうだと言ったのなら、そうなんでしょう。

アンナ・グレース/
独立したけど独裁がはじまるっていうのは、
みんな嫌うんじゃないかしら。

運転手/
あなたもアリアンに会えばわかりますよ。
あの人は、そういう人じゃない。

同族殺しの軍

一方その頃

火星首都、ユートピア。

この日、火星首都ユートピアでは、
大規模な艦観閲式(レビュー)が行われた。

火星コーストガードは地球の支援で大幅に
戦力を拡充し、この日から国軍として
活動を開始したのである。

スミス/
浮かぬ顔を何故しておいでなのですか。
今日は、沿岸警備隊(コーストガード)が
国軍になった記念すべき日ですよ。

アンナ・グレース/
同じ火星人同士と戦うための軍隊を
祝福するつもりはありません。

スミス/
同じ火星人ではありません。
奴らは海賊です。
平和を荒らす凶悪な犯罪者です。

スミス/
それとも、火星は海賊の本拠地を名乗る
おつもりでしょうか?

アンナ・グレース/
そうすれば、どんなにいいでしょう。

スミス/
そうすれば火星にNEPを使うまでです。
平和の敵は根絶やしにすべきですから。

アンナは、
やるせないと言った風情で頭をふった。

党の非合法化

一方その頃

火星大議会。

この日、火星議会は火星解放戦線欠席のまま、
同党の非合法化を可決した。

火星解放戦線の幹部以下は地下に潜り、
一部は火星独立軍に合流した。

議会ビルの高所から、火星解放戦線の非合法化に
反対する与党議員も含めた反対デモを見下ろしながら、
スミス少佐は、後ろを振り向いた。

スミス/
ずいぶん思い切った手を選ばれましたな。

アンナ・グレース/
そうさせたのは、あなた方でしょう?

スミス/
…なるほど。

議会停止

一方その頃

火星大議会場

この日、火星議会は
立ち入り禁止区域に指定された。

太陽系総軍の軍服を着た兵士達によって
制圧されたあと、議会の永久解散が発表される。
理由は治安維持のため。

火星における民主主義的な手続きを経て
選ばれる政権と立法機関は、この時点で消滅した。

太陽系総軍は、
治安回復までの暫定的な政治を宣言する。

太陽系総軍の装甲車の中で、
囚われのアンナ・グレースは
沈痛な面持ちで口を開いた。

アンナ・グレース/
火星政府は、今日…死にましたわ。

スミス/
いえ、これから正常な姿に戻るのですよ。
あなたには、火星政府の暫定政権を
担ってもらいたい。

アンナ・グレース/
飾りですか。

スミス/
その通り。
だが飾りは大事です、誰にとっても。
拒絶も難しいと思いますな。

全部を軍人に任せるよりマシでしょう。
それが軍の尻拭いであっても。

アンナ・グレース/
……宇宙に出ても、人は変わりませんね。

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